http://www.asyura2.com/14/hasan85/msg/104.html
Tweet |
「経済弾力条項はどう決まったのか」(EJ第3708号)
http://electronic-journal.seesaa.net/article/385028079.html
2014年01月14日 Electronic Journal
安倍首相は消費税増税を決断し、4月から消費税率は現行5%
から8%に引き上げられます。しかし、安倍氏は政権を奪還する
前の2012年6月27日にメールマガジンで次のように発信し
ているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
昨日、社会保障・税一体改革関連法案が、衆院を通過しまし
た。3党合意についての私の考え方は、すでにメールマガジン
でご説明した通りです。
報道等ではあまり触れていませんが、現在のデフレ下では消
費税を引き上げず、法案には引き上げの条件として名目経済成
長率3%、実質成長率2%を目指すという経済弾力条項が盛り
込まれています。
つまり現在のデフレ状況が続けば、消費税は上げないという
ことです。しかし、野田総理のこれまでの委員会答弁は、この
点があいまいであると言わざるを得ません。
要は民主党政権を倒し、デフレからの脱却を果たし、経済成
長戦略を実施して条件を整えることが大切です。そして、「そ
の条件が満たされなければ消費税の引き上げは行わないこと」
が重要です。──2012年6月27日付、安倍晋三「メール
マガジン」/三橋貴明著『2014年世界連鎖破綻と日本経済
に迫る危機』/徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
このメールマガジンで安倍首相は、「デフレ状況が続けば消費
税は上げない」と書いています。消費税増税法では、経済弾力条
項として、名目成長率3%、実質成長率2%という数値が入って
います。これによると、GDPデフレータは次のようにプラスに
なるので、デフレから脱却したとみなすことができます。
―――――――――――――――――――――――――――――
名目成長率3%―実質成長率2%=GDPデフレータ1%
―――――――――――――――――――――――――――――
名目成長率というのは、物価変動の影響を排除していないGD
Pであり、実質成長率はそれを排除したGDPです。その差をと
るGDPデフレータというのは、物価変動の程度を表す物価指数
ということになります。この数値の値がプラスであれば、一応イ
ンフレーション、マイナスであればデフレーションであるとみな
すことができるのです。
実際問題として、GDPデフレータが1%になったとしても、
デフレから脱却したとはいえませんが、現実のデータは―0.1
%なのであり、ぜんぜんデフレから脱却していないのです。それ
にもかかわらず、安倍首相は8%への増税を決断したのです。自
身のメールマガジンでいったことと矛盾しています。
この経済弾力条項は、民主党内の法案の事前審査で決められた
のですが、増税反対派としては、ぎりぎりの妥協であったといえ
ます。数値の設定について、朝日新聞記者の伊藤裕香子氏は次の
ように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
反対派にとっては、「増税反対」だけを叫び続けていても、首
相である野田の決意が固いだけに、増税法案の提出にブレーキ
がかけられない。そこで、3月の事前審査では、再び「景気条
項」に照準を合わせた。増税の前提条件に、具体的な経済成長
率の数値を法案に書き込むよう、強く求める戦略だ。それが、
「名目成長率3%程度、実質成長率2%程度」だった。この数
字は、民主党政権が2009年と2010年にともに閣議決定
している新成長戦略の目標で、「2011年度から2020年
度までの10年間の平均値」として設定した。増税反対派は、
「政府の目標として公表されているし、それを条件にしても矛
盾しない」と主張した。のちに首相になる安倍晋三も、経済目
標として「名目成長率3%以上」を掲げる。だが、日本で名目
成長率が3%を超えたのは、バブル経済が終わろうとしていた
1991年度の4.9 %が最後で、その後20年以上も達して
いない水準だ。そうした数字を増税の「条件」にすれば、「実
態的には増税ができない法律」となりかねない。
──伊藤裕香子著(朝日新聞記者)/プレジデント社刊
『消費税日記/【検証】増税786日の攻防』
―――――――――――――――――――――――――――――
民主党における法案の事前審査は、2012年3月から8日間
にわたって行われましたが、当然のことながら難航を極めたので
す。野田首相は、成長率の目標数値を書く込むことに「禍根を残
す」として、最後まで一貫して反対し続けたのです。
しかし、交渉の責任者である前原政調会長は「条件にしない形
で、何らかの数値は入れざるをえない」と考えていたのです。そ
こで財務官僚に対し、数値を入れるものと入れないものの2つの
案を持ってくるよう指示したのです。そして8日目の3月27日
に前原氏は2つの案を持って、野田首相と会っています。輿石幹
事長と岡田一体改革担当相も同席したのです。ここで前原政調会
長は次のように野田首相を説得しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
条件をつけることは、マーケットに間違ったシグナルを与える
と思っています。数値は入れますが、条件ではありません。
──前原誠司政調会長(当時)
―――――――――――――――――――――――――――――
反対派の強硬さを知っている輿石幹事長は前原氏に同調したの
ですが、岡田担当相は無言で、野田首相は「うん」といわなかっ
たのです。同じ日、事前審査会議を中断して前原氏は幹事長と一
緒に再び野田首相に会って再度説得したとき、首相は「輿石さん
がそこまでおっしゃるなら」と数値入りを受け入れたのです。
会議を再開した前原氏は「首相決断」を伝え、まとめようとし
ましたが、まとまらず、午前2時過ぎに一方的に会議を打ち切り
8日間の法案事前審査会議は終了したのです。
── [消費税増税を考える/06]
≪画像および関連情報≫
●「私なら消費税を上げていなかった」/前原誠司氏
―――――――――――――――――――――――――――
──反対派の意をくむ形で、法案の景気条項に政府の成長戦
略にあった「名目成長率3%程度、実質成長率2%程度」と
いう数字を入れました。これは、必要だったと思いますか。
野田さんは経済成長率の目標数字を入れることに、ひじょう
に否定的でした。だけど、あと5%、いまの倍の消費税をお
願いするわけですから、政府の身を削る努力、景気をよくす
る努力が、やっぱり必要だと思っていました。あと、金融緩
和。私も(増税に反対していた)その人たちに意見が近い面
もあったから、開く耳は持っていた。「条件にまでするのは
とんでもないけど、景気の努力目標は絶対に入れたほうがい
い」と思っていました。それで、輿石さんにお願いして、首
相との協議に一緒に行ってもらいました。野田さんは岡田副
総理を連れてきて、お互い、神経戦をやっていましたね。も
し、僕と野田さんの1対1だったら、成長率の数字は法律に
入っていなかったかもしれません。
──どうしてですか?
総理以上の偉い人は政治家にいませんから。最後に総理が決
めたら、「わかりました」としか言えないではないですか。
──伊藤裕香子著(朝日新聞記者)/プレジデント社刊
『消費税日記/【検証】増税786日の攻防』
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。