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日本経済は、消費増税の大逆風に耐えられるか
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20140121-00028671-toyo-nb
東洋経済オンライン 2014/1/21 08:00 村上 尚己
アベノミクス1年目の2013年の日本市場では、歴史的な株高が実現した。それを支えたのがアベノミクスの発動であり、日本経済は3年ぶりに高い経済成長率を実現した。では、実質2年目となる2014年度の日本経済はどうなるか?
■ 増税による「成長押し下げ圧力」は実質約5兆円
2013年度と2014年度で異なる点は、景気回復を支える経済政策だ。2013年度は、金融政策、財政政策ともに総需要(消費、投資)を押し上げた。ただ、2014年4月以降は金融緩和というアクセルは変わらないだろうが、財政政策においては消費増税というブレーキがかかる。政策の組み合わせに変わるわけだが、この大型消費増税の大逆風に、日本経済が耐えられるかどうか。
安倍政権は、8兆円分の消費増税決定と同時に、2013年末に経済対策を打ち出した。ただ、実際に消費増税に起因する景気下押しの悪影響を和らげるのは、復興特別法人税廃止の前倒し、低所得者向けの家計への給付措置など約2.5兆円に限定される、と試算される。つまり、2014年度には、個人消費を中心に、少なくとも5兆円程度(GDP比約1%)に相当する規模で、経済成長率に押し下げ圧力がかかる。
このため、2014年度の個人消費は前年比マイナス0. 5%と減少に転じるだろう。消費増税による負担は可処分所得の約3%に相当する。この増税分を、賃金や雇用の回復では相殺できない。2013年のアベノミクス景気を牽引した、個人消費だけに期待するのは難しい。
ただ、他の需要項目の拡大によって、この個人消費の減少をカバーできれば、日本経済は逆風下でも成長できる。2014年度の日本経済は、実質GDP成長率はプラス1%を保ち、ゼロ成長を回避できると筆者は予想している。
■ 米国が世界経済を牽引する
「日本経済の回復が続く」と考える一つの理由は、輸出回復に期待できることである。2014年は、世界経済を取り巻く環境については明るい点が多い。米FRBの金融緩和策は縮小に向かうが、米国を中心に世界経済は安定さを増し、景気回復を阻害するリスクは小さくなっている。
世界経済を牽引するのは米国経済だ。2014年の実質GDP成長率は3%を超えると予想される。(1)2013年前半に大きく足を引っ張った緊縮財政が和らぐ、(2)家計部門のバランスシート健全化が進み、低金利政策によって、住宅などの総需要を押し上げる効果が強まるためである。
また、世界経済の回復に加え、アベノミクス発動によってデフレ予想が後退、2013年に20%前後進んだ円安は、引き続き、日本の輸出企業の価格競争力を改善させる。円安が輸出数量を押し上げる効果は、半年から1年程度のタイムラグをもって顕在化するが、これが2014年から強まることが輸出拡大を後押しする。
日本経済の回復を後押しする、もう一つの要因は、プラス2%のインフレ目標を実現するまで強力に続く、日本銀行の金融緩和策によって、景気刺激効果が広がることだ。
個人消費は一足早く回復したが、2013年後半からは、高価格帯のモノの売れ行き好調から、企業による価格転嫁が容易になる動きが広がっている。食料品やエネルギーを除いた消費者物価(米国式コア指数)は前年比プラス0.6%と、15年ぶりの水準まで伸びた。
アベノミクスによる金融政策の波及効果は明らかで、約20年ぶりに「デフレが今度こそ止まりつつある」と感じる人々が、消費を支えているのだ。確かに、消費増税で個人消費の減少は避けられないかもしれない。
だが、増税分が2%(3%→5%)だった1997年度よりも、2014度の個人消費の落ち込みは限定的に止まるはずだ。
■ 非製造業中小企業の景況感プラス転換は1992年以来
この動きは家計だけにはとどまらない。企業部門にも、インフレ見通しの変化が企業行動を変える兆しがみられ始めた。アベノミクス発動後も、個人消費と比べて回復が遅れていた設備投資が、ついに2013年後半から回復に転じつつある。例えば、2013年10月の鉱工業生産指数において、設備投資の動きを反映する、「資本財(輸送除く)の出荷指数」は、前月比でプラス9.5%と、大幅に伸びた。デフレ予想が和らいだことで、企業経営者は2013年初から増えた利益を、これまでは手元に蓄積してきたが、ついに設備投資に振り向けようとしている。
こうした前向きな企業行動は、「事業環境の好転」として、幅広い産業で表れている。2013年12月調査の日本銀行による短観(企業に対する景況感サーベイ)において、非製造業中小企業の業況判断DIは、プラス4と、なんと1992年以来のプラスに転じた。約20年に及んだデフレと経済停滞を克服する道筋を、日本が着実に辿っていることが、景況感改善のすそ野の広がりをもたらしている。
まとめると、2014年は、(1)世界経済安定を背景とした輸出拡大、(2)金融緩和強化に起因するインフレ予想の高まりによる設備投資回復、が個人消費の落ち込みをカバーしそうだ。これらによって、「脱デフレの途上にある中での消費増税」という大きな逆風になんとか耐えるだろう。残念ながら、2013年度ほどの高成長は難しいが、2014年度の日本の実質GDP成長率はプラス1%を維持し、景気回復基調は保たれると予想する。
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