02. 2014年2月05日 09:37:52
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うまくいくかどうかhttp://toyokeizai.net/articles/-/29395 三越伊勢丹、JR西日本の暗中模索 不振の百貨店「JR大阪三越伊勢丹」を衣替え 石川 正樹:東洋経済 記者2014年2月3日 売場縮小を決めたJR大阪三越伊勢丹。写真は開業当初の11年(撮影:ヒラオカスタジオ) 当初の目標を大きく下回り、抜本的な売り場改革が不可避と考えられていた「JR大阪三越伊勢丹」(以下、大阪店)に、新たな手が打たれる。その方針は、百貨店売場を6割減らし、隣接するJR西日本系のファッションビル「ルクア」と一体運営するというもの。今夏からの改装で、事実上、専門店ビルに衣替えする。 大阪店が開業したのは2011年5月。西日本旅客鉄道(JR西日本)が6割、三越伊勢丹ホールディングス(HD)が4割を出資するジェイアール西日本伊勢丹が運営している。同社は、大阪店と「ジェイアール京都伊勢丹」の2店を持つ。開業当初、大阪店の目標は年商540億円だったが、販売が振るわず2013年3月期は300億円強にとどまる。 運営会社は約100億円の債務超過 大阪店の開業初年度である12年3月期、運営会社のジェイアール西日本伊勢丹は63億円の営業赤字(11年3月期は4.4億円の黒字)だった。翌13年3月期も営業赤字40億円に加え、大阪店の店舗減損損失を中心とする特別損失198億円が響き、242億円の最終赤字を計上。この大赤字で同社は99億円の債務超過に転落している。 写真を拡大 業績悪化は出資母体にも響く。三越伊勢丹HDの13年3月期連結決算では、58億円の持分法投資損失が出ている。三越伊勢丹HDの単独決算では、ジェイアール西日本伊勢丹の株式評価損を計上し、簿価をゼロにした(12年3月期の簿価は80億円)。
一方、JR西日本も13年3月期に大阪店の建物など減損損失188億円を計上。大阪店の簿価は13年3月末の267億円から13年3月末で64億円に急減している。 大阪店の苦境については、三越伊勢丹HDの杉江俊彦常務が昨年11月の中間決算で、「隣接するグランフロントの開業(13年4月)で人の流れが変わり、売り上げが改善すると見ていたが、厳しい状況が続いている」と説明していた。 また、「年商540億円を前提とした店舗なので過大装備となっており、人員も含めて経費削減を進めている。赤字額はかなり減っており、14年3月期の営業利益は何とかゼロに近づけたい」(杉江常務)と、なお予断を許さぬ状況であることも隠さなかった。 地域4番店ゆえの厳しさ 苦戦の理由は、梅田地区では最後発の出店で、開業当初から阪急、阪神、大丸に続く地域4番店だったことが大きい。当然ながら、百貨店の購買客に訴求力のある高級ブランドショップは地域1番店に集まりやすい。同じブランドが2番店に出店する場合も、新商品で品揃えを変えるケースも散見される。 エルメス、グッチ、カルティエ、プラダ、シャネル、ティファニー。こうした高級ブランドは梅田1番店の阪急百貨店に大挙して入居しているが、三越伊勢丹には一部の宝飾・時計売り場を除いて、まったく入居していない。 大阪店が開業する直前の11年4月に大丸梅田店が増床開業し、この3階部分にプラダやグッチなど高級ブランドが入った影響もあったようだ。大阪圏の消費者は東京圏以上にブランド志向が強いとされ、アベノミクスによる株高で火がついた高額品消費の波にも乗り切れなかった。 三越と伊勢丹の”折衷” もっとも、梅田地区は全国有数の競合エリアだ。地域1番店の阪急梅田本店ですら、改装開業前の売上計画に届いていない。 こうした中、阪急では高価格帯に加え、値ごろ感のある商品にも手を広げた。