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アベノミクスの隠れた阻害要因「規制」、問われる緩和への議論〜建設、医療、介護…
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140126-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 1月26日(日)8時15分配信
東京都中央区の月島、晴海、江東区豊洲は高層マンションの建設ラッシュによって子供の人口が増え、一部の小学校では校舎増設も行われている。さらに、例えば晴海は2020年に開催が決定した東京五輪の選手村建設予定地でもあり、隣接する月島や豊洲含め建設業界のドル箱市場になりつつある。
しかし、水面下では新たな問題が発生している。豊洲に移転する築地市場の工事業者が決まらないのだ。昨年11月に入札が不調に終わったため、東京都は工事費用を400億円増額した上に、参加資格要件を緩和して14年2月に再度入札を行なうことを公告した。ゼネコン関係者によると、事の発端はゼネコンの入札不参加表明であるという。
「この規模の工事になるとゼネコンがジョイントベンチャーを組んで、工区ごとに業者が入札で決まるのだが、どの領域も大手でないと対応できない。築地市場の場合、工区が5つあるのだが、ゼネコンが決まったのは管理施設棟だけで、他の4区は決まっていない」
巨大市場の建設という大規模な工事ともなれば、ゼネコン各社は積極的に受注に向けて動いてもおかしくはないと思われるが、なぜそのような事態が起こっているのか。同関係者はその背景についてこう続ける。
「東北に東日本大震災関連の復興工事が目白押しな上に、海外でも稼げる案件が増えてきている。そのような今、もともと収益性が低いのに、有資格者の配置人数や業務手順などの細かい規制が多すぎる公共事業を、ゼネコン各社は受けたくないというスタンスになっている」
同じ公共工事でも、補修工事では「前施工」の原則から、以前に施行したゼネコンが予算や業務手順などの決定において自社の意向を通しやすいが、新規工事は規制にがんじがらめになってしまうのだ。この関係者はさらに続ける。
「行政は公共工事予算に応じて、ゼネコンを特Aランク、Aランク、Bランク、Cランクと認定しているため、特Aランクに辞退されたら、Aランク以下の業者に発注できる水準に工事規模を縮小するしかない。築地市場だけでなく、東京五輪関連の国立競技場や選手村などの目玉工事も、特Aランク業者にとっては、規制に縛られて儲けが薄い仕事だから、当初計画から相当な規模縮小になる公算が大きいのではないだろうか」
政府が組んだ補正予算も、工事が計画通りに着工できなければ予算の執行不能という一大事に至ってしまう。光明が差してきたアベノミクスに対して、一部では規制が足を引っぱっているのだ。
●医療機関経営の支援に向けて
こうした規制が経済・業界の足を引っ張る現象は、安倍晋三政権の成長戦略の目玉となっている医療・介護分野でもより顕著に見られる。
例えば医療分野を見てみよう。昨年12月に閣議決定された14年度予算案において、診療報酬改定率は実質1.26%マイナスで6年ぶりのマイナス改定となった。2年に1度改定される診療報酬は、増え続ける社会保障費や消費税増税による国民負担を抑制するためにマイナス改定を余儀なくされたのだが、ある民間病院幹部は実情をこう説明する。
「小泉純一郎政権下で診療報酬が引き下げられ、民間中小病院の経営はガタガタになり倒産が相次いだ。民主党政権で診療報酬が引き上げられて一服感があったが、また元の木阿弥に戻った感じだ。今後ますます経営が厳しくなるので、混合診療を解禁して、富裕層から高額な医療費をもらえるようにしないと中小病院の経営がもたなくなるだろう」
別の民間病院幹部は、株式会社の医療機関経営参入の解禁を提言する。
「厚生労働省と日本医師会は猛反対するに決まっているが、医療を成長産業に発展させるには株式会社の経営資源や経営力が不可欠だ。医療が医師会の既得権益業界であり続ける限り、成長戦略の対象にはなりえない。成長産業に発展させることで、勝ち組と負け組の二極分化など新たな問題も発生するだろうが、キャッシュフローの創出によって医療機関の経営環境は総体的に好転するはずだ。それは患者にもプラスである」
これまた厚労省と日本医師会が反対しているが、医療ツーリズム推進による海外富裕層患者の取り込みも、医療を成長産業に発展させるステップだ。混合診療の解禁、株式会社の参入と合わせて、厚労省と医師会が反対の論拠とする“国民皆保険制度の堅持”との両立を担保すればよい。現在、国公立病院は総務省、大学病院は文部科学省と所管が分かれているため、官邸主導で総合的な規制緩和が推進されることが望ましい。医療機関の経営支援を考えれば、この取り組みは喫緊の課題といえるだろう。
●規制根強い介護分野
また、医療と並ぶ成長戦略の注目業種である介護業界を見てみると、大手民間資本の参入が続いて、さすがに「介護事業はビジネスとして成立しない」などの認識も少数派になった。
だが、政府側には、民間企業による市場獲得は好ましからざる現象との見方が多いのも事実である。
その一例が、国が推進する15〜18年の「市区町村介護保険事業計画」で、月間利用者数300人以下の小規模デイサービス開設に対する規制措置だ。この期間に小規模デイの開設を計画していない市区町村には、小規模デイの開設申請ができなくなる。
その理由は、表向きは厚労省が普及を急ぐ小規模多機能型居宅介護(通所介護・訪問介護・泊まりの複合施設)とのバランス調整といわれているが、全国で4万カ所に迫る勢いで増えている小規模デイに対して、小規模多機能はわずか4000カ所に満たないのが現状だ。
小規模デイへの規制には別の狙いもあると、介護業界関係者は語る。
「小規模デイがこれだけ増えたのは、フランチャイズ展開でこの業態を引っぱってきたある介護事業会社の存在が大きい。規制の目的は同社を袋小路に追い込むことにある。同社がお泊りサービスを提供したことが他の小規模デイにも広く波及しているが、お泊りは小規模多機能型居宅介護やショートステイ(短期入所)のサービス機能で、小規模デイはやるべきではないという反発が介護業界には根強い。利用者や家族が望むのなら、本来どこがやってもよいのだが、それでは厚労省のシナリオが進まない。だったら、こうした業界の声を後ろ盾に規制をかければよいと考えたのだ」
ちなみに、なぜ介護業界に小規模デイの多店舗展開に抵抗があるのかというと、「業界の主流をなすのは民間企業でなく、これまで国の規制で強固に守られてきた社会福祉法人であるため、“国側”であるこれら法人の反発が強い」(同関係者)という背景があるためだとう。
厚労省は、団塊世代が75歳以上になる25年を目標に、医療・介護・生活支援を一体的に提供する地域包括ケアシステムを全国の市区町村に構築する方針だが、現在ですら医師・看護・介護を担う人材が大幅に不足して、一部では「職場のブラック化」が問題化しているにもかかわらず、相変わらず政府側が規制を広めようとしている限り、地域包括ケアシステムなど絵空事に終わりかねない。同関係者も、「規制を緩和して、介護業界全体が“民間スタンダード”に切り替える必要がある。医療に比べれば縛りの弱い業種なので、まず外資を呼び込むなどして新陳代謝を図りイノベーションを誘発することが急務だろう」と提言する。
アベノミクスによる株価上昇で勢いに乗る安倍政権は、今年6月までに新成長戦略を取りまとめるとしているが、持続的な経済成長にむけて“聖域なき”規制緩和の議論が求められている。
編集部
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