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円借款のカラクリ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38205
2014年02月02日(日) ドクターZ 週刊現代
日本の円借款が、2014年度に9650億円と前年度に比べ8%増え、14年ぶりの高い水準になる見通しだという。
円借款とは、開発途上国に対してインフラ整備などのために低利かつ長期の緩やかな条件で、開発資金を貸し付けるもの。貸し付けは独立行政法人国際協力機構(JICA)が日本政府の代わりに実施している。
'14年度に円借款が多額に実施できるのは、過去に実施した円借款の返済が近年多額になってきており、貸し付けの原資が潤沢なため。要するに、過去に中国や東南アジア諸国に対して行われた円借款の返済が始まっており、それを再び財源としてアフリカ諸国へ貸し出すというわけだ。
円借款は政府開発援助(ODA)の一部で、ODAの中にはほかに無償援助や技術協力が含まれる。かつての円借款(有償援助)は、海外経済協力基金(後の国際協力銀行)が行い、無償援助や技術援助は国際協力事業団(JICA)が行っていた。つまり、ルートが二つの機関に分かれてバラバラだった。
そのため、円借款と無償援助・技術協力を一本化する構想は以前からあったが、海外経済協力基金が大蔵省からの天下り先であったために実現しなかった。むしろ、大蔵省は海外経済協力基金をとられまいとして、これも有力な天下り先である日本輸出入銀行と統合させ国際協力銀行とし、実質的に二つの総裁ポストを温存したくらいだ。
さらに、新たにできた国際協力銀行が円借款と国際金融業務を同時に行うこととなり、「経済援助と商業融資の混在」として国際社会で問題にもなった。
そこで、'08年、政策金融改革の一環として、国際協力銀行から円借款が切り離され、JICAに統合され、ようやくODAとして一本化されることになったという経緯がある。
これで海外援助政策としてはすっきりしたものになったが、その原資は国民のカネだ。
現在のJICAの有償資金勘定のバランスシートをみると、'12年度末に資産側に貸付金11兆円がある一方で、負債側は財投借入等1・9兆円、資本金7・7兆円となっている。この負債側の原資は政府の国債発行なので、結局円借款は国債によって調達された国民のカネだといえる。
つまり、円借款の返済金があるのならば、本来は原資である国債の償還に使われるべきなのだ。その上で、本当に円借款が必要な相手国先であれば、新たな国債発行をしてもいいというのが正しい政策といえる。
そもそも、低利かつ長期という相手国に有利な条件での貸し付けの方式がとられてきたのは、日本が無償援助を出しにくく、貸し付けが主体にならざるをえなかったという事情があるが、相手国の自立に役立ってきたという側面もある。無償援助では、もらい癖がついてかえって自立できなくなるが、貸し付けで返済させることで経済自立を促す効果があるということだ。
一方で、かつて中国へ巨額の円借款を行い、海外経済協力基金の天下り総裁は閣僚級の扱いを中国から受けたという話もある。さらに、中国政府が日本からの借款に感謝したと公の場で大々的に語ることもない。
円借款を増やすのであれば、そうした過去の失敗を繰り返さないことが必要だ。その上で政府は、円借款の裏に国債があり、それはいずれ税金で返済されるので国民の負担であるという点を忘れないで、海外協力分野でしっかりとした業績を残してもらいたい。
『週刊現代』2014年2月8日号より
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