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[けいざい解読]国民負担率軽く 欧州の新潮流 日本は既に「五公五民」
年金や健康保険などの社会保険料と税は、国や自治体から課せられた以上、いやが応でも払わねばならない。その負担の度合いは先進国のなかで日本がとくに低いと、ずっといわれてきた。
そして、高齢化を乗り切るにはこうした負担の引き上げが欠かせないというのが、いつしか政権中枢にいる政治家の常套(じょうとう)句になった。民主党政権のとき、菅直人首相がおそるおそる始めた社会保障・税一体改革は、まさにそうした触れこみだった。
消費税率が4月から8%に上がる。一体改革を議論しているさなか、財務省は1%の増税で年2兆7千億円の増収になると説明した。3%なら8兆1千億円。とてつもない増税だが、2014年度中に国庫に入るのは4兆5千億円にとどまるという。納税の時期がすべて年度内に間に合わないためだが、消費の落ちこみが同省の皮算用に狂いを生じさせる面もある。
15年10月には次の増税が待ちかまえる。世上、安倍晋三首相は10%への引き上げを慎重に考えていると伝えられる。1月、ダボス会議での基調演説で法人税率を国際相場に照らして競争的なものにすると宣言したように、むしろ法人税改革に熱心なようにもみえる。
一方、年金や医療の持続性を高める制度改革は手つかずだ。四苦八苦して増税しても、穴のあいたバケツに水を注ぐような状況を変えねば、国民負担は増えつづける。
国民所得に対する保険料・税総額の比率を示す国民負担率は14年度に41.6%になり、13年度より1.0ポイント高まる。これに財政赤字、つまり子供やこれから生まれてくる世代の税負担をのせた潜在負担率は51.9%。50%超えは4年連続だ。平成の世に時ならぬ五公五民が根づいた感がある。
目を欧州に転じると、ドイツの潜在負担率は52.2%(11年)。日本とさほど変わらないことに驚かされるが、中身は段違いだ。財政赤字が1.1%しかない。現世代が使う費用は現世代が負担する。その哲学が浸透しているようにみえる。
高負担というとスウェーデンを思いうかべる人が日本には多い。だが、じつは負担率はフランスより低い。しかも財政赤字はゼロ。国民負担と潜在負担がイコールという希少な国だ。さらに見逃せないのは、00年ごろに頂点だった負担率を社民党政権が主導して下げてきた事実だ。最近も減税を基本政策に据えた中道右派の連立政権がレストランの付加価値税や法人税を軽くした。
日本もそうだが、連立政権といえば政府のサイズが大きくなりがち。大きくなりすぎた政府をダウンサイズする取り組みは、特筆に値しよう。
昨秋まで同国大使をつとめた渡邉芳樹・元社会保険庁長官の分析だと、日本の保険料負担率はすでにスウェーデンと肩をならべる。むろん単純には比べられないが、厚生年金や企業健保の保険料率は今後さらに高まる。日本が高負担国の座を明け渡される日は、遠くないかもしれない。
(編集委員 大林尚)
[日経新聞2月23日朝刊P.3]
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