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「シェールガス」バブルの崩壊は目の前、 日本のエネルギーが危ない
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20140117-00039682-biz_jbp_j-nb&ref=clipRank
JBpress 2014/1/17 12:24 藤 和彦
「シェールガス掘削想定外れ、大阪ガス290億円損失」
2013年12月21日、日本経済新聞は、開発ラッシュに沸く北米地域のシェールガス事業で日系企業が大規模な損失を出した初のケースを報じた。
大阪ガスが米国テキサス州南西部のシェールガス鉱区の権益を330億円で取得したが、3300メートル以深の地層に難があったため、現在の掘削技術では経済性に見合った量を確保できないことが判明したのである。
大阪ガスは同年5月に米国で初めて認可された日本へのシェールガス輸出プロジェクトに参画するとともに、2012年6月に日本企業としては初めてシェールガスに対する直接投資を行うなど、日本のシェールガス開発事業で中心的な役割を演じてきた。大阪ガスは今後も鉱区を閉鎖せずに生産・販売を続ける意向だが、日本国内では今後開発リスクを巡る懸念が高まるだろう。
■採算が合わないシェールガス採掘事業
苦境に陥っているのは日本企業ばかりではない。2013年10月、ロイヤル・ダッチ・シェルは240億ドルを投じた米国のシェールガス事業が失敗に終わったことを認めた。英BPなどもすでに21億ドルの評価損を計上しており、「不良鉱区」をつかまされた海外のオイルメジャーの間ではシェールガスブームは一気に冷え込んでいる。
その要因は極めて簡単だ。シェールガス自身は実は決して安い化石燃料ではないからである。
シェールガスはシェール(頁岩)という泥岩に含まれる天然ガスである。成分は在来型の天然ガスと同じだが、掘削が困難なため、採算性の面から世界的規模の石油会社ですらその開発に二の足を踏んできた。
だが2000年代に入って新しい採掘技術が確立し、シェールガスが喧伝されると、投資家から資金をかき集めたベンチャー企業が争って開発・生産競争に走り、米国の天然ガスは大幅な供給過剰となった。
その結果、指標価格であるヘンリーハブ価格は12.17ドル(100万BTU当たり、2008年6月時点)から2.68ドル(2012年5月時点)に急落、日本で「シェールガスは安い」という誤った認識が広がった。
しかし、エクソンモービルですら「生産すればするほど赤字になる」と悲鳴を上げる状態が長続きするだろうか。
シェールガスは大規模な開発が始まってからまだ8年ほどしか経っていないが、採掘の経験が増えるにつれ、ガスの産出量の減少が在来型のガス田より早いという難点が明らかになってきている。すなわち、多くのシェールガス田はガスの産出が始まって3年経つと産出量が75%以上減少してしまう。ガスの産出量を維持するためには次々と新しい井戸を掘り続けなければならず、ガスが出ているガス井群の3割以上をリプレースしている状況にある。
このシェールガス田の自転車操業に必要な費用が米国全体で2012年に420億ドルに上ると言われている。一方、米国全体で産出されるシェールガスの売上高は325億ドルなので、現在シェールガス開発は年間で100億ドルもの赤字経営を強いられていることになる。
開発企業は有望な場所からガスを採取するので、今後、井戸を掘る場所はガスがあまり出ない場所になるだろう。
加えてバブル現象のあおりを受けて、ガス業界は掘削に不可欠な技術者の獲得と技術者への報酬アップに追い立てられてきた。しかし今後は、技術革新を進めるなどして生産コストをどこまで下げるかが焦点となっている(詳細は拙書『シェール革命の正体』を参照されたい)。
■天然ガス価格の値崩れで開発企業が破綻
シェールガス生産量も2012年から変調をきたしている。リグ(掘削装置)の稼働数が2008年のピーク時の4分の1を下回るようになった。米国では天然ガスの需要が堅調な一方で供給が伸び悩んでいる状況だ。
JOGMEC調査部上席エコノミストの野神隆之氏は、「2013年4月4日には、天然ガス貯蔵量における過去5年平均比での余剰がなくなる、つまりもはや米国では天然ガスの過剰供給状態が消滅したと言える状態になっている」(「シェールガス革命は世界天然ガス市場に何をもたらしたのか、その一考察」)と指摘する。
また米国の専門家の間では、「赤字操業に耐えられない会社が続出するため、今後数年以内にシェールガス生産のピークが来る」との予測も出始めている。
米国のシェールガス開発企業はバラ色の未来像を振りまくだけ振りまき、国内大手企業や外国企業などにガスの採掘権を高値で転売し、売り逃げているのではないかとの懸念が高まっている。関係者の間では「ガス開発会社は将来の生産を楽観しすぎている」「負債が大きすぎて、立て直しは困難」「住宅の値上がりを期待して失敗したリーマン・ショックから学んでいない」などと囁やかれ始めた。
その矢先の2013年4月、オクラホマ州でシェールガスなどを生産するGMXリソーシズは連邦破産裁判所に対して、米連邦破産法第11条(日本の民事再生法に相当)を申請した(負債総額:4億6000万ドル、総資産額:2億8000万ドル)。
米国の天然ガス価格はシェールガスの急増で値崩れし、2013年を通じ3〜4ドルと低迷しているが、シェールガス田の多くはガス価格が8ドルにまで回復しないと採算が合わないと言われている。
同社は天然ガス価格の値崩れにより8期連続で損失を計上していた。ノースダコタ州やテキサス州などの有望鉱区で権益を保有していたが、過熱する開発ブームで鉱区の権益価格が急騰してしまったために買い手が現れなかった。同社の破綻は「終わりの始まり」になるのだろうか。
■天然ガス価格が上昇したら日本はどう対応するか
米国では「シェールガスブームは短期的なバブルだ」との見方が強まっている。過去5年間の「シェールガスの急激な生産の伸びが続く」という前提が修正されれば、米国内の天然ガス価格が極端に上昇する可能性がある。
最近まで、天然ガスの価格指標であるヘンリーハブ価格は「ローカルマーケットの田舎価格」と揶揄されてきた。取引量が少ないうえに、北米地域の事情が色濃く反映されるためにちょっとした要因でも価格が乱高下しがちだったからだ。
現在でこそ世界最低水準にある価格も、かつてはハリケーン・カトリーナの影響で10ドル以上の高水準に達したことがあるし、2003年後半は厳冬により18ドルにまで高騰した。米国内ではパイプラインで安価な価格で流通しているガスも、輸出するとなると液化や輸送のためのコストが6〜7ドル(最大10ドルという指摘もある)上乗せされることになる。
寒波予報と在庫減が要因となり、米国の天然ガス先物価格は2013年12月に入り、2011年7月以来の高値を更新している(12月23日時点で4.53ドル)。2014年は10ドルを超えその後高値で推移することも予想される(2014年1月上旬に発生した20年ぶりの記録的な寒波により、ニューヨークの天然ガス受取価格は90ドルとなり、2001年以来の高値を記録した)。
そうなれば、シェールガスの日本への輸出による天然ガス価格の引き下げ戦略は「絵に描いた餅」である。
2013年11月の経常収支が単月として過去最大の5928億円の赤字となったことを受けて、麻生太郎財務大臣は「LNGや原油の(輸入)急増が一番大きな理由である」と指摘した上で、総合的なエネルギー政策検討の必要性を強調した。
それでは日本はどうすればよいのか。
次回はシェールガスに代わる日本にとっての切り札を説明したい。
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