http://www.asyura2.com/14/hasan85/msg/300.html
Tweet |
アベノミクスによる日本経済振興は難しい
2014年01月24日08:41
日本の安倍晋三首相がうち出した経済政策「アベノミクス」は、スタートから1年余りが経ち、国内・海外から疑問の声が上がるようになった。アベノミクスが日本の長らく苦しんできたデフレを治療する場合の処方箋は、日本銀行(中央銀行)を通じて大量の通貨を市場に投入し、円レートを引き下げ、インフレ観測を高めるというものだ。だが実施に当たってはさまざまなリスクに直面し、スーパーインフレや円の崩壊を招く可能性もある。また、安倍首相にはもともと日本にはびこるデフレ局面を転換させるだけの力はない、という見方もある。専門家の中には、アベノミクスは日本経済を崖っぷちへ追いやり、退路を断ってしまったという人もいる。人民日報が伝えた。
▽国内の設備投資は成長の力が不足 円安のマイナス影響が徐々に顕在化
アベノミクスが実施されてから、日本経済は4四半期連続でプラス成長を遂げたが、元々の欠陥によりこの政策の持続性は非常に危ういものとなっている。現在、日本経済の復興は主に株価指数などの金融市場に体現されており、利益を受けるのは主に海外の投資家だ。実体経済は、特に膨大な中小企業は、経済復興の「温かさ」を感じておらず、実体経済の活力を体現する国内の設備投資も成長の力が不足している。日本の内閣府の推計によると、2013年度の国内製造業企業の設備投資額は国際金融危機が発生する前の07年の水準のわずか40%にとどまる。中小企業が集まる東京・大田区で取材したところ、精密機械部品の加工会社の社長から、アベノミクスは輸出を手がける大企業にだけ有利だという声を聞いた。
現在、円安のマイナス影響が徐々に顕在化している。日本企業の海外投資や海外生産の割合が高まり、円安による輸出促進作用がますます小さくなっている。円安による燃料価格の高騰は、日本の貿易赤字の主要因だ。日本は33カ月連続で貿易赤字に陥り、赤字規模が拡大を続けている。これと同時に、食品価格やエネルギー価格の上昇が一般市民の実際の購買力を低下させている。
消費税率引き上げ後の内需の落ち込みを補うため、日本政府はこのほど5兆5千億円(1ドルは約104.3円)の経済対策を発表した。これは思わしくない財政状況を改善するために消費税率を引き上げるとした日本の狙いとは逆の方向にいくものであることは間違いない。昨年上半期、日本の国債残高は初めて1千兆円を突破し、国債の国内総生産(GDP)に対する割合は240%を超え、債務危機発生前のギリシャに次ぐ水準となった。米国の外交問題評議会(CFR)のサイトに発表された論評によると、日本のこれほど膨大な債務は金利上昇などの「わずかな異変」にも持ちこたえられないという。
▽成長戦略が遅すぎる 賃金上昇による内需促進には不確定性も
日本の早稲田大学の谷内満教授によると、日本経済には復興の兆しがみられるが、経済周期自身の流れがこのようにさせるだけであり、安倍首相の功績ではない。安倍首相が就任する前の12年11月に、日本の鉱業生産、経済成長ペースといった主要経済指標は、すでに底を打って上昇傾向に転じていた。
日本の経済界では、日本が持続的な経済復興を実現するためのカギは産業のバージョンアップにある、との見方が一般的だ。アベノミクスの成長戦略では、医療や農業など重点突破を目指す多くの分野を確定したが、進展が遅すぎるという批判が出ている。SMBC日興証券の肖敏捷・経済アナリストによると、政府の成長戦略は中味が細かすぎ、取り組みがちまちましており、発表されると市場に失望が広がったという。
安倍首相はこのほど行われた自民党大会で、所得引き上げによる内需拡大を呼びかけた。日本の大手企業各社は賃金アップの必要性は承知しているが、これからの経営には不確定性があり、賃金を引き上げたとしても、引き上げ幅はそれほど大きくならないとみられる。ゴールドマン・サックスのエコノミストがこのほど発表した報告によると、安倍政権はこれまでずっと大企業に対し、利益の伸びの一部を賃金引き上げに充てるよう呼びかけてきたが、日本の雇用の70%は中小企業が占めており、中小企業は大企業ほどアベノミクスの恩恵を受けていない。円安で中小企業のコストが上昇しており、こうした情況の中で中小企業に賃金引き上げを求めるのはあまりにも酷というものだ。
