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マルハニチロ、農薬混入事件で迎える、新たな船出への試練〜「第2の雪印」との懸念も
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140214-00010004-bjournal-bus_all
Business Journal 2月14日(金)4時14分配信
マルハニチロホールディングス(HD)は1月30日、4月に予定しているグループ内企業の合併を承認するための臨時株主総会を開いた。同社と傘下のアクリフーズなど5社が1つになり、新しいマルハニチロ株式会社が誕生する。
マルハとニチロが経営統合したのは2007年10月。グループ再編の総仕上げだったはずの臨時株主総会は、アクリフーズの群馬工場が生産した冷凍食品から農薬が検出された問題の善後策の説明と、株主からの質問に終始。久代敏男社長(66)は陳謝に追われた。総会には543人の株主が出席した。株主からは「農薬混入事件を起こしたアクリフーズとの統合を見直さなかったのか」との質問が出た。久代社長は「アクリフーズ単体での再建は難しい。新マルハニチロの事業部門として、グループの力を結集して再生を図りたい」と述べた。
アクリフーズの群馬工場で製造された冷凍食品から昨年末、基準値を超えるマラチオンが検出された。対象商品640万パックのうち、1月21日現在で約86%に当たる550万パックを自主回収した。群馬県警は1月25日、群馬工場の契約社員、阿部利樹容疑者(49)を農薬を混入した偽計業務妨害容疑で逮捕した。容疑者は混入の動機を「給料など待遇面で不満があった」と供述しているという。
従業員の逮捕を受けて開いた1月25日の記者会見で、久代社長は3月31日付で「引責辞任する」と明言した。久代氏は4月1日付で新会社、マルハニチロの取締役相談役になる予定だったが、これを取りやめる。アクリフーズの田辺裕社長も辞任。マルハニチロHDの村田彰徳常務(品質保証担当)も辞任する。久代社長の後任にはマルハニチロHD副社長でマルハニチロ水産社長の伊藤滋社長(64)が就く。
アクリフーズはもともと、2000年に集団食中毒事件を起こした雪印乳業の冷凍食品部門だった。雪印の経営悪化から冷凍食品部門を分社化した子会社、雪印冷凍食品として01年に設立された。その後、アクリフーズに社名変更。03年、ニチロが買収した。07年にニチロはマルハと経営統合。これに伴いアクリフーズはマルハニチロHDの連結子会社となった。
アクリフーズは群馬工場と北海道・夕張工場の2工場体制で5期連続の増収。13年3月期の売上高は302億6100万円、当期純利益4億4600万円を上げていた。群馬工場の従業員294名のうち正社員は64名。期間ごとに更新される契約社員は194名、派遣社員は25名、パートは11名。従業員の約8割が非正規雇用だ。人件費を抑制して収益を確保してきた。半年ごとの非正規雇用で働く従業員の雇用契約の更新は3月に迫るが、操業再開の見通しは立っていない。非正規雇用の従業員に不安が広がっている。
●雪印、JTフーズのたどった道
農薬混入事件を受けマルハニチロHDは、14年3月期の連結業績予想を下方修正した。営業利益は昨年11月時点より35億円少ない115億円。売上高は同50億円減の8400億円、税引き後利益は同25億円減の45億円とした。税引き後利益は前期比17%減となる。
しかし、損失がこの程度で収まることはないとみられている。消費者は食の安全については敏感だ。食の安全を脅かす事件の後遺症は、長く尾を引くことになる。
2000年に発生した雪印乳業の集団食中毒事件では、1兆円以上の売り上げをあげていた巨大企業、雪印グループは解体された。現在は雪印メグミルクの商号でバター、マーガリン、チーズや牛乳を手掛けるだけになった。
08年、日本たばこ産業(JT)の子会社、JTフーズが輸入した中国製冷凍ギョーザから毒が検出された事件を契機に、JTは冷凍食品事業を縮小した。計画していたJTフーズ、加ト吉、日清食品の冷凍食品事業部門の経営統合は白紙撤回され、JTフーズは加ト吉(現・テーブルマーク)の子会社になった。こうしてJTフーズの名前は消えた。
●懸念される冷凍食品全般への影響
今回の農薬混入事件を受け、アクリフーズの製品が再びスーパーなどの店頭に並ぶことは難しいとみられている。最も懸念されているのは、消費者の買い控えがマルハニチロHDの冷凍食品全般に波及することだ。
同社の13年3月期の冷凍食品事業の売り上げは1482億円、部門別営業利益は44億円。これは全売り上げの23%、セグメント営業利益(費用控除前の営業利益)の29%を占め、同社の11ある事業部門の中で冷凍食品が最大の稼ぎ頭だ。年商4800億円規模の水産関連事業の営業利益をも上回る。
大黒柱ともいえる冷凍食品事業の売り上げが激減し、営業が赤字に転落すれば、新生マルハニチロの屋台骨を揺るがしかねない事態に陥る。
マルハニチロHDはマルハニチロ水産(旧マルハ=大洋漁業)やマルハニチロ食品(旧ニチロ=日魯漁業)などを傘下に持つ日本最大の水産会社だ。4月1日付で、すべての事業を1本化して新マルハニチロが発足する。
主導権を握っているのは旧マルハ勢だ。久代敏男社長もマルハ出身。冷凍事業部長などを歴任し、統合後は持ち株会社に移り、10年から社長を務めてきた。今年4月に取締役相談役になり、経営の第一線から退く予定だったが、アクリフーズ事件で3月末に引責辞任する。
後任の伊藤滋マルハニチロ水産社長もマルハ出身。水産第三部長などを歴任し、統合後の08年にマルハニチロ水産社長に就任。10年から持ち株会社の副社長を兼務してきた。
事件の舞台となったアクリフーズはニチロが買収した会社だ。そのためニチロ側への風当たりは強い。両社は「対等の精神」で統合したが、今回の事件でニチロ側の発言力はさらに弱まる。
関係者の間では「第2の雪印になりかねない」との懸念が広がる中、新生マルハニチロは厳しい新たな船出を迎える。
編集部
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