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http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20140119/dms1401190725003-n1.htm
2014.01.19 「日本」の解き方
日銀の金融緩和について「金融抑圧」という表現が使われることがある。総じて批判的なニュアンスで、金利を人為的に低下させるという意味で使われているようだ。
もともとは、「金融抑圧(financial repression)」とは、開発経済学で用いられていた概念だ。開発途上国で、長期にわたり貯蓄者に対して大きなマイナスとなるような実質金利を課し、結果として貯蓄を減少させる政策を指す。ところが最近、カーメン・ラインハート氏らの国際経済学者の間で、こうした政策は、実は1980年代まで先進国で見られていたという主張がなされるようになった。さらに、最近急増している公的債務を削減するためには「金融抑圧」が一つの選択肢であるとも主張している。
これに対して、ポール・クルーグマン氏は、その「金融抑圧」の用語法には違和感があると指摘している。先進国では、低金利政策であっても貯蓄を減少させるほどではなく、経済成長をプラスにするような刺激策であった。この点、貯蓄減少から成長できなくなったりしていた開発途上国とはまったく違う話だ。
クルーグマン氏の用語法によれば、日本の戦後高度成長を支えた「低金利政策」も、「金融抑圧」というのは適当ではないだろう。
ところが、冒頭述べたような、「金融抑圧」を日銀批判に使う人たちは、この用語法をさらにねじ曲げている。日銀の金融政策は、日本の公的債務の削減を狙っているとして、戦後直後に起きたようなハイパーインフレによる債務削減への第一歩であるという言い方だ。
なんのことはない。こうした「金融抑圧」を間違って使う形で日銀を批判している人は、かつて「日銀が異次元緩和するとハイパーインフレになる」と言っていたのであるが、いまだにその主張を変えていないというわけだ。さすがに「ハイパーインフレが来る」とはもう言えなくなったからか、「金融抑圧」という新しい言葉で目先を変えて、同じ主張をしているだけだ。
日銀の異次元緩和というのは、その前の日銀の金融政策に比べて「異次元」なのだが、中身は2%のインフレ目標という先進国で標準的なものだ。だから、とうていハイパーインフレになるものではない。また、デフレから脱却するために一時的に実質金利がマイナスになるが、長期的にマイナスのままではない。
そして、実際に異次元緩和の後に経済成長しているので、開発途上国で見られる伝統的な「金融抑圧」とは似ても似つかない政策だ。
日銀緩和への批判者は盛んに「異次元緩和の副作用」という言葉を使い、金利の急騰などを予測するが、これも起こっていない。ハイパーインフレや金利急騰は起こらず、経済成長できたというのが現実だ。社会科学は実験ができないので、起こる事実を予測し、生じた結果に基づいて黒白をつけた方がいい。そろそろ異次元緩和によって生じた事実を認めたほうがいいのではないか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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