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昨年の大納会で東証を訪れた安倍首相。必要とされているのは経済の話だ(撮影:梅谷 秀司)
ブラックマンデーがあった1987年と似てきた?正念場を迎えた、アベノミクス
http://toyokeizai.net/articles/-/28760
2014年01月22日 草食投資隊 :渋澤健、中野晴啓、藤野英人 東洋経済
■日経平均は弱くても、中小型は強い日本市場
中野 今年はいきなり大発会で下げましたね〜。その後も不安定な動きですね。
藤野 もともと日経平均株価って、ファーストリテイリングなどの値がさ株の値動きに左右される傾向が強いのですが、昨年末にかけてはまさに値がさ株の上昇で日経平均株価は大きく押し上げられました。その反動で年初の大発会は一時400円超下げた。でも、JASDAQ平均や東証マザーズ指数などは総じて堅調で、中小型株も強い動きが続いています。
中野 でも、ちょっときな臭い雰囲気がありませんか?為替市場がいきなり円高で始まったじゃないですか。ドル/円だと年末1ドル=105円40銭前後だったのが、年始は円高傾向です。何が、この円高を招いているのか。その理由を考えると、何やらきな臭い感じがして、僕は嫌なんですよ。
藤野 靖国参拝ですか。
中野 そう。
藤野 昨年末にかけて円安が進んだじゃないですか。円安は米国、欧州、中国の経済にとってネガティブ要因だったのに、いずれも何も言わなかった。それは、安倍首相というリーダーが出てきて、外交もしっかりこなし、かつ日本経済をアベノミクスで立て直すという強いメッセージを発信していたからだと思うんですよ。欧州経済はまだまだ厳しい。中国も成長率が鈍化している。ここは日本経済に是非とも立ち直ってもらう必要がある。そういう暗黙のコンセンサスがあったから、米欧中は円安に対して何も言わずにいたのです。ところが、安倍首相は靖国参拝を行った。
中野 ドイツのメルケル首相も円安には相当、頭に来ているみたいですし、これを機に「調子に乗るな!日本」というムードが広まると、円高が進む恐れがあります。
■安倍首相から、成長戦略論を聞きたかった
藤野 さっきも言ったけど、大発会で大型株が売られる一方、小型内需株は比較的しっかりしていたというのも、実はマーケットが円高トレンドを織り込みに行っているとも考えられます。靖国参拝に対する海外各国の反応って、どうですか。
渋澤 昨年の12月26日という、自民党の政権交代の1年が経った「記念日」に焦点を当ててほしかったのは、やっぱり経済ですね。本当なら、「さらに経済成長させるべく、これから確実に成長戦略を実施します」といった言葉を安倍さんの口から聞きたかったです。
靖国参拝は複雑な問題ですし、「よくやってくれた」という国民感情が少なくないのは理解できます。一般論として、母国のためにと信じて命を犠牲にしてくれた人々に、国の指導者が敬意を示すということは、どの国でも当たり前のことでなければならないはずです。
しかし、中国や韓国との関係で言うと、安倍政権が誕生した時、彼らは「日本は右傾化した」という認識が強かった。ある日韓会議では、僕は、「そうじゃない。今までの日本は左向きのスタンスでスライスボールを打って、かろうじてフェアウエイに乗せていた。これからは真ん中のスタンスで真っ直ぐ打とうということだけなのではないか。右スタンスでOBを打ちたいとは、誰も思っていない」と発言しました。
でも、これでは、次回の会議で「ほらね、やっぱり右傾スタンスだったでしょ」と反論されるかもしれませんね。北朝鮮が不安定な情勢で、たとえば韓国政府も、そろそろ日本政府と関係の修復と思っていたタイミングだけに。
安倍首相は、東南アジア、東ヨーロッパ、中東やアフリカを訪問するなど、歴代の総理大臣と比べると外交フットワークが軽く、かなり良い仕事をしてきたと思っています。米国や欧州も問題視しており、もし、この件で各国とも日本との外交関係を抑え気味にするということになれば、日本の国益にも支障を来す恐れがあります。
藤野 いろいろ話を聞くと、自民党の一部では、安倍首相が靖国に参拝することに対して反対していたということですね。中国や韓国との関係改善についても、水面下では、さまざまな努力が行われていたらしいのですが、それも台無しになった。恐らく安倍さん自身も、靖国参拝をして国際的に波風が立つのは、経済的に損であるとわかっていたようなんです。ただ、安倍さんの価値観として、経済的な損得以上に、日本人としての「美醜」に関係してくる問題なのでしょうね、靖国参拝は。人間というものは、美醜、損得、正義・不正義、快・不快によって行動するかどうかを決めるものですが、安倍首相の場合は、とにかく損得よりも美醜が勝ったということだと思います。
