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急落する株価、過去最大の貿易赤字…「アベノミクスの誤算」で円安不況がやって来る!?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38346
2014年02月11日(火) 町田 徹 現代ビジネス
成す術もなく下がり続ける世界の株式相場と悪化する一方の日本の貿易収支――。この2つは、日本経済の先行きに対する警鐘ではないだろうか。
世界の市場は、バブル崩壊、リーマンショック、欧州の金融危機などを乗り切るため、日米欧の中央銀行が引き起こした新興国バブルの崩壊に年初から怯えている。加えて、史上最大の赤字を記録した2013年の貿易収支は、円高是正効果が期待外れに終わるリスクを浮き彫りにした。
我々は、そろそろマスメディアの論調に惑わされるのをやめて、アベノミクスを真摯に再評価するべき時期を迎えているのではないだろうか。
■円高是正でも「輸出数量減少」の期待外れ
財務省が1月27日に公表した昨年(2013年)の「貿易統計」で、輸出から輸入を引いた貿易赤字が過去最大の11兆4745億円を記録した。赤字は今回で3年連続であり、赤字額は前年比で65.3%も膨らんだ。この統計は、いくつかの点で、一昨年暮れに発足した安倍晋三政権が鳴り物入りで進めてきたアベノミクスの失敗を浮き彫りにしている。
何といっても深刻なのは、円高さえ是正すれば回復すると期待されていた輸出が相変わらず低水準にとどまっている点だろう。
2013年の輸出の伸びは9.5%増と、輸入のそれ(15.0%増)を大きく下回った。金額をみても、輸出は69兆7876億円と、サブプライム、リーマンショック前のピーク(2007年の83兆9314億円)の83%の水準にとどまった。
輸出で特に期待外れなのは、円高が是正されたにもかかわらず、一向に輸出の数量が増えていないことだ。例えば、昨年は1ドル=86円から105円に年間で19円(前年比18%)ほど円安になったものの、ブルーレイ、DVD、テレビなどを含む映像機器の輸出台数は前年比で26.8%も減った。自動車も同じく0.4%とわずかながら輸出台数が減少したほか、自動車部品(4.0%減)、二輪車(1.8%減)、船舶(15.3%減)とそろって輸出台数が減っているのだ。
明らかに、これは「アベノミクスの誤算」と呼ぶべき現象だろう。原因は、過去数年間に製造業が進めた生産拠点の海外移転(空洞化)と、新興国をはじめとした海外諸国の成長の減速にあるとみられる。
もちろん、交易条件(為替レート)の変化で円ベースの輸出金額は改善している(例えば、自動車は前年比で12.9%増の10兆4150億円)が、円安になっても輸出数量が伸びないという現実こそ直視すべきだろう。
■「原発停止で原油輸入急増」説のウソ
輸入でも、4年連続の増加で81兆2622億円と過去最大を記録した輸入金額だけに目を奪われて、輸入数量に注意を払わないと実態が見えて来ない。
原油は典型的なケースだろう。よく言われるように、金額ベースで見ると輸入全体を押し上げている主役が原油なのは事実である。原油は前年比16.3%増の14兆2413億円に膨れ上がった。
ただ、安倍政権など原発再稼働論者が言うように、原発の運転を停止したため、代わりにフル稼働させている火力発電所の燃料がたくさん必要になっているというのは、乱暴な議論と言わざるを得ない。というのは、原油の輸入量は、2億1171万キロリットルと前年比で0.6%減少しているからだ。
これらのデータは、金額でも、量でも、ガソリンや航空燃料まで含んでおり、発電用の原油は金額にして2〜4兆円程度とみられるが、重要なのはすでに輸入量の増加は2013年に止まっており、円安が進んだ分だけ支払いが増えているに過ぎないという実態だ。
つまり、輸入急増の元凶は、原発の運転停止ではなくて、アベノミクスが招いた円安なのである。筆者は、脱原発論者あるいは原発即時ゼロ論者ではないが、こうした実態をみると、輸入コストを理由にした声高な原発必要論には疑問を感じざるを得ない。
輸入に関して、もう一つ指摘しておかなければならないのは、輸入金額が2兆6782億円で、前年比24.6%増という高い伸び率を記録した通信機の問題だ。同じ通信機の輸出(前年比12.8%増の5316億円)から輸入を差し引くと、この分野だけで実に2兆1466億円の貿易赤字が発生したことになる。この赤字は、貿易赤字全体の18.7%、つまり2割近くを占める計算なのだ。
ちなみに、今回、急増したのは、iPhone5に代表される中国製のスマートホンの輸入だ。テレビや半導体以上に弱体化した、かつての輸出品目の大黒柱の姿がここにある。
こう見てくると、2013年の貿易統計ほど、小手先の円安誘導(1本目の矢)に過大な期待をして、成長戦略(3本目の矢)作りを怠ってきたアベノミクスの危うさを浮き彫りにした経済指標はないかもしれない。
■誤算認め、成長戦略作りを急ぐべき
そして、もうひとつ「異次元の金融緩和」に激しいシグナルを送っているのが、年初から繰り返されている世界の株式市場の急落だろう。日経平均株価をみても、2月4日の終値が1万4008円47銭と、昨年末の高値から14.0%下げる局面があった。
この原因は、主に、米連邦準備理事会(FRB)が日本より大規模に行ってきた金融緩和政策からの撤退を始めようとしていることだった。潤沢に供給されるドル資金を取り込んで、製造設備、社会インフラ、住宅などの投資を活発化していた新興国バブルの資金循環が崩壊して世界経済に悪い影響を与えるのではないか、というのである。
長くなってきたので、ここでは、FRBが直面している出口戦略の舵取りの難しさを見ると、黒田日銀も異次元緩和に深入りせずに、そこそこで、FRBに追随して縮小に入った方が、将来に禍根を残さずに済むのではないかという議論があることを紹介するにとどめたい。
話を貿易統計の輸入に戻すと、もう一つ景気のマイナス要因が読み取れる。
輸入額上位に、原油を含む鉱物性燃料(輸入全体の33.8%)だけでなく、鉄鉱石、非鉄金属鉱、木材、大豆などの原料品(同6.7%)、魚介類、肉類、穀物類、野菜、果実などの食品(同8.0%)といった品目が並んでいることだ。
輸出に比べると、為替相場の変動が効くまでのタイムラグが大きく、影響が遅れて出るものの、円安によって、これらの品目を原材料に使う分野で輸入インフレ、あるいはコストプッシュインフレが確実に到来すると予想される。
一方、今回の春闘で、経営が実質賃金の継続的な引き上げに舵を切る可能性は低く、賃金の伸びは物価の上昇に追い付かず、庶民の暮らしが厳しくなるリスクは大きい。円安不況は現実のリスクなのだ。
そして、こうした円安不況には、痛み止めのようなものを除いて、短期的に効果のあがる処方箋はなかなか見当たらない。安倍政権は、国会で成立させた補正予算で5兆4000億円のバラマキを行う構えだが、こうした手法には財政再建のハードルを高くする副作用も付き纏う。
今こそ、アベノミクスの誤算に真摯に目を向けて、成長戦略作りに全力を注ぐべきだと思うが、いかがだろうか。
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