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社長辞任では終わらないマルハニチロHDの「社会的責任」
http://gendai.net/articles/view/newsx/147555
2014年1月28日 日刊ゲンダイ
「私物の持ち込みや作業室の出入りは自由」「監視カメラはなく、つまみ食いし放題」――。
「アクリフーズ農薬混入事件」で、群馬県警に偽計業務妨害罪で逮捕された阿部利樹容疑者(49)の奇行に注目が集まっているが、それ以上に驚いたのは、マルハニチロホールディングス(HD)の会見で明かされた“新事実”だ。
この事件は当初、工場の管理体制について「厳重管理された作業現場」「制服にポケットがなく、私物持ち込みはムリ」と報じられてきた。つまり、商品に農薬マラチオンを投入するのは「不可能」とみられていたのだ。それが25日のマルハニチロHDの会見では一変し、ズサン体制が次々と判明。久代敏男社長は「危機管理体制が不十分だったと反省せざるを得ない」と認め、3月末に退任する意向を示したが、辞めて済む問題じゃないだろう。
「そもそも事件に対する会社の対応が遅い。消費者から苦情が最初に入ったのは昨年11月13日。しかし、自主回収を発表したのは1カ月以上経った12月29日です。もっと早く回収に動いていれば、2800人もの被害者を出さずに済んだのは間違いない。多くの被害者を出しながら逮捕容疑が懲役3年以下の偽計業務妨害罪というのも、事件発覚まで時間があり、警察が有力な証拠をなかなか集められなかったからだと思う。『60個食べないと健康被害なし』という説明を後になって『8分の1個』に訂正したように、会社は事件を軽く考えていたフシがあります」(県警担当記者)
■会社はおとがめなしでいいのか?
食品に毒物を混入させる事件は立件が難しい――というのは捜査関係者の間では常識だ。複数の目撃証言や映像がないと因果関係を立証できない。事実、過去の「和歌山毒カレー事件」や「千葉大チフス事件」でも裁判はもつれた。初動捜査が重要なのである。
容疑者は逮捕されたが、会社側はおとがめなしなのか。元検事の落合洋司弁護士はこう言う。
「民事としては今後、『被害者の会』などがつくられ、会社側に使用者責任に基づく損害賠償を求める可能性はあります。刑事でも、会社側の管理体制に問題があるとして被害者が『業務上過失致傷』などで告訴することも考えられます。『スイマセン』と頭を下げて終わりではありません」
マルハニチロHDが、社会的責任を痛感するのはこれからだ。
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