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「電力料金が31.3%値上げされた場合の産業界への影響を分析した結果、収益が悪化しやすい産業は、化学系、鉄鋼系の素材産業の他、部品製造を含む自動車関連産業である。これらの製造業は、雇用者の賃金が高いわが国基幹産業である。電力料金の上昇が製造業の収益を押し下げるような事態が長期化すれば、基幹産業の衰退や生産拠点の海外シフトによって国内雇用が失われ、直接的な電力料金値上げによる負担増と合わせて、国民の生活水準の低下が懸念される。」
日本総研ニュースリリース
http://www.jri.co.jp/page.jsp?id=21573
電力料金上昇の影響分析と対策
2012年08月07日
【要 旨】
1.全国の一般電気事業者における2012年度の燃料費は、原発停止にともなう化石燃料の焚き増しにより、2010年度比3.7〜4.3兆円増となる見込み。電気事業者の営業収支を電力料金の値上げのみで黒字化するためには、全国平均で2010年度比26.9〜31.3%の値上げが必要となる。電気事業者のコスト削減努力は不可欠であるものの、燃料費増大の影響は大きく、東京電力以外の事業者でも、早晩の値上げが避けられなくなる見通し。
2.中長期的にも、右肩上がりの化石燃料価格が電力料金の押し上げ要因となる。さらに、2012年7月1日からスタートした再生可能エネルギーの全量買取制度(FIT)は、買い取り費用を電力料金に上乗せ(サーチャージ)して回収するため、料金を押し上げる要因のひとつ。2030年度までの電力料金上昇幅を試算したところ、エネルギー基本計画の電源構成比案の選択肢2(原発15%、再生可能エネルギー30%)では、2.4〜3.1円/kWh(2010年度比15.0%〜19.6%)の上昇となる。うちサーチャージは、1.4〜2.1円/kWh(8.8%〜13.2%)。一般的な家庭では、月々1千円の負担増となる見通し。
3 .電力料金の上昇は、(1)家計や、(2)産業界に大きな影響を及ぼす。
(1) 2012年度の燃料費の増大を電力料金の値上げだけで回収することを想定すれば、電力料金は2010年度比最大31.3%上昇し、家計(2人以上世帯)の年間電力消費支出は3.7万円の増加が見込まれる。また、中長期的な化石燃料価格の上昇やFITの影響により2030年度の電力料金が19.6%上昇(選択肢2+上限シナリオ)すること想定すれば、家計の負担は2.3万円増となる。近年、世帯所得が低下傾向にある中で、2万から4万円の支出増は、他への消費支出の抑制につながり、わが国経済への悪影響が懸念される。
(2)電力料金が31.3%値上げされた場合の産業界への影響を分析した結果、収益が悪化しやすい産業は、化学系、鉄鋼系の素材産業の他、部品製造を含む自動車関連産業である。これらの製造業は、雇用者の賃金が高いわが国基幹産業である。電力料金の上昇が製造業の収益を押し下げるような事態が長期化すれば、基幹産業の衰退や生産拠点の海外シフトによって国内雇用が失われ、直接的な電力料金値上げによる負担増と合わせて、国民の生活水準の低下が懸念される。
4 .家計や産業への影響を抑えるために、(1)電力料金(原価)の上昇を抑える、(2)上昇する料金の悪影響を緩和する、等が必要。
(1)電力料金の上昇を抑えるためには、化石燃料、特にLNGの輸入価格の抑制や、電力市場の自由化を含む電気事業体制の見直し、 FITの買取価格を適切水準に維持すること、などが考えられる。中でも、発電原価に影響を及ぼしやすいLNG火力の燃料調達コスト抑制に向け、a)輸入価格決定方式の見直し、b)上流権益の取得、c)調達先の多様化、d)共同調達の促進、などが求められる。
(2)電力料金上昇の影響緩和策としては、国際競争にさらされている製造業への負担軽減策が一つの選択肢である。ただし、電力料金やサーチャージを減免する負担軽減策は、電力依存度の高いエネルギー多消費産業を支援するする政策である。対象とする範囲と期間を限定的にとどめ、中長期な視点に立脚し、税制優遇や補助金などを組み合わせた省エネ対策支援により、省エネ技術の導入、製造工程やエネルギーポートフォリオ、商品構成の見直しを促すことが重要。さらに、こうした補助金や優遇税制の財源を他のエネルギーへの課税により調達する場合には、環境税や炭素税を主として家計が負担する欧州型税制の導入検討も一考に値する。今後わが国においても、「負担のあり方」について突っ込んだ議論が必要となろう。
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