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年収500万円の家計簿
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140127-00011793-president-bus_all
プレジデント 1月27日(月)11時45分配信
私は、資本主義の限界が迫っていると考えています。その原因は実体経済とマネー経済の乖離にあります。
世界の金融資産の規模は、1980年には12兆ドルと世界のGDP合計額とほぼ同じでした。ところが「リーマンショック」の前年の2007年には、世界のGDP合計額の約3.8倍の180兆ドルにまで膨らんでいました。
リーマンショックを経て、実体経済とマネー経済の差はいったん縮小に向かいましたが、ここにきて、再び乖離が広がりつつあります。米国はこれまで3度にわたり大規模な量的金融緩和(QE1、QE2、QE3)を行っています。欧州も11年12月と12年2月の2回に分けて合計で108兆円の実質的な金融緩和を行いました。11年下期からは、新興国でも金融緩和の動きが広がり、市場には過剰資金が溢れています。こうした動きは、リーマンショックに匹敵するほどの大激震の前触れだと考えられます。
正確な未来予測は困難ですが、これまでのような経済成長を前提にした投資行動は、もう合理的ではありません。長期投資や国際分散投資ならば、必ずリターンが得られる、という主張を信じるべきではないでしょう。
それではどうすればいいか。私はセミナーなどで「お金に縛られるのをやめましょう」と話しています。
どんなにお金があっても、安心は買えません。500万円の世帯年収のある人は、たとえ600万円でも1000万円でも、将来が不安なはずです。なぜなら人間の欲望は、どこまでいっても尽きることがないからです。
だから具体的に考えないかぎり、老後資金はいくらあっても足りません。「老後のために1億円貯めたい」という相談を持ちかけられることもありますが、私は「なぜ1億円が必要なのですか」と問い返します。
「老後は悠々自適に過ごしたい」という人も少なくありません。しかしこの考えはきわめて曖昧です。具体的なプランがなければ、暇を持てあますだけで、ちっとも幸せではないはずです。
リタイア後の生活を具体的に描き、そのためにいくら必要なのかを考えなくてはいけません。もし具体的なイメージを持つことが難しいのであれば、私は「生涯現役」を前提にするのがいいと思います。
公的年金制度は、このままでは必ず破綻します。年金支給開始年齢は段階的に引き上げられ、定年年齢の延長もあわせて行われるはずです。「高年齢者雇用安定法」の改正で、13年4月からは定年年齢が原則として65歳となりましたが、これは年金支給開始年齢の引き上げと軌を一にしています。日本社会も「生涯現役」の仕組みに、変わっていこうとしているのです。
働き続けることを前提にすれば、多額の老後資金は必要ありません。とりあえずは300万円程度で十分。もちろん貯金はあればあるほどいい。しかしそれは「いざというときの備え」です。間違っても「お金に働いてもらう」といった考え方はやめましょう。
今のところ、確実に高利回りを得られる金融商品はありません。投資には必ずリスクがある。たとえば1000万円の自己資金がある人であれば、700万円は定期預金など元本保証型の商品として、リスクのある金融商品は300万円に抑えたほうがいいでしょう。その場合、国内の優良企業の社債がいいと思います。トヨタ自動車や三菱東京UFJ銀行といった国内経済の中核を担う企業の社債であれば、比較的リスクは小さいと思います。
■住宅購入の目安は「世帯年収の3倍」
将来への不安から住宅の購入を考える人がいますが、あまりおすすめはできません。私自身はマイホームに住んでいますが、経済的な面では賃貸のほうが有利だと思います。これから日本の人口は減少していきます。それは住宅需要の減少と同義です。住宅価格は目減りしますから、ローンが払いきれず住宅を売却したときには、最悪の場合、ローンだけが残ることもありうるでしょう。「家を買うことで本当に幸せになるのか」を熟慮すべきです。
それでも購入を考える場合には、ローンは世帯年収の3倍程度に抑えましょう。一般に世帯年収の5〜6倍程度まで借りられますが、長い目で見ると金利の上昇も見込まれ、借金は抑えたほうが無難です。
子どもがいる場合には、住宅選びと学校選びが密接に関わりますが、より良い環境を真剣に探せば、教育費が安くて、安心な学校は見つかると思います。都会の私立に通わせることだけが、子どもの教育にとって唯一の選択肢ではないことを考えてみてください。
私自身は茨城県つくば市に住んでいます。市の中心部は筑波大学を中心とする「研究学園都市」で、研究者が多く居住しており、公立の中学校や高校でも、私立と遜色のない高いレベルの教育が行われています。教育費が抑えられるだけではなく、家賃や物価も都会に比べて割安です。
多額の貯蓄があっても、切り詰めた生活を続けていけば、家庭は荒むでしょう。月々の生活費を削ってまで、高額の生命保険に加入するのは本末転倒です。まずは資産形成の目的を考えることが重要でしょう。
そうした点が曖昧ならば、積極的に「自分への投資」を心がけてほしいと思います。不確実な世界経済に投資するより、確実な成長が見込める自分自身に投資するほうが、堅実ではないでしょうか。無駄な支出は抑える一方で、本を読んだり、英語を学んだり、余暇を楽しんだりする。お金に縛られるのではなく、お金を使っていく。そのほうが、より充実した人生を過ごせるのではないかと思います。
■年収500万円の家計簿診断
・夫 44歳 中堅商社 年収420万円
・妻 42歳 パート勤務 年収100万円
・長女 中1/次女 小5
・貯蓄額 30万円
※4年前に2700万円で新築マンションを購入。クルマはない。
●中原氏からのアドバイス
節約ばかりを考える生活は正しいとは限らない。ただ、毎月の赤字をボーナスで補填する家計は問題がある。まずは非常時のための貯蓄(200万〜300万円程度)を目指そう。その後の貯蓄額については、目標を先に決めると、お金に縛られる生活を余儀なくされる。目標額は「将来どんな暮らしがしたいか」によって変わることを強調したい。
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エコノミスト、経営コンサルタント 中原圭介
1970年生まれ。外資系金融機関、税務の仕事を経て、独立。『お金の神様』『日本経済大消失 生き残りと復活の新戦略』など著書多数。
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エコノミスト、経営コンサルタント 中原圭介 構成=プレジデント編集部 撮影=石橋素幸
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