03. 2014年1月27日 18:05:39
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<Vol.307号:年初の株価変調と、講演CDの宣伝・案内> www.cool-knowledge.com/ 吉田繁治です。本稿は、2014年の年初から、米国FRB による、量的緩和の部分縮小と、米国からの新興国投資の引き揚げ の動きの中で、変調している日本の株価と、講演CDの案内・宣伝で す。 【項目は以下です】 1.株価の変調 2.2014年1月:FRBの量的緩和の一部縮小 3.日本株は、ガイジンが売り超に転じた 4.講演CDの購入 案内 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ■1.株価の変調 経済の好不調をあらわす、シンボル的な指標と見ていい日経平均株 価(225種平均)の、リアルタイム・価格チャートを、時々、見て います。 刻々と変化するグラフの動を、次の1時間後には、上がっているか、 下がっているか、心の中であらかじめ決めて、見ているとおもしろ のです。 http://sisannka.com/chart.html 確認すると、金曜日の下落で注目されていた週明けの1月27日 (月)で385円(2.6%)の下げです。 1日で2.6%の値動きは大きい。年間換算では、√256倍=16倍。2.6 %×16=VIXが42%。VIX=ボラティリティ・インデックス。42%は 危険な幅です。 このVIXが40%を超えたときは暴落のサインです。たたし今日1日だ けでは、確定的には言えません。20日間のVIXでみなければならな い。上げるにせよ、下げるにせよ、今度も1日に250円(1.7%)か ら400円(2.6%)も動く相場が続くと、とても危険です。今週、来 週は、強く、日経平均をウォッチする必要があります。 2014年の年初から、世界の株式市場は、米国FRBの、量的緩和の一 部縮小の発表(2013年12月18日)を受けて、変調をきたしています。 株価の上昇は、時価総額の上昇であり、これは資産額の増加により、 経済に対してマネーが増発されるのと同じ効果をもちます。下落は マネー額の縮小と同じです。14年1月27日で東証一部の時価総額が4 51兆円です(PERは16.4倍)。(二部は5.8兆円、ジャスダックが102兆円)。 日経平均の5%の騰落で[465兆円×5%=23兆円]、10%の騰落で4 6兆円、20%では90兆円規模の、マネー量の増加/縮小です。株式 市場でも、資産ではありますが、株価の上昇は日銀のマネー供給と 同じ経済効果をもっています。 国内では、株の、個人取引口座は延べで、4596万人分です(2012年 末)が、これは同じ人の名寄せ前で、休眠や超少額取引も含まれま す。 わが国では、株式投資家と言える人は、その6.5分の1の700万人と されます。現在も変わっていないでしょう。この個人投資家の700 万人が、株式市場での資産額で20%くらいを占めています。年間取 引で300兆円、ネットからの売買がすでに84%です。 10年以上前から、売買額でもっとも大きいのは、海外(ほとんどが 租税回避地)から売買しているヘッジ・ファンド、および投資銀行、 年金や国家ファンドです。 米国の株式売買額は、日本(東証)の10倍です。日本の株式市場は、 ドイツに似て、GDPの割には小さい。株は圧倒的に英米資本主義で す。 日本市場の売買額(2兆円から4兆円/日)の60〜70%は、外人投資 家です。(注)日本の金融機関のオフショア・マネーが、オフショ アから投資される場合も、海外投資家の分類になります。 オフショアは、ケイマン島やバージン諸島、香港、シンガポール、 スイス、米国デラウァエア州など、世界で主要60ヵ所です。世界の 政府の、規制と税が及ばない特別法令区です。 2013年現在で、世界の銀行資産(推計6000兆円)の、50%はオフシ ョアにあると推計されています。大きな金融は、闇の世界です。ア マゾンもアップルも、その金融資産は、オフショアであることは知 られています。 ●2013年の株価上昇(ほぼ1万円→1万6000円:日経平均)は、この 外人投資家が、1ヶ月平均で1.2兆円、年間で15兆円買い越したこと によります。(注)ほぼ100%が、オフショアからの売買です。 2012年11月以降、ガイジン勢の買いが、売りより先行して注文をつ けたので、日本の株価は2013年で60%上がり、「アベノミスクへの 期待で、経済は好転した」とされてきました。 他方で、国内の個人、事業法人、金融機関は、リーマン危機後の株 価崩落の損をとり戻すことが目的であるかのように、合計で15兆円 売り越しています。 700万人の個人投資家が全員、悲観的で、海外投資家に対し売り越 したというのではない。60%が年間ベースで20兆円くらい売り越し て(420万人:1人平均で500万円)、40%が10兆円くらい買い越し た(280万人:1人平均350万円)ということでしょう。 売り越した420万人は、過去の損失の回復が目的であり、買い越し た280万人は、日経平均は1万6000円を超えても上がると期待してい るでしょう。