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貿易赤字は拡大している
円安の効果が余りないことを認めた甘利大臣
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20140120-00031799/
2014年1月20日 13時51分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
先週の出来事で恐縮ですが、我が国の2013年11月の経常赤字が過去最大の5928億円に達したことを受けて、甘利大臣が次のように発言したことをご存知でしょうか?
「貿易立国の原点が若干揺らいでいる」
貿易立国の原点が揺らいでいるのだ、と。
但し、正確を期すならば、若干揺らいでいると言っています。その辺に甘利大臣らしさも表れていますが‥今はそのことは置いておきましょう。
では、何故貿易立国の原点が揺らいでいるのか?
それは、「円安で輸出環境が良くなっているにもかかわらず思ったほどスピーディーに輸出が拡大していない」からだ、と。
この方、珍しくまともなことを言っていると思います。ある意味、黒田日銀総裁や安倍総理よりも立派! 何故ならば事実を事実として認めたからなのです。
これだけの円安になっているにも拘わらず貿易収支がなかなか改善しないどころか、貿易赤字が益々拡大しているのです
黒田総裁は何度も、それはJカーブ効果のせいで時間が経てば貿易収支は改善すると言ってきました。そして、専門家の集団である内閣府でさえ、昨年4月の時点で「2013年8月頃から貿易収支は改善に向かうだろう」というレポートを出していたのです。
しかし、貿易収支は改善するどころか益々悪化している。グラフをご覧ください。
輸出や輸入、そしてその結果としての貿易収支には季節要因があるために、単純に前月と比較することはできないのですが、でも、どうみても貿易収支が改善しているようには見えません。
安倍政権が成立して1年以上が経過し、そして、今なお円安の圧力が強くかかっているにも拘わらず、思いの外、貿易収支が改善していない事実を初めて担当の大臣が認めたのです。
ものごとは、何でも事実を事実として認めなければよい対策なんて生まれる筈はないのです。
その意味で、今回こうして甘利大臣が円安にも拘わらず輸出がそれほど拡大していないだけではなく、貿易収支が悪化していることを認めたのは正しいことだと言いたい。
では、甘利大臣は、どのような対策を講じようというのか? 彼は次のようにも言っているのです。
「輸出環境の整備に取り組み、まずは貿易収支の赤字幅を縮めていかなければならない」
輸出を促進して、貿易赤字を縮める必要があると言いますが‥そもそも円安の効果について抜本的に考え直してみる必要があるのではないでしょうか?
つまり「円安=善」であり、「円高=悪」という極端な考え方を修正する必要があるのではないでしょうか。
確かに、輸出産業にとっては円安は恵みの雨として作用し、そして企業収益の改善に大きく寄与し、株価が上がったのは事実でしょう。
しかし、そうやって円安が進んだことが輸入を膨らましていることも事実なのです。
これだけ貿易赤字が増えている原因は、輸入が増えているためであり、そして、輸入が増えているのは、原発の稼働を止め、火力発電に頼る割合が増えているからだとよく言われます。つまり、火力発電に頼る割合が増えたので大量に天然ガスを輸入する羽目になり、しかもその価格が高いために、こんなに輸入が膨らんでいるのだ、と。
しかし、このような論調は、通常円安の影響を敢えて無視しているのです。実際、幾ら天然ガスの輸入量が増えても、仮に円安になっていなければ、ここまで輸入が増えることはなかったのです。つまり、天然ガスもドル建てで購入しているために、円安になった分だけ輸入代金が膨らむ、と。 例えば、1ドル=85円程度が、1ドル=105円程度にまで円安になれば、それだけで天然ガスの輸入代金23.5%増えるのですから。
つまり、貿易収支悪化の最大の原因はむしろ円安にあると言った方がよさそうなのです。
もちろん、その一方で、円安は多少は輸出回復のために寄与しているのも事実なのでしょうが、しかし、思ったほどの効果は表れていないのです。
では、この先はどうなのか? 例えば、2014年度の見通しは?
社団法人の日本貿易会が昨年11月に見通しを立てていますが、なんでも2014年度の貿易収支は多少改善するものの、それでも貿易赤字は11兆円弱程度になるだろうと言っています。
甘利大臣は輸出環境の整備が必要だなんて言っていますが‥日本の輸出が伸びるかどうかは世界経済の回復状況如何であると言うべきで、日本が自力でできることは限られているのです。敢て言えば、日本製品の魅力を増すとか技術開発を進めるとか、そういったことになる訳ですが‥そもそも日本の主要企業は、貿易収支を改善すべきだなんて考えていないのです。。
例えばトヨタにしても、2013年の自動車生産台数は、1月から11月までの合計で821万台になっていますが、そのうち国内の生産台数は311万台であり、その一方、海外の生産台数は、な、な、なんと509万台に上っているのです。つまり、6割強は海外で生産しているのです。
だから、仮にその海外にある工場の半分でも国内に移転するようなことがあれば、輸出は相当に回復するとも考えられるのでしょうが‥しかし、そのようなことは簡単にはできません。と言うよりも彼らは、海外で生産することにメリットを感じているからそうしているのです。だから、その企業側の事情を無視して、海外の工場は全て日本に戻ってくるべきだ、なんてことはとても言えないのです。
そこのところに、企業経営者と政治家との間に大きな認識ギャップがあるのではないでしょうか。
いずれにしても、国の経済が発展を遂げて成長段階に入ると、多くの企業が海外を目指すようになり、その結果、貿易黒字が縮小し、いずれ貿易赤字に陥るというのはある意味宿命的なことかもしれません。何故ならば、英国や米国がそのような道を歩んできたからです。
ところで、米国は、もう長い間、貿易赤字と経常赤字を記録し続けていますが‥しかし、よくよく考えると米国系の企業は、世界の至る所に工場を所有して、生産活動に励んでいるのです。だから、貿易収支などでその国の真の経済力は判断できないというような議論がもう30年以上も前からなされているのです。
お気づきでしょうか?
しかし、その事に気が付かない政治家などが多いのです。
もちろん、日本の企業が、技術力をさらに磨いて再び貿易黒字を計上することになれば、私としても嬉しいに違いないのはそのとおりなのですが。
以上
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