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急拡大の高齢者向け弁当宅配市場、先駆者ワタミ失速で、なぜ異変?競争激化で課題露呈
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140223-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 2月23日(日)6時45分配信
「今後の成長市場」といわれる高齢者向け弁当宅配市場(以下、弁当宅配市場)に大手企業としていち早く参入し、急速な営業拠点拡大により成長してきたワタミの弁当宅配事業「ワタミの宅食」の息切れが、昨年後半から明らかになってきた。
同社の13年3月期連結決算では、弁当宅配事業の売上高は前期比48.1%増の388億5000万円。売上構成比は24.6%であり、主力の国内外食事業(居酒屋事業)48.1%に次ぐ事業規模となっている。営業拠点数は全国431カ所に達する(13年9月末時点では522カ所)。
また、同社が昨年5月の13年3月期決算発表会で示した中期経営計画では、弁当宅配事業の売上高を17年度に1100億円(13年3月期実績の約3倍)に引き上げ、不振が目立ってきた居酒屋事業に代わる主力事業(弁当宅配の売上構成40.7%、国内外食の売上構成31.5%)に育てる意欲的な青写真を描いていた。
この中計は創業者の渡邉美樹氏(昨年6月の参議院議員選挙立候補に際し、ワタミの全役職を辞任)が「ワタミ再成長の方向性を示すため自ら策定した」(渡邉氏側近)とされる自慢の経営計画だった。
ところが、昨年11月7日に発表した14年3月期中間連結決算(13年4-9月)業績では、売上高、営業利益、経常利益、最終利益のいずれも計画未達となり、通期業績見込みを下方修正する事態に追い込まれた。その結果、弁当宅配事業も売上高は当初見込みの544億円から456億円(16.2%減)へ、営業利益は同38.1億円から26.8億円(29.8%減)へ引き下げなければならなかった。
08年の事業開始以来右肩上がりで伸びてきた1日当たり配食数も、13年3月期実績の28.1万食と実質横ばいの28.6万食(14年3月期中間実績)にとどまったため、通期見込みは当初の41万食から35万食へ引き下げとなった。
証券関係者は「配食数が実質横ばいに対して、営業拠点数が431カ所から522カ所へと21%も拡大している。拠点拡大に注力したとしても、やっぱり異常。既存拠点の配食数が前年度割れしているとしか思えない」と指摘している。
一昨年から新規参入が相次ぐなど需要が顕在化し、本格的成長に向けて活気づく市場環境での事業伸び悩み。ワタミに一体何が起こっているのか。
●シニア市場の変化を先読みしたワタミの先見性
ワタミが長崎県の「タクショク」を買収し弁当宅配市場に参入したのは08年。当時は好感度がまだ高かったワタミのブランドイメージとテレビCM展開などの相乗効果により、一気に認知度を高めていった。
高齢者向け弁当宅配事業はもともと、自治体に委託されたNPOや地場弁当事業者が手掛ける社会福祉事業の1つだった。「そこへ居酒屋チェーンの経営ノウハウを持ち込み、営利事業としての弁当宅配を確立したのがワタミだった」(外食業界関係者)といわれる。前出の証券関係者は「その意味で、高齢者向け弁当宅配から社会福祉の枠を取り払い、成長産業に転換したワタミの先見性と功績は大きい」と評価する。
この「ワタミの先見性」の背後にあるのが「シニア市場の変化」だ。
例えば、1月9日付日本経済新聞は「年280兆円規模の国内個人消費で、60歳以上の高齢者を世帯主とする家計の存在感が一段と高まっている」と述べ、シニア市場の変化を次のように解説している。
(1)政府の家計調査によると、13年11月の2人以上の世帯では65-69歳の消費額が前年同月比8.3%増え、全世帯の伸び率(2.1%)を上回った。
(2)11月の65-69歳以上の世帯の消費額は28万7807円。全世帯の平均額27万9546円を約1万円上回った。
(3)シニア消費は高齢者人口の伸びを上回っている。総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は00年の17.4%から13年には25.2%に上昇。一方、国内消費全体に占める65歳以上の世帯の比率は18.4%から34.2%(11月時点)まで上がった。
(4)60歳以上の世帯で見ると消費額は全体の46.6%を占め、従来の主力だった40-59歳の世帯の消費(40.8%)と比率が逆転した。
また、こうした変化を背景に「今後の有望市場は、一歩踏み込んだ生活支援サービスだ。『最も力を入れていくのは宅配サービスだ。潜在ニーズはすごく大きい』。セブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長はこう語る」とも報じている。
一方、市場調査会社の矢野経済研究所は、昨年7月発表した『食品宅配市場に関する調査結果 2013』で、「06年に463億円だった高齢者向け弁当宅配市場規模は、15年には775億円に拡大」と予測している。
