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日本経済、2014年が正念場 アジア全域に影響を及ぼす金融政策の大胆な実験の行方
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39702
2014.01.17(金) Financial Times
(2014年1月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
もう何年もの間、アジアで本当に重要な唯一の経済ニュースは中国だった。10年以上にわたり地域の成長の原動力となってきた中国は来る年も来る年も、アジア経済――さらには世界経済――の温度を決定する唯一最大の要因だった。
だが、今年、中国は互角の競争に直面する。ほとんどの人の記憶にある限りでは初めて、日本経済の今後の展開に対する関心の方が大きいかもしれないのだ。
■量的・質的緩和という大胆な実験に3つの可能性
日本は金融政策の過激な実験の真っ只中にある。あまりに大胆なために「量的・質的金融緩和(QQE)」という新しいしゃれた名前が付けられたほどだ。今年は、QQEが機能するかどうかが分かる年だ。3つの可能性が存在する。
1つ目は、2年間でマネタリーベースを倍増させることを標榜するQQEが次第に立ち消えになること。その時は、インフレ率が再びゼロに向かって低下するだろう。
2つ目の可能性はそれよりさらに憂慮すべきものだ。安倍晋三首相にちなんで名付けられたアベノミクスが「アベゲドン」に陥る危険性である。そうなれば、インフレは手に負えなくなり、金利が急騰し、資本が逃げていく。
3つ目の可能性――これを期待しよう――は、QQEが実際に機能することだ。仮にそれが起きれば、日本は2%という持続的なインフレ率に向かって動き、成長率は1.5%になるかもしれない。
HSBCのフレデリック・ニューマン氏は最近の調査メモで、アジアの成長を牽引する最近の2つのエンジン――米連邦準備理事会(FRB)が供給する低利資金と中国の急拡大――がどちらも止まりかけていると指摘し、「だが、2014年に過去何年もなかったほど大きな影響を地域に及ぼす第3の勢力がある。日本がそれだ」と話している。
■日本が従来のエンジンに代わる勢力になるか?
日本はアジアにとって巨大な投資家だが、しばしば過小評価される深みのある企業部門を持つライバルでもある。日本は英国経済の2倍以上の経済規模を持つ巨大な市場だ。膨大な流動性の源泉でもある。
ニューマン氏が「史上最大の金融刺激策」と呼ぶものが勢いを増すにつれ、日本から流れてくる流動性は、米国の金融刺激策の縮小の結果として残されるかもしれない穴を埋める助けになり得る。
ニューマン氏の試算では、先を争ってアジアの金融機関を買収してきた日本の銀行は、東南アジア諸国向けだけで600億〜1400億ドルの追加資金を供給できるという。タイは対内直接投資の60%を日本から受けている。
もっと遠いところでも、日本企業はアニマルスピリッツを再発見している。サントリーホールディングスは、総額160億ドルの案件でウイスキーメーカーのビームを買収することでカネ――一部の向きによれば、過大な大金――をばらまいた。
もちろん、中国経済は日本経済より大きい。大雑把に言って、日本の6兆ドルに対して中国は9兆ドルだ。中国政府も、市場改革を導入しようとしているため、この先は困難な1年が待ち受けている。例えば、影の銀行システムが破綻し始めたり、地方政府が債務をデフォルトし始めたりした場合には、マイナスの衝撃が走る恐れがある。
だが、中国には悲観論者の見方を覆してきた実績がある。一番確実なのは、中国が2014年に7%を超えるペースで成長し、経済が生きて再び戦う年を迎えるというものだろう。
■インフレ目標達成に自身の評判を懸けた安倍首相
日本では消費者物価がカギを握っている。安倍首相は、2年以内に2%のインフレ目標を達成することに自身の評価を懸けている。これまでのところ、指標は心強いものだ。今年は、それが持続的なものかどうかが分かる。
昨年11月の統計は、生鮮食品を除くがエネルギーを含む消費者物価のコア指数が前年比1.2%上昇したことを示している。懸念材料は、最近の物価上昇が単に円安による輸入エネルギーコストの上昇を反映したものに過ぎないことだ。そうだとすれば、インフレは単に失速してしまう可能性がある。
だが、物価は本当に息を吹き返しつつあるのかもしれない。エネルギーを除いても、インフレ率は0.6%と、15年ぶりの高さまで持ち直している。
賃金が上昇しなければ、それさえ消えてなくなる可能性がある。安倍首相は、給与を引き上げることでインフレ実現の大義に一役買うよう大企業にプレッシャーをかけている。大企業が要請を聞き入れたとしても、雇用の大半を担う、資金繰りに苦労している中小企業も大きな負担を負う必要が出てくる。
少なくとも労働市場は逼迫している。失業率は4%まで低下しており、有効求人倍率は1倍まで上昇している。
マイナスの側面を見ると、日本の消費者は、消費税率を3%引き上げて8%とする増税によって、こん棒で殴られようとしている。安倍首相の側近である本田悦朗氏でさえ、消費税増税は正気ではないと考えている。危険なのは、4月の増税後に需要の急激な落ち込みが起きることだ。
中期的には、需給ギャップを埋めるために、トレンドを上回るペースで成長が続くことが極めて重要だ。日銀の黒田東彦総裁は先月、本紙(英フィナンシャル・タイムズ)に対して、需給ギャップはマイナス1〜1.5%であり、既に「大幅に縮小した」と考えていると話した。このペースであれば、1〜2年後に「若干のプラス」になる可能性があるという。
■アベゲドンかアベサクセスか
2%の着実なインフレ率でさえ、万能薬ではない。筆者の同僚のマーティン・ウルフが言うように、「赤ん坊を印刷することはできない」ため、それは日本の人口動態上の危機に対して何の効果もない。印刷機を回転させたからといって、オフィスをもっと女性に優しいものにすることもできないし、田んぼの耕作を改善することもできない。
それでも、仮に日本が2%のインフレ率と1.5%の成長率を達成すれば、日本経済は何年もなかったほど調子が良いように見えるだろう。アベゲドンかアベサクセスか――。2014年が決めることになる。
By David Pilling
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