(ここは、当然に、推計です) 【日経平均株価のマクロの動き】 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 2007年7月 1万8560円の高値 ・・・2007年から2008年で1万円下落・・・ 2008年9月 7054円の底値(62%下落) 08年9月〜12年10月 8000円〜1万1000円 ・・・2013年はほぼ60%の上昇・・・ 2013年12月末 1万6291円(ほぼ60%上昇) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ■2. 2014年1月:FRBの量的緩和の一部縮小 2014年1月には、米国FRBが、2012年9月から、1ヶ月に国債$450億 (4.5兆円)、住宅ローン担保証券のMBSを$400億(4兆円)買い続 けていた量的緩和第三弾(QE3)を、$100億(1兆円)縮小しまし た。 量的緩和を停止するということではない。2014年中は続けますが、 「米国経済の、株価、GDP、失業率の様子を見ながら調整」という あいまいな発表です。 2012年8月の米国FRBの総信用は、$2.8兆(280兆円)でした。2014 年1月23日には$4.0兆(400兆円)にふくらんでいます。 この間、米国FRBは、$1.2兆の国債とMBSを買い増しして、$1.2兆 (120兆円)を、米国の金融機関がもつ預金口座(FRB当座預金)に、 ドルの現金として振り込んでいます。この$1.2兆(120兆円)が、 量的緩和第三弾(QE3)による米ドルの増発額です。 http://www.federalreserve.gov/releases/h41/Current/ こうした、中央銀行の増発マネーが、100年に1度の信用恐慌と言わ れた(前々FRB議長グリーンスパン)リーマン危機以降の、金融恐 慌を救い、世界の株価を、大きく上げてきました。2013年は、バブ ル的な上昇だったと思えます。 ▼【重要】合計1000兆円の、中央銀行によるマネーの増刷があった 2008年9月以降の、米ドル(米国FRB:+320兆円)、ユーロ(欧州EC B:300兆円)、元(人民銀行:+300兆円)、円(日銀:+100兆円) の、同時マネー増発額は、驚愕すべき1020兆円余です。 (注)中国人民銀行の元の発行額(=中国人民銀行の信用額)は、 一般に知られていませんが、GDP(820兆円)の70%の、560兆円で す(13年10月)。リーマン危機以降の元の増発は300兆円と推計し ます。 08年9月以降の、世界的な信用恐慌に対して、未曾有な金額1000兆 円余(世界のGDP 6000兆円の17%)の通貨を増発して、金融機関に 与え、1000兆円マネーによって、08年以降の、金融・経済・株価が 底上げされてきたと言えます。 この延長で言えば、米国FRBが「量的緩和を縮小する出口政策に向 かう」という方向は、大きな転換です。量的緩和を拡大することは なくなったと見なされるからです。 ただし、米国FRBの量的緩和縮小の方向を、大きく補うのが日銀に よる、月間8兆円($800億に相当)の、異次元緩和という円の増発 です。この円の増発は、国内金融機関が所有する預金の増加です。 この金融機関で増加した円は、米国の金利が上がると、ドル買い (円売り)に向かうマネーです。あたかも、FRBから、日銀がマ ネー増発のバトンタッチを受けたように、思えます。 FRBの$供給縮小と、日銀の円の大増発の、それにしても見事な時 期の符合です。FRBのQE3が1ヶ月$850億(8.5兆円)、日銀のマ ネー増発が月8兆円と、金額までほぼ同じです。 ■3.日本株は、ガイジンが売り超に転じた 2013年は年間で15兆円、月間で1.2兆円、週平均では3000億円も買 い越していた外人投資家が、2014年の新年明けから、以下のように 売りに転じています。 【東証主体別売買:−は売り超】 1/6〜1/10 1/14〜1/17 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 外人投資家 -1452億円 -412億円 個人投資家 2823億円 1122億円 事業法人 -313億円 -187億円 金融機関 159億円 -389億円 証券会社自己売買 -967億円 -600億円 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 日経平均株価 1万6147→1万5880 1万5657→1万5734 (注)2014年1月27日は、日経平均1万5034円(午後2時時点) 注目すべきは、上記の第1週と、2週の、外人投資家の売りです(14 52億円+412億円)。外人投資家は2013年に15兆円買い越して、15兆 円分、持ち高を増やしています。これは、下げの局面に向かうと、 大きな売り圧力になります。 世界に、グローバルな投資をしている英米系のヘッジ・ファンドと ファンドは、米国FRBの量的緩和の一部縮小を受けて、新興国への 投資を引き揚げ、通貨米ドル(ドル預金)、および金利が3%付近 の米国債に転じています。 この投資引き揚げにより、アルゼンチン通貨(ペソ)、メキシコ・ ペソ、トルコ・リラ、南ア・ランドなどが、大きな下落を見せてい ます。日本株からも、まだ少額ですが、引き揚げの兆候が見えてい ます。 