http://www.asyura2.com/14/hasan85/msg/488.html
Tweet |
財政再建、政府予測のまやかし〜楽観的な前提数値は世界的非常識、崩れるPB目標
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140205-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 2月5日(水)3時16分配信
2020年といえば、東京五輪が開催される年だが、財政からみれば、ある目標の年に当たっている。政府は「15年に基礎的財政収支を10年から半減させ、20年に黒字化」という目標を掲げているのだ。
基礎的財政収支はプライマリーバランスとも呼ばれており、利払いなど公債費用を除外した財政収支のことを指す。膨張する債務残高を抑制するための目安で、10年における国・地方の基礎的財政収支の対GDP比はマイナス6.6%だったが、政府は15年にはこれを半減し、20年に黒字化するという目標を立て、国際公約としている。
1月20日には内閣府は経済財政諮問会議に「中長期の経済財政に関する試算」(http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h26chuuchouki.pdf)を提出した。この試算が政府の財政の見通しを示す際の前提になることから、各メディアはその内容を一斉に報じた。
LINEが運営するニュースサイト「BLOGOS」の1月27日付記事『内閣府が中長期財政試算を発表。前回試算よりも状況が改善している理由』(http://blogos.com/article/78886/)にあるように、試算における15年の基礎的財政収支は経済再生ケース(アベノミクスが成功した場合、平均成長率は実質2%程度、名目成長率3%程度)と、参考ケース(平均成長率は実質1%程度、名目2%程度)の2つのケースを明らかにしているが、経済再生ケースでは、対GDP比ではマイナス3.2%となり、10年との比較で半減(マイナス3.3%)という目標はクリアする。
●増税しても目標達成は困難
一方、黒字化が目標の20年の基礎的財政収支は対GDP比ではマイナス1.9%。これは消費税を10%に増税することを前提にした数字なので、このままの状態では、たとえ増税を行ったとしても、財政目標の達成は難しいという。
内閣府は昨夏にも経済財政諮問会議に「中長期の経済財政に関する試算」を提出しているが、その後の経済対策効果もあって、税収の予想が上振れ、財政収支が前回試算より改善する予想となっている。
ただし、内閣府の中長期財政試算の経済再生ケースはあまりにも楽観的すぎるという声が研究者には多い。
1月28日付日本経済新聞連載コラム『大機小機』の『成長率、「目標」と「前提」は大違い』では、前提としている経済の姿がかなり楽観的で「議論の突っ込みどころ満載」だと問題視している。
「試算では14年度と15年度の成長率(実質、以下同じ)をそれぞれ1.4%、1.7%と見込んでいる。これに対して、民間エコノミスト約40人の平均的な見方(日本経済研究センターの調査)は、0.8%と1.4%である。
長期的に見ても、試算では13〜22年度の平均成長率を実質2%程度としている。これは、政府の成長戦略が目標とする成長率である。(略)ちなみに経済研究センターの中期経済予測(昨年12月)では、労働力人口の減少などを織り込んだうえで、21〜25年度の成長率は0.7%。政府試算が前提とする成長率は、これに比べてかなり高いといえる」
この記事では、政府が「目標」を試算の「前提」にするのはどうかと指摘している。確かに、高めの成長率を前提にすると、歳入が増えて財政赤字は小さめとなる。しかし、ひいき目に見ても「20年度の基礎的財政収支の黒字」という目標を実現できないという問題がある。
●内閣府の試算のカラクリ
13年8月12日付「ダイヤモンド・オンライン」記事『財政再建への遠き道のり 課題先送り「中期財政計画」を検証する――明治大学公共政策大学院教授 田中秀明』(http://diamond.jp/articles/-/40047?page=4)では、昨夏のデータを基にした検証だが、「2つのケースが示されているが、基本ケースは、アベノミクスが成功した場合であり、慎重な成長率(それでも1%)は、あくまでも『参考』の位置付けである。民主党政権では、推計で使う成長率を『慎重なもの』とし、世界標準となったにもかかわらず、安倍政権では、これを従来のように『楽観的な』ものにしてしまった。期待成長として、高めの成長率を目標とすることは否定しないが、財政の見通しでは、慎重な成長率を使うのが世界の常識である(2つの成長率を仮定してもよい)」という。
つまり、本来であれば、世界の常識である慎重なシナリオ(参考ケース)で見るべき試算を、楽観的なシナリオ(基本ケース:経済再生ケース)を中心に見てしまっているのだ。慎重シナリオ(参考ケース)で見ると15年の対GDP比はマイナス3.4%となり、10年との比較で半減という目標(マイナス3.3%)さえも、クリアできなくなってしまうため、楽観的シナリオで見たくなる気持ちもわからないではない。安倍政権がアベノミクスの効果を宣伝するために、そうしたカラクリを利用しようとしているわけだが、経済メディアまでが官製発表に引っ張られてしまうのは問題だろう。
試算をちゃんと見ていれば、「世界標準の慎重なシナリオ(参考ケース)では、『15年に基礎的財政収支を10年から半減させ、20年に黒字化』という国際公約がともに達成できないことが明らかになった」と報道すべきものなのだ。
●求められる第三者機関の設置
政府にも改善が求められる。政府の推計は「目標」の数値を「前提」にしているために信頼度が高いとはいえない。07年のある推計では、すでに今頃は黒字化のメドさえついていたことになるほど、推計が当たらなすぎるのだ。
「例えば、『日本経済の進路と戦略 参考試算』(07年1月18日経済財政諮問会議提出)を見ると、10年頃には財政の黒字化のメドがついているという予測になっています。つまり、この通り政策が進んでいれば、今頃には財政の黒字化が実現しているはずです。しかし現実にはなっていません。これは当時の政府の方針を反映した上での推計にすぎないからです」というのは、川出真清日本大学経済学部准教授(『数字か? 直感か? 迷ったら統計学を使え!』<廣済堂新書>)。「日本経済の進路と戦略 参考試算」とは「中長期の経済財政に関する試算」の別称だ。
同試算が出された翌08年にはリーマンショックがあったとはいえ、あまりに楽観的な見通しで議論をしていたことがわかる。そのツケが回ってきているのかもしれない。
「日本では全般かつ10年程度の経済見通しは『内閣府』、財政の3年程度の見通しは『財務省』、社会保障などの長期の見通しは『厚生労働省』と、各種でバラバラの経済推計をしています。(略)政権ごとの政策意図や省庁の事情が反映されていて、科学的ではあるかもしれないけれども中立的とはいえない結果」(同書)になっているという。
アメリカでは議会予算局(CBO)、イギリスでは予算責任局(OBR)という中立的な経済財政を推計する第三者機関があり、政府側の推計との比較検討ができるようになっており、緊張関係がある。OECD(経済協力開発機構)もこの第三者機関の設置を日本に働きかけており、東京財団は独立推計機関の設置を提唱している。しかし、まだまだ第三者機関設置でさえも道半ばというのが日本の現状のようだ。
松井克明/CFP
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。