■アベノミクスは正念場に
渋澤 いろいろなことを考えると、今年は、やはりアベノミクスの正念場と考えるべきだと思います。昨年は、ハネムーンピリオドのように大勢の人がアベノミクスを歓迎してくれました。一本目の矢の金融政策は明らかなサプライズ効果があったけど、今年の場合は、やる事が当たり前になっているので、ポジティブなサプライズにはなりにくいですね。今年はいよいよ、具体的な成長戦略を見せていかなければならない1年です。だからこそ、なお一層のこと経済に取り組んでいかなければならないのになぁ〜。
藤野 ちょっと危険だなと思うのは、言語解釈の問題。一部の政治家が、「米国はdisapointedと言っているけれども、これはちょっと気になるという程度のことで、大したことではない」と言っていましたよね。でも、決してそんなことはないでしょう。
渋澤 そうそう。だって、disappointedの前に「very」が付いているのかもしれないからね。先日、ワシントンから来日した知人から聞いた話だと、ワシントンの政府や外交戦略専門家はあらゆる場面で、靖国参拝を控えた方が良いというメッセージを日本政府に送っていたらしいですから、米国の反応が想定外とは絶対に言えないはずです。
オバマ大統領の立場も政局的に盤石とは言えない状態ですから、東アジアの問題に引き込まれることは歓迎していないはずです。今、北朝鮮の動きが不穏になっているところ、日中韓の3国がいがみ合っている状況というのは、どう考えても望ましいことではありません。実際、個人のレベルでは政府役人の韓国人たちから「私たちはもっと未来志向を持つべきだ」という声をもらっていたし、中国から日本に来る観光客の数も徐々に増え始めていた。そういうタイミングだっただけに、とても残念だね。
中野 そうなんですよ。2014年はグローバルな地政学リスクが日本に向かっているような気がしてならないのです。中国や北朝鮮を巡る東アジア問題は、中東よりも大きなリスクファクターになるのではないかと思います。特に北朝鮮の内部統制がいつ破綻をきたすのか、気になります。また中国も、今年は正念場を迎えるのではないでしょうか。
渋澤 でも、中国は経済規模も大きいし、経済自体は資本主義を採り入れているから、その意味で、北朝鮮と同列に論じることはできないんじゃないかな〜。
中野 そうはいっても、一党独裁の社会主義という政体を持っているという意味では同じじゃないですか。特に北朝鮮との国境を担当している瀋陽軍区は、北朝鮮に食糧や武器を支援していて、人民解放軍のなかでも最強と言われています。そこが北朝鮮の軍隊である朝鮮人民軍と結び付いて、中国の内乱につながるリスクもあるのではないですか?
渋澤 う〜ん、2014年はどうやら一本調子ではなく、動乱の年になりそうな気がしてきた。年初から株式市場も400円以上下げたしね。こりゃ、コツコツ積み立てていくしかないか。
中野 まあ、でも下げたところがチャンスとも考えられますし。
渋澤 MRFの純資産残高が過去最高の10兆円っていう報道もあったけど、これはキャピタルゲイン課税が本則の20%に戻る前に、とりあえず利益を確定させようとして、持ち株などを売却したお金が流れ込んでいるのでしょう。
これに、その他のキャッシュなども含めれば、かなりの買い余力があるでしょうね。株価が大きく下げたところで、この手の資金が再び株式市場に戻ってきてくれたら、株式市場にとってはプラスになる。ただ、去年のような政策的サプライズが全体を押し上げる要因が少ないように思うので、今年は個別物色の動きが強まって、アクティブ運用が主流になるんじゃないかな。
藤野 なんか、このところの環境って、1987年のブラックマンデー前夜と似ているような気がしますね。当時は、日本はバブルの中間地点で、米国ではレーガン政権が二期目の中間選挙の年を迎え、FRB議長がボルカーからグリーンスパンに交代。アベノミクスがバブル化するかどうかはともかく、米国はオバマ政権が二期目を迎えて中間選挙でしょ。FRB議長もバーナンキからイエレンに交代するじゃないですか。
渋澤 あとは、やはり長期金利の上昇にも気をつけたいですね。そうなれば、まさに同じ。次の「○○ショック」のタイミングを当てることは不可能だろうけど、アベノミクスがバブル化するとしたら、それは政府が主導で引き起こしたものであるだけに、崩壊した時が怖いね。
中野 僕たち今日は新しい草食投資タイを絞めてきましたが、お互い首が絞まらないように、今年も頑張って行きましょう。
コツコツ投資を説く「草食投資隊」の地道な活動が、いま実り始めている(セゾン投信社長中野晴啓さん(左)、コモンズ投信会長渋澤健さん(中)、レオス・キャピタルワークスCIO藤野英人さん(右)
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