一方、JR大阪三越伊勢丹は合弁会社での運営という性格もあり、環境が厳しい中で品揃えやショップの機動的な改編が出来なかった。大阪店では「イセタンガール」など得意の自主編集・企画売り場を当初、売場面積の3割程度で展開した。しかし、思うような集客にはつながらず、売場の閑散とした様子に、地元関係者からは「見ていて可哀想」との声も出る。 11年2月に開いた大阪店の説明会(撮影:ヒラオカスタジオ) 08年の経営統合で誕生した三越伊勢丹HDが展開する百貨店の中で、「三越伊勢丹」と冠した店舗は全国でもこの大阪店だけだ。
業界関係者は大阪店について、「旧伊勢丹テイストのある尖ったイメージがあるのは、イセタンガールと3階のセレクトショップの『リ・スタイル』、8階、9階のメンズ、紳士服ぐらい。逆に5から7階の婦人服やリビングは普通の品揃えで、銀座三越のよう」と評する。 言い換えれば、MD(品揃えや商品開発)は、シニア路線の旧三越サイドと若者層向けの旧伊勢丹サイドの”折衷”となり、店舗全体としてのターゲットやコンセプトが消費者に伝わりづらかったともいえる。 専門店ビル化という選択肢 三越伊勢丹HDの大西洋社長はこれまで、「(地方店では)大阪が一番の課題。15年度をメドに黒字化したい。JR西日本とも情報を共有化し、計画を練っている」と話してきたが、出てきたのは専門店ビル化。当初から想定された範囲内の施策で、意外感はなかった。 これまでの取材で大西社長は、「伊勢丹新宿店で評価されているMDを大阪に持って行くことも考えている。従来は中途半端だった。新宿でしか、伊勢丹でしかできない物を視野に入れるべきかもしれない」と述べていた。だが、高級ブランドが入らず、自主売り場の訴求力がなければ、詰まるところ選択肢は専門店ビル化しかなかったといえる。 専門店化に当たって、ルクアを運営するJR西日本SC開発が全館を運営し、百貨店は核テナントになる計画だ。全体の施設名や核テナントとなる百貨店の名称は未定だが、「三越伊勢丹」の冠が外される可能性が高い。いわば事実上の撤退だ。 三越伊勢丹HDは「脱百貨店路線」を進めるJ.フロント リテイリングと異なり、テナント導入・運営のノウハウ蓄積があるわけではない。むしろ、「ルクア」を展開するJR西日本は貸しビル業者として一日の長がある。業界関係者は「ルクアのMDは非常に精緻。今後、専門店化を本格的に進めれば、脅威になるかもしれない」と警戒感を示す。 三越伊勢丹とJR西日本の協力関係 専門店ビル化で、相対的にJR西日本側の存在感が増すと予想される。そこで注目されるのが、債務超過に陥っているジェイアール西日本伊勢丹に対する財務・資金支援だ。 三越伊勢丹HDの大西社長は、運営会社の追加出資をどうするのか(撮影:梅谷秀司) 今後の改装には60億円程度を必要とし、百貨店の改装額はこれに含まれるが、さらに膨らむ可能性も否定できない。信用力強化という面から、資金調達にはJR西日本と三越伊勢丹HDからの増資が検討されている。2社のパワーバランスが変容しそうな状況で、従来通りの6割(JR西日本)、4割(三越伊勢丹HD)が維持されるのか。
三越伊勢丹HDの大西社長は「出資比率が変わることはない」と繰り返してきた。だが、関係者は「出資比率も含めて検討している」と話す。京都店がある以上、三越伊勢丹HDが追加出資を見送ることはないにしても、出資比率が低下するかがポイントになる。 現状、ジェイアール西日本伊勢丹の借り増しは検討されていないもようだ。12年3月末で三越伊勢丹HDは同社に対して120億円の債務保証を行っていたが、13年3月期に39億円の債務保証損失引当金を計上し、それが80億円に切り下げられている。今後、借り入れの形で資金調達が行われる場合には、債務保証の追加が必要と見られ、この点も注目される。 |