▽構造的問題の解決を助けない 日本経済に起伏の可能性
米CNNの分析によると、アベノミクスの3本の柱のうち、金融緩和と財政出動という2本の柱は一定の成果を上げたが、残るもう1本の重要な柱である成長戦略(構造改革)は何の影響も及ぼしていない。早稲田大学ファイナンス総合研究所の野口悠紀雄顧問は、アベノミクスは日本人に一種の幻影を見させ、実質的な改革を進める日本の動力をそいでしまったという。
まだ財政・金融政策を実施することで、日本政府は非常に重要な構造改革を引き延ばしする口実を与えられた。たとえば監督管理を緩めて国際競争を開放するといった改革だ。国際通貨基金(IMF)は昨年10月、安倍政権に警告を発し、「構造改革を行わなければデフレを再現させることになり、政府の債務負担がさらに重くなる」と注意を促した。
ベルギーの有名なシンクタンク・ブリューゲルのウルフ・シニア研究員によると、安倍政権がうち出した超金融緩和政策にはたくさんの問題が潜んでおり、日本銀行の負債比率を持続的に上昇させている。たとえば長期金利が大幅な上昇を続け、日銀が資本不足に陥る可能性がある。安倍政権は流動性を大規模に増やすことによって、デフレ解消の目的を短期的には実現できる可能性があるが、構造的な問題の真の解決には少しも助けにならない。安倍政権は、日本はすでに過度に行われている投資をさらに拡大するべきだと当然のように言うが、これは間違いであることははっきりしているという。
米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」の社説によると、今後数カ月間がアベノミクスにとって重大な試練の時期であり、日本経済は起伏する可能性がある。ある日本メディアが行った調査によると、アベノミクスが最終的に日本経済の復興を成し遂げると信じる人は、回答者の40%にも満たなかったという。
▽寸評
陳鳳英(中国現代国債関係研究院世界経済研究所所長)は次のように話す。
アベノミクスが実施されてからすでに一年余りが経ち、国際社会は疑いをもち始めている。過去1年の間に、アベノミクスの2本の矢、すなわち大胆な金融政策と機動的な財政政策は短期的には効果を上げたようにみえる。円安が日本企業の利益を増加させ、日経平均株価は相次いで記録を更新し、株投資家の収益は倍増し、こうしたことが国民の消費を喚起し、日本経済の起死回生につながり、しばらくの間みせかけの「繁栄」が出現した。だが円安の根本的な原因はアベノミクスではなく、本当にコントロール権を握っているのは米国だ。米国経済が好転すれば、「王者」の米ドルが復活し、円安を許容するようになる。
実際、アベノミクスは危険な行為であり、日本の政治家にとっては背水の陣であり、政治的に必要なことでもある。経済活性化の効果が薄れれば、特に消費税率が引き上げられれば、日本経済は再び低迷に陥り、債務危機が前倒しで発生する可能性がある。原因は何だろうか。第一に、日銀は米国に似た量的緩和政策を採用しながら、米連邦準備制度理事会(FRB)のような独自の優位点を備えておらず、乱発した円を海外に移転させ、他国に流動性のリスクを引き受けさせるような芸当はできない。第二に、日本の債務は米国よりも深刻で、自国で引き受ける必要があるが、米国の債務は購買者の3分の1が海外にいる。第三に、日本は人口高齢化が深刻で、産業が空洞化しており、さらに資源不足も深刻で、米国のように「エネルギーの独立」によって「再工業化」を実現することは不可能だ。(編集KS)
「人民網日本語版」2014年1月23日
http://j.people.com.cn/94476/8520976.html
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。