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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第64回 予想された事態
http://wjn.jp/article/detail/1521276/
週刊実話 2014年2月27日 特大号
2014年2月4日。世界同時株安の余波を受け、日経平均株価が610円下げた。日経平均は'13年末の高値から、一カ月超で2200円(約14%)も値を下げ、1万4000円割れ目前に至った。
今回の日本株安(日本株だけではないが)は、筆者にとって予想された事態である。
何しろ、昨今の日経平均の上昇は、別に日本経済のファンダメンタル(基礎的事項)を反映したものでも何でもない。逆に言えば、2月4日までの株価急落も、日本経済の「弱さ」や「不透明感」とやらを裏付けたものでもないわけだ。
すなわち、実体経済とは無関係に株価が上昇し、下落したのが、ここ半年ほどの日経平均なのだ。
現在、日本のみならず、各国の株式価格は「先行指数」とは呼べない状況に至っている。理由は、アメリカ、日本、イギリスといった主要国(ユーロ除く)の中央銀行が、こぞって金融政策を拡大しているためだ。
つまり、各主要国の中央銀行が発行した「通貨」が、実体経済(所得)に向かわず、自国の株式市場、あるいは「両替」された上でユーロや新興経済諸国の株式市場に流れ込み、株価を押し上げていたのだ。
中央銀行が国内の民間銀行から「国債」を買い取り、通貨を発行する量的緩和政策において「中央銀行はお金の行き先を管理できない」。当たり前だが、日本銀行が日本円を発行し、国内の銀行から国債を買い取る「のみ」では、日本国民の所得は増えない。
所得とは、日本国民が生産者として働き、生産したモノやサービスを、別の誰かが消費、投資として購入しなければ創出されない。
日銀が銀行に発行したお金を「誰か」が借り入れ、実体経済において使ってくれれば、国民の所得が生まれる。とはいえ、銀行からお金を借りた人が、株式投資や土地購入など「金融経済」の中で使ってしまうと、国民の所得は増えない。
ましてや、為替市場で外貨に両替され、ユーロ圏や新興経済諸国に投資されたのでは、国民所得に何の影響も与えない。
本来、日米英など金融政策を拡大している国々は、中央銀行が発行したお金を政府が国債発行で借り入れ、国内の実体経済の中で使わなければならないのだ。いわば、財政政策の拡大だ。
もちろん、各国ともに財政政策は実施しているが、金額的に不十分であり、量的緩和で発行されたお金が、自国の金融経済や海外投資に向かう傾向が強いのが現実なのだ。結果的に、ユーロ圏や新興経済諸国で金融バブルが発生していた。
特に、ユーロの状況は凄まじく、全体の失業率が12%を超える「超不景気」であるにもかかわらず、代表的な株価指数であるユーロストック50が史上最高値を更新し、同時に「ユーロ高」が発生していた。
要するに、金融政策を拡大している国々(特にアメリカ)が発行した通貨がユーロに両替され、株式市場に投じられていたわけである。同じスキームで、新興経済諸国でも通貨高と株高が同時に発生していた。
株高とはいえ、各国の実体経済の成長を反映したものではないため、筆者は「何らかのきっかけ」で、ユーロ圏や新興経済諸国で株式などの金融資産が売り払われ、ドルなどに「巻き戻る」可能性が高いと考えていたのだ。
ユーロや新興経済諸国からの巻き戻しが始まると、当然ながらドルが上がる。そして、主要国と比べてインフレ率が低い日本円の為替レートは、ユーロや新興経済諸国の通貨はもちろんのこと、ドルに対してすら上昇する。すなわち、ドル安円高になる。
結果的に、日本の株式市場の「取引」の過半を占める外国人投資家にとって、日本株が「売り時」になり、日経平均は暴落する。リーマンショック時と同じ現象が発生すると予想し、その通りになった。
今回の「きっかけ」は、1月30日のFRB(連邦準備制度理事会)による金融緩和の縮小だった。昨年の「一度目の縮小」は、金融市場への織り込みが巧くいき、「きっかけ」にはならなかったが、二度目はダメだったわけである。
現在の安倍政権のデフレ対策の「肝」は、金融市場(株式市場など)における資産価格上昇による消費の拡大だ。金融市場にどれだけ莫大なお金が流れ込んでも、国民の所得は増えない。とはいえ、株価上昇に気を良くした人が消費を増やしてくれれば、国民の所得が創出される。
いわゆる「資産効果」だが、安倍政権にとって残念なことに、日本の株式市場は為替レートに大きく左右される。株価はもはや先行指数でも何でもなく「円高か、円安か」を示す指標に過ぎないのだ。
株式市場の「取引の主役」である外国人投資家は、単純に円安になれば日本株を買い増し、円高になれば売り払う。そして、日本円の為替レートは、国内の金融緩和のみならず、外国の状況にも大きく左右される。
史上最大の金融緩和政策を実施している現在ですら、新興経済諸国やユーロ圏の金融市場の状況により、日本円の価値が上昇し、株価が下落するというケースは起こり得るのだ。そして、株価が大きく値を下げると、期待の資産効果も消滅する。
4月に消費税が増税されることもあり、安倍政権は金融政策や成長戦略(という名の構造改革)ではなく、財政政策に経済政策の比重を移さなければならない。
資産効果による消費拡大「期待」ではなく、日銀が発行したお金を政府が借り入れ、直接的に国民の所得になるように使うのだ。
さもなければ、4月以降の日本経済は、国民の所得が増えない中、物価だけが上昇する事態になり、安倍政権への風当たりは一気に強まることになる。
それどころか、ユーロ圏や新興経済諸国で更なる金融危機が勃発し、消費税を増税したにもかかわらず、物価が下落することになれば、「消費税増税」と「アジア通貨危機」でデフレが深刻化した、'97年の橋本政権と同じ轍を踏むことになってしまうだろう。
三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
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