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ワタミ、なぜブラック批判の矢面?批判弱まるユニクロとの明暗分けた、情報開示の姿勢
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140118-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 1月18日(土)7時34分配信
前回記事『ワタミにユニクロ…短絡的なブラック企業批判が問題を延命?社員や客が加担も』(http://biz-journal.jp/2013/11/post_3362.html)では「ワタミやユニクロ(運営元:ファーストリテイリング)など、目立つ企業だけをブラックだと叩いて溜飲を下げている、脊髄反射な人たち」を批判したわけだが、もちろん批判される側にもそれなりの理由はある。その中で、どうもワタミばかりが批判の矢面に立たされているようで、多少気の毒な感じもするが、今回はそうなってしまう理由について解き明かしていこう。
昨年8月、労働問題に取り組む弁護士や大学教授、労働組合関係者らが主催する、日本におけるブラック企業の頂点を決めるイベント「ブラック企業大賞 2013」の授賞式が開催された。その「大賞」と「一般投票賞」を受賞したのは、大方の予想通りワタミであった。
「ブラック企業大賞唯一の2年連続ノミネート」
「一般参加のWeb投票では70%がワタミを選ぶ」
など不本意な記録更新のオマケつきである。また、ほぼ同時期に
「入社2カ月で社員が過労自殺」
「グループの介護施設利用者が死亡する事故が複数発生」
「共産党が参院選の選挙演説でワタミを公然と批判」
など、いろいろと印象的な出来事が重なったこともあり、ワタミはすっかりブラック企業の代名詞としてのイメージが定着してしまったようだ。
しかし「ブラック企業の代名詞」といえばユニクロもよく取り沙汰されていたし、インターネット掲示板「2ちゃんねる」の「ブラック企業ランキング」では長年、居酒屋チェーンの「白木屋」などを運営するモンテローザが上位に居座り、ほかにも数多くの企業が名を連ねている。なぜその中で、ワタミばかりがこれほどまでに叩かれるのだろうか。
理由はいろいろあるが、ポイントのひとつに「情報開示のスタンス」があると考えられる。この点は、ブラック企業と評されているその他多数の会社や、風評被害に苦しんでいる企業にとっても参考になるはずだ。
「情報開示のスタンス」の差が最もよく現れたのは、昨年4月に「日経ビジネス」(日経BP社)で組まれた特集『それをやったら「ブラック企業」』における、ユニクロとワタミの両経営者へのインタビューだろう。
「ブラック批判」に関するインタビューだから、普通ならあまり受けたくはないテーマだが、両社は取材を受け、その内容をまとめた記事は、結果として炎上にも近い反響を呼んだ。
【対象記事】
・ユニクロ:『甘やかして、世界で勝てるのか』
(http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130411/246495/)
・ワタミ:『我々の離職率は高くない』
(http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130411/246500/)
興味深いのはそのあとだ。不思議なことに、ユニクロへのブラック批判は少しずつ減っていったが、ワタミへの批判はむしろエスカレートし、いまだに根強く続いているのである。
●ワタミとユニクロ、その対照的なスタンス
ではその差異につながった要素とは何か?
ここではまず、インタビューに対する両社の対応の違いを見てみよう。
(1)取材対応姿勢
・ユニクロ:(運営元であるファストリ)柳井正会長が積極的に対応
・ワタミ:当初、広報は「答えたくない」との回答。その後、交渉を重ね、結果的に「桑原豊社長の手記を掲載」するかたちで妥結
(2)回答内容
・ユニクロ:柳井会長が考える人材教育や、グローバル市場で勝つための方策について
・ワタミ:「ありがとうツアー」「みんなの夢アワード」「社員独立制度」について
(3)ブラック企業批判に対して
・ユニクロ:
「急成長のひずみがあったことは確か。修正すべき点があった」
「離職率5割はさすがに高い。我々は店長の技術ばかり教育していた。これが一番の問題であり、失敗だと思っている」
「我々が本当にブラックなら、社員は辞め、会社はダメになっているはず。情熱を注いで働く社員がいるから結果が出ている。だからこそ、根本的に向いていない人には入社してほしくない」
・ワタミ:
「ビデオレターでコミュニケーションをとっている」
「離職率は業界水準からみると高くない」
「労働環境は格段によくなった」
だいぶ要約したが、このような内容であった。両社とも、世間での「ブラック批判」に対して反論したいと考えていた。しかも、「自社のスタンスをきっちり知ってもらわないと、反論の一部だけを切り取られて違った解釈をされてしまう」と懸念していたところまで同じだ。
しかし、その後の行動が違った。ユニクロは、向き合って説明した。
「我々はこういう企業である」
「我々は過去のやり方を反省して見直している」
「我々は今こんな努力をしている」
ということを、総合的に訴えたわけだ。
一方のワタミは、反論しなかった。創業者で同社会長である渡邉美樹氏は「我々のことがちゃんと伝わっていれば、週刊誌のくだらない記事など『くだらない』で終わるはず」と考え、「事実とは違う批判をされること自体が問題である」という態度をとったのだ。そして、前述のとおり「ワタミはブラック企業」というイメージがひとり歩きする結果となった。外食業界には、同社よりもっとひどい実態の企業はほかにも多数あるというのに。採用時に期待を高めすぎることによって、入社後に感じるギャップや失望感が大きくなるということもあろう。
●「RJP」の大切さ
ブラック企業という評判(風評被害含む)に対して有効な対策は、以下のとおりシンプルである。
「評判に対して真摯に向き合う」
「事実は事実として認めて、実態を明らかにする」
「疑問や懸念を、個別に回答することで払拭する」
実際、明らかにブラックな労働環境であっても、採用時に「RJP」(Realistic Job Preview/組織の良い面だけでなく、悪い情報も含めて事実を誠実に伝えること)を行っている会社では、社員の定着率も高いことが確認されている。
目立つブラック企業だけを叩いても、根本的な問題解決にはならない。法制も必要だが、まず企業側で情報開示のスタンスを徹底することで、入社後に「こんなはずじゃなかった」と感じる人を少しでも減らしてほしいものである。
新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト
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