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公的機関の日本株「大量保有」問題
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38260
2014年02月09日(日) ドクターZ 週刊現代
公的機関が株を持つことの意義は何なのか―。そんな問題が、いまちょっとした話題になっている。
今年1月に大和総研が出したレポートによれば、日本銀行、銀行等保有株式取得機構、預金保険機構という3つの公的機関が保有している日本株は、それぞれ簿価で3兆6354億円、1兆2048億円、1兆5564億円にのぼる。
一方で、日銀は昨年末の政策委員会で保有株の売却凍結を2年間延長することを決定。同じように銀行等保有株式取得機構、預金保険機構も大量の保有株を売却凍結している。
公的機関は巨額の日本株を持ちながら、それの売却をストップさせているというのが現状なのだが、一体、これのなにが問題なのか。
その疑問を解き明かすには、同じく日本株を大量保有している年金積立金管理運用(GPIF)という独立行政法人の例を考えるとわかりやすい。
GPIFの保有株額は20兆1908億円('13年9月末)。GPIFは国民の年金資産を運用する機関で、運用を目的として株を保有している。年金資産を運用する公的機関が株式を持つのは当然と思われるかもしれないが、実はそれ自体が世界の常識とはいえない。
たとえば、'90年代末のクリントン政権下の米国では、公的年金による株式運用が提議されたことがあった。ところが、当時のグリーンスパン連銀議長などから、反対論が相次いだ。旗色が悪いと感じるや、クリントン大統領はあっさりと提案を撤回した。
反対論の趣旨は、株式運用には結果責任が問われるが、政府はそうした責任をとる仕組みがないというもの。わざわざ国が国民からカネを集めて、それを政府が国民に代わって財テクするのなら、積極運用が好きな国民が自分で財テクすればいいという理屈だ。
グリーンスパン氏は、「政府は健康のためにたばこ会社に厳しい措置をしなければいけないが、そのときに公的年金でたばこ会社株を持っていたらどうするのか」とも発言している。公的年金の運用を気にしてたばこ会社への措置をためらったらまずいし、たばこ会社への措置の前に公的年金がたばこ株を売ったら、インサイダー違反になるのでさらにまずいというわけだ。
このエピソードは、たばこ製造の独占企業≠ナあるJT株を保有する日本政府には、耳の痛い話だろう。実際こんなこともあった。'09年の予算編成期に厚労省がたばこ税の大幅アップを主張すると、JTの株価が15%ほど低下。結局、たばこ税はさほど上がらなかったため株価は戻ったが、もし大幅増税して、公的年金でJT株を持っていれば、年金運用に打撃が出かねなかった。
いずれにしても、公的機関が株を保有すると運用失敗の責任はとれないし、公的部門が行う行為によって株価が上下するため、究極の「インサイダー」にもなりかねない。かつて、福井俊彦日銀総裁(当時)が村上ファンドの株を持っていて大問題になったことがあったように、総裁が株式を持つことが問題になるのであれば、日銀も持っていいはずがないというのが素朴な考え方だろう。
とはいえ、もう持ってしまっている以上、売り時は難しい。大量の株を一気に売ると、市場が混乱しかねないからだ。しかし、見てきたように公的機関は株の保有に不適格なのだから、ここまできたら永遠に持ち続けるか、今日にでも目をつぶってすべて売るしかない。間違ったことをしてきた代償はかくも大きいのだ。
『週刊現代』2014年2月15日号より
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