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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第60回 先進国の火種
http://wjn.jp/article/detail/9343502/
週刊実話 2014年1月30日 特大号
2014年は、日本を含む先進国が、自国に「埋め込まれた」火種が火を噴くことを「いかに回避するか」に苦心する一年になるだろう。日本に埋め込まれた火種とは、もちろん'14年4月の消費税増税だ。
'97年、橋本龍太郎政権は大蔵省(現、財務省)の官僚の「言いなり」になり、消費税増税を断行した(※消費税増税は村山政権期に内定していた)。
結果的に、我が国は本格的なデフレに突っ込み、名目GDPはマイナス成長に陥り、税収が減少するという最悪の結末をもたらしてしまう。
故人となられた橋本元首相は、'97年の消費税増税について、2001年の自民党総裁選挙時に以下の通り語っている。
「振り返ると私が内閣総理大臣の職にありましたとき、財政の健全化を急ぐあまりに、財政再建のタイミングを早まったことが原因となって経済低迷をもたらしたことは、心からお詫びをいたします。そして、このしばらくの期間に、私の仲のよかった友人の中にも、自分の経営していた企業が倒れ、姿を見せてくれなくなった友人も出ました。予期しないリストラにあい、職を失った友人もあります。こうしたことを考えるとき、もっと多くの方々がそういう苦しみをしておられる。本当に心の中に痛みを感じます」(2001年4月13日)
安倍総理は将来、'14年4月の消費税増税について、どのように振り返るのだろうか、という非肉は置いておいて、消費税増税(厳密には「現時点の消費税増税」)が日本の国民経済に悪影響を与えることは、安倍政権も理解している。
だからこそ、安倍政権は昨年12月に総額5.5兆円の経済対策を盛り込んだ補正予算を閣議決定したのだが、果たして金額的に十分だろうか。
我が国のGDPにおける個人消費(民間最終消費支出)は300兆円弱だ。消費税を3%上げると、7兆円から8兆円の負のインパクトを与える。5.5兆円の経済対策のみで、安倍政権は増税のダメージを「回避」することが可能なのか。増税の衝撃を消し飛ばすためには、より多額の補正予算が必要に思える。
さて、アメリカであるが、今年から本格的に始まったオバマケアの評判が悪く(システムトラブルが多発した)、さらに2月7日にはまたもや「連邦政府債務上限引き上げ問題」に直面することになる。
昨年10月にアメリカ政府の一部を「閉鎖」状態に追い込んだ債務上限問題だが、民主党と共和党は今年2月までの引き上げで合意したに過ぎない。
特に、オバマケアはオバマ政権の「目玉政策」であった。
日本国民の多くはオバマケアについて「アメリカが国民皆保険制度を導入した」と勘違いしているが、現実は異なる。オバマケアは、実際には政府がオンラインの医療保険取引所で「民間の医療保険サービス」を国民に売る、という話なのである。
政府は無保険者が医療保険取引所で保険を買った際に、税控除という形で費用を一部負担する(但し、税控除を受けることができるのは、収入が連邦政府の定める「貧困レベル」と、その4倍の収入以下の人々のみだ)。
オバマケアは、開始直後のシステムトラブルに加え、オバマ大統領の「公約違反」が判明してしまい、国民の評判は散々だ。
オバマ大統領はオバマケア関連法案の成立前から、繰り返し、
「加入中の医療保険が好みならば継続できる」
と、説明してきたにもかかわらず、加入者が保険会社から、保険内容の見直しのタイミングで、大幅な値上げを伴う再契約通知を受ける事態が頻発しているのだ。
医療保険会社は旧来の契約内容を見直す際に、オバマケア成立後の新基準を適用する(旧基準の適用は違法になる)。
結果的に、多くのケースで保険料が上がってしまうことが明らかになったのである。
およそ、1200万の人々が「医療保険サービス費用の値上げ」に直面し、企業側の負担も増えることになる。
オバマケアは2014年から完全実施され、アメリカ国民の保険加入率は現在の83%から、94%に上昇すると考えられている。とはいえ、オバマケアで保険料が上昇し、損失を被る国民や企業が出てきてしまうわけだ。
目玉政策が「大コケ」し、連邦政府の債務上限引上げ問題で再び政界が混乱するとなると、オバマ政権のレームダック(役立たずの政治家を指す政治用語)化がさらに進行することになるだろう(しかも、アメリカは今年の秋に中間選挙を控えている)。
もっとも、日本やアメリカが抱えている「火種」は、ユーロ圏に比べればまだまだ軽いと言える。
何しろ、ユーロ圏はギリシャなどの一部の国が完全に「デフレ化」してしまっている。
ユーロスタットの最新データによると、'13年11月のギリシャのインフレ率(対前年同月比)は、何とマイナス2.9%だ。ギリシャ以外にも、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、アイルランドなどのインフレ率が1%を下回っており、マイナスに突入するのも時間の問題だろう。
経済がデフレ化している以上、ユーロ加盟国には金融政策と財政政策の拡大が求められている。すなわち、アベノミクス「第一の矢」「第二の矢」ばりに、政府が「通貨を発行し、借りて、雇用が生じるように使う」必要があるのだ。
ところが、ユーロ圏は「構造的」に、金融政策や財政政策の拡大が不可能である。厳密には「各国の勝手には不可能」なのであるが、ユーロ経済の盟主であるドイツは、物価上昇をもたらす金融政策や財政政策の拡大に真っ向から反対している。
ドイツ連邦銀行のバイトマン総裁は、昨年末にわざわざ、
「低金利は政治改革をリスクにさらす可能性がある。低インフレを緩和的な金融政策を正当化する口実に使うべきではない」
と発言し、最低限必要な金融政策の拡大すら明確に否定した。
金融政策、財政政策という手段を封じられた以上、ユーロ圏(ドイツを除く)のデフレ化は食い止めることができないだろう。
個人的には、デフレ化と失業率のさらなる上昇に耐えかねたギリシャが、今年中に「将来的なユーロ離脱」を検討し始めるのではないかと推測している。
三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
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