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シャープ、経営再建に向け、今年「正念場」〜綱渡り続く資金繰り、カギ握るIGZO苦戦…
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20140119-00010000-biz_bj-nb
Business Journal 2014/1/19 07:54 編集部
経営再建中のシャープは1月31日、省電力で高精細な液晶パネル・IGZO(イグゾー)を採用したタブレット端末・Mebius Pad(メビウス パッド)を発売する。OS(基本ソフト)はマイクロソフトの最新版・Windows 8.1を搭載。10.1型ディスプレイで、薄さは9.5ミリメートル、595グラムと軽く、バッテリーは15.5時間駆動する。
液晶の画素密度はWindows搭載機種としては最高の1インチ当たり300画素。画像や文字を細部まで表示できる。高速データ通信サービス・LTEに対応したモジュール(プログラム部品)を内蔵し、外出先でも高速でネットに接続できる。法人市場や個人のビジネスユースを見込み、オープン価格で13万〜13万5000円程度を想定している。
シャープ再建のカギを握っているのが、このIGZOである。同社が世界に先駆けて2012年に実用化に成功し、IGZO技術を採用した液晶ディスプレイを自社のスマートフォン(スマホ)に搭載し「IGZOモデル」として発売。ディスプレイの美しさに加え、丸2日間充電せずに使えることからヒット商品となった。14年以降に発売するスマホとタブレット端末のすべてにIGZOを搭載する。
IGZOはディスプレイ業界に革命をもたらすと期待されているが、一般のパネルより高価格なところが難点であり、これが受注が増えない大きな原因となっている。今後の課題はそのコストをどう下げていくかであり、シャープ再建はIGZOのコストダウンにかかっている、といっても過言ではない。
●通期最終黒字の目途立つ
シャープは12年3月期と13年同期の2年間で、合計9213億円の最終赤字を計上した。銀行団の意向で旧経営陣が一斉に退陣し、13年5月、副社長の高橋興三氏が社長に就任した。社長就任に合わせ3カ年の中期経営計画を発表し、最終年の16年3月期の純利益800億円を目標に掲げた。当面のターゲットは、金融支援の前提条件となっている14年3月期の最終黒字の達成である。
業績は上向いてきた。13年4〜9月期の売上高は1兆3420億円(前年同期比21.5%増)、営業利益は338億円の黒字(前年同期は1688億円の赤字)に転換した。4〜9月期としては2年ぶりの営業黒字である。最終損益も従来予想(200億円の赤字)の2割相当、43億円の赤字(前年同期は3875億円の赤字)に収まった。太陽電池の販売増に加え、米アップルや韓国サムスン電子向けの液晶パネルの受注が業績を牽引した。
だが、虎の子の技術である高精細、省電力が売りのIGZOを搭載した携帯電話の販売台数は、NTTドコモのiPhone投入が響き、中間期時点で前期比11%減と大きく落ち込んだ。通期でも10%減の見通しだ。
14年3月期の業績予想は、売上高が前年同期比8.9%増の2兆7000億円、営業利益は800億円の黒字、当期利益も50億円の黒字の見通しだ。銀行支援の条件である通期の50億円の最終黒字の目途がようやく立った。
●綱渡り続く資金調達
最大の課題は財務基盤の強化だ。11月12日、住宅設備大手・LIXILグループ、電動工具大手・マキタ、自動車部品メーカー・デンソーの3社からの出資を仰ぎ(第三者割当増資)、公募増資と合わせて1365億円の資金を調達。自己資本比率は9月末の6.4%から12%近くに回復した。
しかし今期末には、企業年金の積み立て不足分1200億円を負債として計上する必要に迫られている。自己資本比率は再び8%まで低下する見込みだ。
さらに3月末に300億円、9月末に1000億円の社債の償還が迫っている。今回の公募増資で調達した資金は全額設備投資に回すとしており、社債償還の原資に充てることはできないため、本業で稼ぐことが強く求められている。今後3年間に調達した資金のうち500億円を主力の液晶事業に投資し、利益率の高いスマホやタブレット端末などで需要が急増している中小型液晶パネルで稼ぐ算段だが、IGZOが大きな果実をもたらすには時間がかかりそうだ。
米アップルはシャープから調達していた液晶パネルの発注先を韓国LGディスプレイに切り替えるなど、この分野で勝ち続けるのは容易ではない。頼みの綱のIGZO搭載スマホは12年後半にはヒットしたが、NTTドコモがソニーとサムスン製スマホを重点的に販売するツートップ戦略を取ったことから逆風にさらされ、結局シェアを落とした。
●迷走するスポンサー探し
シャープは13年12月10日、米ヒューレット・パッカード(HP)に複写機をOEM(相手先ブランドによる生産)供給することで合意した。「液晶のシャープ」にとって複写機事業はいわば傍流だが、国内外に有力顧客を抱え、毎年200億円前後の営業利益を稼ぎ出している。複写機事業はシャープにとって重要な収益源なのである。センサーなど電子部品を数多く組み合わせてつくる複写機は高い技術力が求められ、日本のメーカーが強みを発揮できる分野だ。
複写機の技術者出身の高橋氏が、シャープ再建の切り札の一枚と考えていたのが複写機事業であり、13年夏に韓国サムスン電子と複写機の合弁事業を模索した。具体的にはシャープが複写機事業を本体から分離し、サムスンから1000億円規模の出資を得て、財務の改善を図る予定だった。しかし、技術流出を恐れた社内や同業他社、さらには経済産業省から反対され、サムスンとの交渉を打ち切った。HPとの提携はOEMに限定することで技術流出の可能性を排除したと、シャープは説明している。
サムスンとの合弁会社設立計画が頓挫したため、1000億円の資金調達の道は断たれたシャープは、LIXILら国内3社への第三者割当増資と公募増資を実施したのだ。
クアルコム、鴻海精密工業、サムスン電子(日本)とスポンサー企業をめぐって迷走を続けるシャープは、最終的にはどこに向かうのか。「液晶のシャープ」の看板は下ろせないが、儲からなければ事業を次々と売却する可能性もある。今はシャープブランドの最終製品をつくっているが、IGZOをパーツとして供給する電子部品メーカーに特化する可能性もゼロではないという声も聞こえてくる。
再建に向け今年、正念場を迎えるシャープ。その動向から目が離せない。
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