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問題山積なのに米ドルが安定している理由
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39900
2014.02.10 Financial Times
(2014年2月7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ナイジェリアの中央銀行は1月末、米国の政治家を驚かすような方針を発表した。キングズリー・モガル副総裁が総額430億ドルのナイジェリアの外貨準備のほぼ1割をドルから中国人民元に交換することを誓ったのだ。
モガル副総裁は「国際経済学と国際貿易の将来はもっぱら中国とのビジネスおよび中国によるビジネスにシフトしていく」と指摘し、「最終的に人民元は世界的な兌換通貨になるだろう」と説明した。
各国中央銀行の外貨準備のうち人民元建てで保有されているのは全体のわずか0.01%程度で、60%がドル建て、25%がユーロ建てだ。だが、ピクテ・アセット・マネジメントのチーフエコノミスト、パトリック・ツヴァイフェル氏は、人民元準備は2025年までに外貨準備全体の30%に達し、ドルの優位性に挑む可能性があると考えている。
■ドルから人民元へのシフト、ドル危機が起きてもおかしくないのに・・・
そう考えているのは同氏一人ではない。こうした予想は、中国の高まる経済力と漸進的な通貨自由化と大きく関係している。だが、米国に対する警戒と苛立ちも反映している。
米国の経常赤字、増加する政府債務、金融危機の後遺症、そして政治の膠着状態を受け、エコノミストや投資家は迫り来るドル安に警鐘を鳴らすようになった。このためナイジェリアなどの国々が、ドルに対するエクスポージャー(投融資残高)を減らし、米国の政策の振れに縛られる状態から逃れるのに熱心になっているわけだ。
しかし、元国際通貨基金(IMF)エコノミストのエスワー・プラサド氏が新著『The Dollar Trap(ドルの罠)』で指摘しているように、ここには矛盾がある。常識に従えば、こうした展開はドル危機の火付け役になったはずだが、正反対のことが起きたのだ。
貿易額で加重平均した通貨バスケットに対するドルの価値は、2008年の水準とほとんど変わらない。また、国際的な表示通貨としてのドルの役割は近年小さくなった(例えば、ユーロ建てでの原油取引が増えているため)ものの、価値の貯蔵手段としては、ドルは今も世界随一の通貨だ。
確かに、ドル建てで保有される中央銀行の外貨準備の割合は2001年当時より低い。だが、2008年以降は低下していない。むしろ、危機によって準備通貨としての地位が低下したのはユーロだ。
外国人は引き続き米国資産に殺到しており、2008年以降に発行された米国債券全体の6割を購入した。他国に暗雲が垂れ込めると投資家は逃げ出すが、米国が岩にぶつかると投資家は買いに回る。その結果が「すべてがあべこべか逆さに見えるめちゃくちゃなビザロワールド」だとプラサド氏は主張する。
この状況が近く変わることはなさそうだ。1つには、米国の景気が回復しており、米連邦準備理事会(FRB)が資産購入を縮小していることがある。どちらもドル相場を下支えする出来事だ。だが、経済学の枠を超えた別の理由もある。恐怖心である。
■安全性ではなく流動性への逃避
過去10年間というもの、新興国は市場の混乱に対する防衛策として高格付けの国債を積み上げてきた。規制当局は欧米銀行に圧力をかけて同じことをさせた。だが、今や正真正銘の安全資産がほとんど存在しない。米国債でさえ、もはや無リスクに見えない世界で、資産運用担当者は次善の選択肢に飛びついた。つまり、安全性ではなく流動性への逃避だ。
この点では、米国はトップに君臨している。米国の資本市場は奥行きがあり、ドルのプールは底なしに見える。あるいは、言い換えるなら(もっとも、現在経済学の教授を務めるプラサド氏は、はっきりそう言っているわけではないが)、ドルに起きていることは通常の経済学の法則をひっくり返している。供給量が制限されているためではなく、供給量が豊富なために、ドルは超魅力的になったのだ。
やがては通常の経済法則が再び優勢になり、ドルの過剰供給をもたらす緩和政策が米国通貨の魅力を損なうのかもしれない。だが、再び政治的な動機が経済学に勝つ可能性もある。米国政府の債権者の多くは米国の有権者だ。彼らは価値の低減と戦うだろう。プラサド教授は、外国人投資家はこれを知ったうえで、米国資産を買い続けると予想している。
もちろん、ナイジェリアなどの国々が話したがるのは、こういうことではない。外貨準備の多様化の話題が大流行しており、各国中央銀行は人民元だけでなく、カナダドルなどの他国通貨も買っている。
だが、選択肢の幅広さが、どれか1つの通貨がドルに対抗するのを難しくする(これはドルに不満を持つ向きが認めたがらない事実だ)。ドルへの殺到と例の矛盾をいっそう激しくする可能性の高い新興国市場の混乱の最中では、なおのことだ。
By Gillian Tett
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