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2年目に入る2%物価目標、脱円安依存へ成長戦略を
編集委員 清水功哉
2014/1/22 17:23
日銀が昨年1月22日に2%の物価上昇率目標を導入してからちょうど1年。22日の金融政策決定会合後の記者会見で、黒田東彦総裁は「目標達成への道筋を順調にたどっている」と強調。2014年度の終わりごろから15年度にかけて実現する可能性が高いとした。1年前にマイナスだった消費者物価変動率(生鮮食品を除く、前年同月比)が昨年11月にプラス1.2%を記録。同氏主導の量的・質的緩和政策が物価押し上げ効果を発揮しているのは事実だ。ただその経路として大きな役割を果たしてきたのは円安。この円安依存に対する経済界、市場、米国といった各方面からの異論も無視できなくなってきた。
白川方明前総裁時代に導入された2%目標について、昨年3月に就いた黒田総裁は2つの工夫を施して物価押し上げ効果を強めた。
■物価押し上げへ実質金利引き下げ
第1に2%を「2年程度で実現する」決意を表明し、人々のインフレ期待を強めようとした。第2に、2%が安定的に持続するまで大量国債購入を柱とする量的・質的緩和政策を続けると約束し、長期金利の上昇圧力を抑えようとした。この両者で実質金利(名目金利から予想インフレ率を差し引いた数値)を下げ、円安を促したり、需要を刺激したりして、物価に加わる上げ圧力を強めようとしたのだ。
前述の通りその効果は出ており、日銀は22日公表の展望リポート中間評価で15年度の物価上昇率(消費増税の影響除く)が1.9%に達するとの見通しを改めて示した。だが、足元までの物価上昇については、「主な原動力は円安」(河野龍太郎BNPパリバ証券チーフエコノミスト)との見方が多い。黒田氏の総裁就任以降、円相場は対ドルで約9%下落。足元で1ドル=104円台で推移しており、輸入価格アップが様々な形で国内物価に波及してきた。
物価上昇に対して、消費、投資など需要の増加が貢献する度合いも徐々に拡大している。円安に直接左右されにくい「食品・エネルギーを除いた消費者物価」の伸びも0.6%(昨年11月)になっていることがその証拠だ。とはいえ、この数値は前出の「生鮮食品を除いたベース」の半分。円安の影響力はやはり小さくない。問題は、ここから先さらに円安に頼り続けることへの疑問の声が内外で出ていることだ。
まず経済界。「円安になればなるほど日本にとっていいかというと疑問。今の段階で考えると100円レベルがいいのではないか」。日本商工会議所の三村明夫会頭は昨年12月の記者会見で、こう語った。原子力発電所が動きを止めたことでエネルギー輸入が増えており、円安による輸入コスト上昇は国民生活に悪影響を及ぼしかねない点が念頭にあったと見られる。
■「円安になったら株価が上がるのはおかしい」
同氏は今年1月上旬には「円安になったら株価が上がるのはおかしい」とも述べたと報じられた。「円安=株高」という図式が浸透してきた株式市場でも、円安効果への異論が出始めたという指摘がある。例えば20日に日経電子版で公開された「株、厳しさ増す『円安効果』への視線 任天堂の大幅安きっかけに」という記事。任天堂はこのほど、14年3月期の連結業績予想を大幅に下方修正し赤字とした。昨年の急速な円安で最悪でも黒字は確保できるとみていた市場関係者も多かったが、それが裏切られたことで、円安は必ずしも輸出関連企業の業績改善につながるわけではないという慎重な見方が広がったという。
この記事を、ツイッター(@IsayaShimizu)で紹介したところ、リツイートやお気に入り登録がかなりの数に達した。人々の実感と合う内容だった証左だろう。
もちろん、円安の株価押し上げ効果がなくなったわけでは決してない。ただ円安がかつてほど輸出を増やさなくなっているのは事実。日銀算出の実質輸出指数(輸出数量を示す)を見ると、量的・質的緩和が始まった昨年4月から11月にかけての上昇率が1%にも達していない。アジア新興国経済の勢いが鈍っているうえに、多くの製造業は、円高対応のために増やした海外現地生産を今さらもとに戻す気はないからだ。
「円安けん制発言」をしたルー米財務長官=ロイター
異論は海の向こうからも出ている。ルー米財務長官は16日、「日本は為替レートの利点だけに依存した戦略で長期成長を目指すべきではない」と言明した。
以上のような状況をみると、昨年と同じ「円安依存型のデフレ脱却路線」を続けるのは難しそうだ。コストアップ型の物価上昇は生活者の支持も得にくい。消費増税があれば、なおさらである。投資、消費などの需要拡大を通じた「良い物価上昇」をもっと広げるべきだろう。賃金上昇にもそれが必要だ。どうすればいいか。
■政府・国会や民間も2%目標共有を
金融緩和継続による実質金利低下は引き続き重要だ。ただ、金融緩和だけに頼れば円安圧力を必要以上に加えかねない。需要喚起に向けた政府・国会や民間の成長戦略実行が欠かせない。2%目標は日銀だけでなく政府・国会、民間も共有すべきものだ。
政府・国会が規制を緩めたり税制を改革したりして、企業がビジネスをしやすい環境を整えれば、投資を増やす効果を持つ。中長期的な財政健全化に取り組めば、長期金利の上昇を抑え、実質金利低下に向けた日銀の政策を側面から支援できる。民間企業が自ら新規需要開拓に努めることも極めて重要だ。成熟度が比較的高いコンビニという市場で、入れたてコーヒーなどヒット作を生み続けるセブン−イレブンなどモデルはある。
安倍晋三首相も21日、「アベノミクス3本目の矢(成長戦略)の加速」が重要だと強調した。政府が6月にまとめる新たな成長戦略などが実効性あるものになることを、強く期待したい。
http://www.nikkei.com/markets/kawase/kawase-focus.aspx?g=DGXNMSFK2200G_22012014000000
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