http://www.asyura2.com/14/hasan85/msg/820.html
Tweet |
黒田日銀総裁と麻生財務相。G20初日は満面の笑みだったが…[PHOTO]Getty Images
「世界経済失速」の元凶?各国が怯える「中国リスク」はアベノミクスの息の根を止める!?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38475
2014年02月25日(火) 町田 徹 現代ビジネス
豪州のシドニーで開かれていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が23日、今年初めから続く世界的な株式相場の乱高下に業を煮やして、「今後5年で(世界経済の成長を)現在の見通しより2%以上押し上げることを目指す」という異例の声明を採択して閉会した。
これによって、すっかり一時期の勢いを失った新興国に代わって、久しぶりに日米欧の先進諸国が世界経済のけん引役を担うという。
とはいえ、今後の世界経済の先行きを占ううえで見逃せないのは、G20の開催前から懸念が強まる一方となっている中国リスクの存在だろう。楽観視する向きもないわけではないが、このままでは、アベノミクスを一枚看板に掲げる日本経済はもちろん、世界経済失速の元凶になりかねない問題である。
■「5年で2%以上」G20が困難な成長目標掲げる理由
2日間の日程で最終日の議論がこれから始まるという22日(日曜日)朝の段階で、日本の新聞各紙は一斉に、議長国の豪州が声明文の原案に「異例ながら、世界経済の成長に関する数値目標を盛り込む」ことを提案している事実を伝えた。原案は正式に採択され、各国が今年11月に豪州のブリスベンで開くG20首脳会議までに具体的な行動計画をまとめる責を負うことになった。
米国が日本に先駆けて異次元の金融緩和策の縮小に舵を切ったことが、世界的なマネーの先進国回帰を招き、陰りの見えていた新興国経済の成長力を一段と削ぐのが確実とみられる中で、年初から世界の株式市場は大きな動揺を見せていた。今後、実体経済への波及が必至とされるだけに、その痛みを和らげる観点から、苦肉の策を採ったと言ってよいだろう。
牽引車として白羽の矢が立ったのは、これまでのところ高いパフォーマンスを見せている米国、ようやく一時の危機から脱する兆しをみせているユーロ圏、長年のデフレ経済の克服に取り組んでいる日本といった先進国だ。
はっきり言えば、2%の世界経済の成長率押し上げは容易でない。
そもそも、このところ国際機関が発表する世界の経済見通しは、過度の市場の動揺を抑える狙いから、下駄を履いている。
国際通貨基金(IMF)が今年1月に改訂版を公表した「世界経済見通し」は、その典型だ。それによると、世界経済の成長率は、前年比で2013年が3.0%、2014年が3.7%、2015年が3.9%と、拡大基調を維持できることになっている。
ところが、詳細にみると、消費増税を行う2014年の日本の成長率が2013年と同じ1.7%を維持するなど、いずれも各国政府の公式見解に準拠した楽観的な見通しが盛り込まれている。これらを前提にはじき出されているため、「世界経済見通し」も楽観的な予測となっているのだ。G20はそれをさらに2%押し上げようというのだから、困難な道のりになるのは避けられない。
そうした情勢にもかかわらず、G20が異例の声明を打ち出した裏には、ここで各国の経済政策の弱点を攻撃し合ったり、お互いの利害をむき出しにして、国際協調の枠組みを壊すことはできないという事情がある。
また、新興国バブルに再度火をつけるため、一部の新興国の主張を入れて、米金融当局に緊急措置だった異次元緩和の継続を迫ることができなかったという事情もある。
ルー米財務長官はG20直前、オズボーン英財務相と会談し、「新興市場諸国は財政健全化と構造改革の実施で自ら措置を講じなければならない」などと、米国批判に猛反発する姿勢を見せていた。
■中国息切れ、巨額投資の回収困難に?
G20が異例の措置に踏み切らざるを得なかった、もうひとつの事情は、このところ懸念する声が強まる一方の中国リスクの存在だ。GDPで日本を抜いて世界第2の経済大国になった中国の動向は、世界経済を大きく左右するからだ。
前述のIMFの「世界経済見通し」は、2013年に前年比7.7%増だった中国の成長率が、2014年に7.5%増、2015年に7.3%増と減速していくと予測。
〈2013年後半に力強い回復を見せたが、これは主に投資の加速によるものだった。この急上昇は、与信の伸びの抑制を図った政策措置及び資本コストの上昇も理由に、一時的と見られる〉
と、はっきりと息切れを予言しているのだ。
中国リスクというと、「シャドーバンキング」や「理財商品」など日本で馴染みのない言葉が出てくるし、デフォルト必至とみられたファンドの救済に、中国政府が背後にいるとしか考えられない匿名の投資家が登場するなど、不可解な話も多いため、専門家の間でも実態が掴めていないのが実情だ。
しかし、単純に言えば、中国リスクの核心は、外資も含めて膨大な資金を借り入れて、回収の見込みのない分野に巨額の投資を行ったのではないか、という問題にある。その結果、供給力が過剰になっており、中国製品の叩き売りが避けられず、デフレまでいかなくても、ディスインフレ(インフレの縮小)に落ち込むと懸念されている。
つまり、成長力が落ちて投資の回収が困難になるとの疑念のほか、中国製品の叩き売りが各国企業の収益力の低下を招くとか、中国の膨大な原材料や資源の輸入が変調をきたして、他の新興国経済に打撃を与えるのではないかといったリスクが懸念されているのだ。
■「破綻確率」の安全ランクは日本10位、韓国25位、中国27位
過剰投資が生んだ供給力過剰の例としては、鉄鋼の生産量が有名だ。中国の粗鋼生産量は、2013年に7億7904万トンと、世界2位の日本(1億1057万トン)の7倍を超えた。格差・階級社会に喘ぐ農民を多く抱えた地方政府が進めた膨大な不動産・建設投資も、物件の稼働率が低く、総じて投資の回収が困難とされている。
投資に充当された資金を、内外から高利回りを謳った「理財商品」でかき集めたのは、日本のノンバンクにあたる「シャドーバンク」だ。
「理財商品」の規模は、昨年6月、中国当局が8兆2000億元としていたのに対し、英米系の格付け機関フィッチ・レーティングスは約13兆元と推計しており、不透明。それらの元利払いだけでなく、シャドーバンクの経営や中国の金融秩序にも悲観的な見通しが少なくない。
さらに、中国は2012年末の外貨準備が約3兆3000億ドルと、日本のそれ(約1兆2000億ドル)を大きく上回っているものの、それに見合った対外純資産が極端に少ない。外貨準備のほぼ半分は海外からの借金なのだ。この点は、外貨準備の2倍近い対外純資産を持つ日本と決定的に異なっており、経済の規模の割に国際収支では脆弱な一面を持つ。
米S&PキャピタルIQが昨年末にまとめた「ソブリンデットクレジットリスクレポート」(通称「破綻確率ランキング」)をみても、安全性の高さで日本が10位なのに対して、中国は27位。25位の韓国よりも下位に甘んじている。金融のプロたちの間で、世界経済の元凶になりかねないと認識されているのである。
麻生太郎財務大臣はG20に先立ち、中国だけでなく日本への批判も強めていたルー米財務長官と会談、アベノミクスの「第3の矢」である成長戦略の加速をアピールして、同長官やG20の批判の矛先が日本に向かうのをかわしたという。公約違反にならないよう期待したい。
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。