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細川元首相という有力な脱原発候補が東京都知事選に出馬表明したことは、株式市場において大きなうねりを生み出しています。それはつまり、脱原発関連銘柄の物色です。とりわけベンチャーなど新興企業によって構成されるジャスダック、マザーズ市場ではこの傾向が顕著であり、再生可能エネルギーや省エネ関連の企業の株価が急上昇しています。以下は、1月15日の主なところです。
省電舎 22・73%
エナリス 22・59%
ファーストテスコ 19・53%
グリムス 16・85%
日本アジアグループ 8・72%
日本風力開発 6・38%
なかでも、とりわけ主役となったのはエナリスです。この日エナリスの売買代金はおよそ800億円にのぼるもので、これは東証全体でも突出したものがあり、東証1部に目を転じても、このエナリスを上回る金額を集めたのはソフトバンクだけです。つまりエナリスは、日立やトヨタや三菱UFJをも上回る取引がされたわけで、投資家に対し非常にインパクトを与えました。
その一方で、この日は東芝がイギリスの原発の受注が内定したということも伝わり、東芝の株価も大幅高となる面もありました。
とはいえ、都知事選はこれからが本番です。小泉元首相と連携しての細川氏の立候補は強力であり、今後株式市場では、選挙戦の動向次第でこれら環境関連ベンチャーの株が更なる活況を呼ぶことと思われます。
安倍政権は都知事選において原発が争点になることを非常に恐れているわけですが、しかしそういう訳にはいきません。原発については、今こそまさに国民的な議論を行うべき時です。瀬川剛さんも、投資家向けの番組「アクロス・ザ・マーケット」のラストにおいて、次のような提言を行いました。
「今日は東芝がイギリスの原発受注っていうことで結構買われたりしましたよね。ところが、前年度、つまり去年の四月、大学の原子力関連学部の志願者が2割減った。来年度はもっと減りそうだという。いま、原発っていうのは鬼子のように扱われていますよね。
そうなると、原発に関する日本のノウハウや知識の後継っていうのはいったいどうなるのだろう? 一方で、廃炉作業っていうのはこれから延々と続いていくわけですよ。そういう面での技術者は必要なんですね。だから都知事選でも原発のことは当然争点になりますが、これを機会にもう一回みんなで原発のことを議論すべきです。そういう局面になってきてるんじゃないか」。
この瀬川さんの問いは非常に誠実です。東芝がイギリスの原発を受注したといっても、次代を担う若者は確実に原発から離れており、いまや原発は鬼子のような扱いになっている。その一方で廃炉のために技術者の育成は不可欠だ。このままでいいのか? これを機会に原発のことについて国民的な議論を起こすべき、というのは至極当たり前のことです。
ちなみに、瀬川さんは、以前から安倍政権に対して厳しい批判を行っています。昨年12月の取引最終日、いわゆる大納会の際、安倍首相は東京証券取引所に現れ「2014年もアベノミクスは買いだ」と演説をしたのですが、このような安倍首相の動きについて、瀬川さんは「浮かれすぎだ」と痛烈に批判しました。
投資家向けの番組「マーケット・ストリート・ラップ・トゥデイ」に瀬川さんが今年最初に出演した際、真っ先に行ったのが、安倍首相を名指しで批判することだったのです。
「安倍首相は大納会の日に取引所に現れ、演説を行ったわけですが、いくらなんでも浮かれすぎですよ。そもそも、政府要人というものは、株式市場に対してあれこれと口先で干渉すべきではない。マーケットは政治から独立したものであり、政府要人が立ち入るべきものではありません。それよりも、ちゃんと政策を行うことが仕事でしょう。しかし、安倍首相はそれをやっていない。
去年の6月成長戦略を出しましたが、これはハズしたわけです。それで、秋に成長戦略第2弾を出すということになったわけですが、しかし秋になってみるとなんら手を付けることなく、結局成長戦略は今年の6月へと先送りですよ。いわゆる岩盤規制と言われている既得権の分野について、本当に切り込む気があるのか? 安倍首相の動向からは、そのような姿勢はまったく見えてこないですね」。
ヨーロッパの市場関係者の間では以前から、アベノミクス批判が活発化しており、グローバル金融メディアであるCNBCの番組では、「日本のマーケットは大変魅力的であり、企業業績は好転している。しかしアベノミクス、これが障害物になっている」という見解にしょっちゅう出会うのですが、この瀬川さんの批判もまさにそうです。
アベノミクスによって株価が上がっているというのは大嘘であり、実際のところは、ヨーロッパの債務危機、中国のインフレ、アメリカの低迷という、過去数年間世界経済をどん底へと陥らせていた様々な悲観論が消えていき、世界経済回復への期待から株価から戻ってきたというのが真実であり、アベノミクスによって株価が上がってきたのではありません。むしろ、アベノミクスは日本株の回復(上昇)の邪魔をしているのです。
ところで、安倍政権はことあるごとに、脱原発を唱えているのは左翼だ、という訳の解らない批判を繰り返してきました。彼らは無理やりにでも脱原発派は左翼だ、ということにしたいわけですが、そんな安倍政権にとって最も嫌なのは、証券業界から脱原発の声が上がることです。というのも、ファンドマネージャーや個人投資家というのは、誰がどう見ても左翼ではありません。
メディアによるプロパガンダ、つまり「アベノミクスによって株価が上昇してきたのだ」という情報操作がある以上、証券業界は安倍政権の味方ということになっております。しかし、政権に迎合する凡庸な勢力がある一方で、株の達人と呼べる人に関してはそうではなく、むしろ瀬川さんのように、実は証券業界のなかにこそ最も強烈な安倍批判を行う人材がいて、そして国内の投資家から外国のヘッジファンドに至るまで、日本が脱原発に舵を取ることを望んでいる市場関係者は結構いるのです
特にヘッジファンドに関しては、彼らは福島の問題を大変神経質に注視していて、日本が脱原発に舵を取るなら、その選択を歓迎するでしょう。このことについては、後日あらためてお伝えします。
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