買い越していた主体が、売りに転じた場合、その売りによる下落の 圧力は、2倍は強いものになります。 ただし、日本では年金基金(GPIF:124兆円:13年9月)による日本 株の買いと、日銀による株ETF(上場投信)の買いは、2012年2月、 3月、4月と予定されていると見ていいでしょう。消費税増税の影響 による株価の下落、景気の低下を緩和するのが、政府の予定だから です。 (注)GPIFの、現在の国内株での運用額は20兆円(構成比は16%) です。10兆円分くらい増やすことが可能になると、外人売り(大き なときは月1兆円の売り超を予想)を補えます。 日本の株価が下落傾向を示すと見られたときは、GPIFと日銀にを使 う「PKO=価格維持戦略=Price Keeping Operation」が想定できま す。 ■4.講演CDの購入 案内 思わず、長くなりました。日本の株価の転換を示す、[外人売りへ の転換]の兆候かも知れないため、背景事情を、示しました。 拙著『これからの5年』に関連して昨年末に行った、東京講演のCD とレジュメが、その本を出したビジネス社から発売されています。 講演時間は3時間、使ったレジュメは54枚です。このレジュメは、P DFで、CD1枚に全部を収録し、講演の音声CD(2枚)とともに、ゆう パックで送られます。価格は1万円です(↓)。ご覧あれ。 http://www.business-sha.co.jp/2013/12/%e3%83%9e%e3%83%8d%e3%83%bc%e3%81%a8%e7%b5%8c%e6%b8%88%e3%80%80%e6%99%af%e6%b0%97%e5%9b%9e%e5%be%a9%e3%81%af%e3%81%93%e3%81%ae%e5%85%88%e3%81%a9%e3%81%86%e3%81%aa%e3%82%8b%e3%81%ae%e3%81%8b/ 講演のよさは、難しい用語や概念を、日常用語で解説しながら話せ ることです。 『これからの5年』の書籍は(↓)以下のHPからリンクを張ってい ます。 http://www.cool-knowledge.com/ ▼53ページの、レジュメの項目:アウトライン §1異次元緩和は成功するのか (1)異次元緩和の内容 (2)マネタリー・ベースとは何か? (3)マネー・ストックとは何か? どうなって来たのか? (4)中央銀行による金融緩和 政策の2つ (5)マネタリズムの考え (6)流動性の罠、ゼロ金利限界とは何か (7)実質金利とは (8)異次元緩和が、効果を生む条件 (9)戦後英国の国債残GDP比275%は、なぜ、20年でGDP比50%に減 ったのか? §2 インフレは、通貨増加によるマネー価値の低下 (1)消費者物価と、住宅価格・・・長期推移 (2)地価は物価の10倍の割合で騰落する傾向がある (3)量的緩和への期待、特に円安20%で上がってきた株価 (4)期待純益で上がり、期待で下がる株価 (5)10年間5倍に上げ、 2013年4月から金ETFの売りで下がった金価格 (6)重要データ;金の用途別需要量(WGC) (7)金は、基軸通貨である米ドルの反通貨(金価格上昇は$下 落) (8)有限量の金と、無限量になり得る通貨 (9)1オンス$1200(1g3800円)という下限価格の想定 産金コストが1オンス(31.1g)で$1200である。 (10)00年代の米国と日本の消費差者物価、コモディティ価格 (11)リーマン危機後、世界の中央銀行は1000兆円のマネー増刷 (12)マネー増発とインフレの可能性 金価格、資源・コモディティ、物価、住宅の長期価格予想 §3政府・日銀は異次元緩和によって期待インフレ率を高めること ができるのか (1)期待インフレ率を2〜3%に高めることができるか (2)マネー・ストックの増加とインフレ率の関係 (3)期待インフレ率を混乱させる、円安の要因 (4)期待インフレ率が高まらない可能性 (5)期待インフレ率はどうなるのか? §3 経済学が漏らしているオフショア金融(2500〜3000兆円)とデ リバティブ(純額=2500兆円) (1)21世紀に巨大化したオフショア金融とデリバティブ 世界のマネー・ストックは5491兆円 脱漏:オフショア金融2500兆円、デリバティブ2500兆円 (2)日銀が依拠している、古典的なMV=PTは、21世紀では通用し ない (3)日銀の異次元緩和マネーの行き先 (4)01年から06年の量的緩和は何を生んだか? (5)設備投資が増えるジュグラー・サイクルの可能性 (6)2014年から2015年までの物価、株価、地価 §4 2015年末のソブリンリスク(国債リスク)の可能性 (1)名目金利が上昇し、国債リスクが起こる可能性 (2)日銀は、マネー量を減らして金利を上げる出口政策がとれる のか (3)名目金利が上昇したときの、日銀の予想さえる対応 (4)2015年:インフレと名目金利、出口政策へ (5)2015年から2016年に想定できる可能性 (6)異次元緩和のディレンマに陥らせてはならないが・・・ 【後記】 明日の早朝から、冬の「パリ〜リヨン」です。紀行を送ります。パ リは2年ぶりだったか。
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