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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 失策不況がやってくる
http://wjn.jp/article/detail/3773459/
週刊実話 2014年1月30日 特大号
毎日新聞が1月3日にまとめた主要123社に対する景気アンケートで、77%の企業が「落ち込みは一時的で、夏以降は回復」と回答した。その他「落ち込まない」が7%、「腰折れする」は3%に過ぎなかった。
4月の消費税引き上げで一時的に消費は冷え込むが、すぐに回復すると大部分の経営者が考えている。駆け込み需要の反動程度にしか、消費税引き上げのショックを認識していないということになるのだ。
いまや経済評論家も含め、消費税引き上げの深刻な影響を語れば「非国民」扱いされかねない空気になってきた。御用学者たちは、日経平均が年内に2万円との大合唱を始めている。
私は、こうした空気がせっかく訪れた景気回復の芽を摘んでしまうのではないかと懸念している。
まず、景気楽観論には根拠がない。日本経済はすでにデフレを脱却している。昨年11月の生鮮食品を除く消費者物価指数は、前年比1.2%上昇している。コアコアと呼ばれる食料およびエネルギーを除く消費者物価指数で見ても、前年比0.6%の上昇だ。4月からは、これに消費税引き上げの影響が加わるから、4%程度の物価上昇になる。ところが、賃金は上がらない。
先の毎日新聞の景気アンケートでは、賃上げを「検討する」とした企業は12%に過ぎず、ベースアップを考えている企業は123社中たった2社だった。そもそも連合のベースアップ要求が「1%以上」なのだから、大幅賃上げは最初からあり得ないのだ。
そのなかで、経営者や経済評論家の楽観論の大合唱は、日本経済に大きな被害をもたらすことになろう。
消費税引き上げの悪影響は、4〜6月期のGDP統計に現れる。この数字が発表されるのが8月、より正確な2次速報が出されるのは9月になる。ところが、その時点では誰も驚かない。なぜなら、ほとんどの人が消費税引き上げで一時的に景気は落ち込むと信じているからだ。
問題は、7〜9月期だ。ここでもマイナス成長が続くようだと、多くの市場参加者は異常を感じ始める。しかし、それではすでに手遅れだ。7〜9月期のGDP統計2次速報が発表されるのは、12月になるからだ。そこから景気対策が行われても、今年の景気拡大にはつながらない。
さらに恐ろしいことがある。それは、消費税引き上げで景気が落ち込んでいるにもかかわらず、一時的な景気後退だとして、2015年10月からの消費税の10%への引き上げを政府が決定してしまうことだ。そうなったら、景気後退は決定的になってしまうだろう。
4月からの消費税引き上げの悪影響を最小化する唯一の方法は、新年度開始とともに強力な景気対策を打つことだ。税率引き上げをやめるのが最も効果的だが、さすがに今となっては不可能だろう。だから、次善の策として景気対策が必須なのだが、景気楽観論がその実施を1年近く遅らせてしまうのだ。
景気を失速させた安倍政権の支持率は劇的に落ちていくだろう。そこで、安倍総理が何をするのか。中国や韓国を仮想敵国として戦時体制を組み、強いリーダーシップを発揮する可能性が高いと私は思う。戦争特需の景気回復だけは、何があってもやめて欲しい。
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