前出の外食業界関係者は「日経新聞と矢野経済のレポートを突き合わせると、『調理離れシニアの増加』がうかがえる」と、次のように話している。
「現在70歳以上の高齢者の大半は自炊派であり、足が不自由、自宅近くにスーパーがないなどのいわゆる『買い物難民』が必要に迫られ、高齢者向け弁当宅配サービスを利用していた。加えて、現在60代半ばに達した『団塊の世代』以降はマクドナルドやファミレスなどの外食に抵抗感のない人が多く、さらに『弁当宅配なら、いちいち家から出かけなければならない外食より便利』と考える人が多い。こうした高齢者層が、ワタミの弁当宅配を成長させた一因ではないか」
実際、ワタミがタクショクの買収により弁当宅配事業に参入した08年の1日当たり配食数は、わずか4.6万食だった。事業規模の小さいタクショクの経営資産を継承した直後だった事情もある。それが翌年には33%増、その翌年は93%増と急伸、12年3月期までの3年間で08年比4.7倍の急成長ぶりを示している。
しかし、間もなく成長は失速し、13年3月期の実績は前期比微増の28.1万食にとどまり、14年3月期中間実績は実質前年度横ばい、通期予測でも前期比25%増の35万食の見込みしか立っていないのは前述の通りだ。
●相次ぐ新規参入で競争激化
では、なぜここへきて急成長が頓挫したのだろうか。各関係者の話を集約すると、要因は2つに大別できる。
ひとつ目はワタミが開拓したともいえる弁当宅配市場の競争激化だ。12年頃から「ワタミに追いつき、追い越せ」と言わんばかりに新規参入が活発化している。例えば、セブン-イレブンは「セブンミール」を、宅配寿司「銀のさら」を展開するライドオン・エクスプレスは「銀のお弁当」を、弁当販売店チェーン「オリジン弁当」を展開するオリジン東秀は「彩食健味」を、持ち帰り弁当「ほっともっと」を展開するプレナスと「ほっかほっか亭」を展開するハークスレイはそれぞれ宅配専用メニュー導入といった具合だ。ワタミの急成長にブレーキがかかったのが12年だった事実を思うと、こうした後発組が「ワタミの破竹の進撃」を阻止したといえる。
では、なぜワタミは「先発の競争優位」を発揮できなかったのか。ワタミに詳しい専門家は「固定客をつかんでいないから」と、次のように説明する。
「ワタミの弁当宅配は週コース制で、毎週月曜から金曜まで日替わりで配達される。そして同社は『トータルで数百種類の献立を用意しているので飽きがこない』と宣伝している。ところが実際に注文してみると毎日似たような特徴のない弁当が配達されてくるため、1コースか2コース利用すると、やめてしまう利用者が多い。つまり、リピーターではなく新規開拓で成長してきたと思われるが、それは今になってワタミが慌ててかつての利用者に訪問営業攻勢をかけていることからもうかがえる。後発組が続々と誕生、利用者に選択肢が増えた結果、メニュー的な特徴のないワタミの弁当に先発の優位性がなくなったのではないか」
●ワタミ、労働環境の問題点も顕在化
ふたつ目は、弁当宅配事業で見え隠れするワタミの企業体質だ。
例えば、ここにきて偽装請負の疑いが浮上している。ワタミの弁当は「まごころスタッフ」と呼ばれる配達員が配達しているが、この配達員はワタミの社員やパートではなく、ワタミと業務委託契約を結んだ個人事業主。このため、配達員は自家用車で、ガソリン代も自己負担で弁当配達をしている。
ところが、「週刊文春」(文藝春秋/13年7月9日号)が「ワタミの宅食に偽装請負の疑いがあることがわかった」と報道し、話題になった。この中で同誌は「一部のまごころスタッフには『リーダー手数料』の名目で1-3万円の手当が支払われていた。こうしたスタッフは、業務委託契約にない仕事をしており、まごころスタッフが従業員に代わって営業所の電話を受けるなどの業務もあった」と報じている。さらに、まごころスタッフの業務自体についても、12年2月24日付ニュースサイト「ロケットニュース24」の記事は、「道路運送法違反の疑い」も報じている。道路運送法第78条は、法の除外規定を除き、自家用車での有償運送を禁止しているからだ。
前出の専門家は「こうした疑惑に加え、スタッフの待遇の低さが配達サービスの品質劣化要因にもなっていると」と指摘する。
「スタッフの業務委託契約は完全出来高制。ワタミの募集広告では『月20日間、1日20軒程度で月収7万円』となっている。保険、税金など自家用車の維持費とガソリン代負担を考えると、かなりの低賃金といえる。この仕事1本で生計を立てられるわけがないので、主婦が募集対象になっている。ところがその主婦にとっても魅力のあるパート仕事とは思えない。結局は募集難→配達要員不足→配達サービス品質低下の悪循環を起こし、これが固定客をつかめない一因にもなっている」(前出の専門家)
弁当宅配市場の活況は、図らずも「ワタミの宅食ビジネスモデル」の弱点を露呈する結果になった。果たして高齢者向け弁当宅配市場への民間参入のパイオニア的存在であるワタミは、現在の逆境を乗り越え、同事業を同社にとって主力事業に成長させることができるのか。今後の動向が気になるところである。
福井晋/フリーライター
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