http://www.asyura2.com/14/genpatu41/msg/906.html
Tweet |
原爆5000発分のプルトニウムはどこへ行くのか
宙に浮いた核燃料サイクルはもう先送りできない
2015年02月24日(Tue) 池田 信夫
日本学術会議は2月17日に、使用済み核燃料(核廃棄物)についての検討委員会で「核廃棄物の処分方法が決まるまで原発を再稼動するな」という提言案をまとめたが、その奇妙な内容が話題を呼んでいる。
確かに日本は1万7000トンの核廃棄物を抱え、その最終処分の方法が決まっていない。これはエネルギー政策のみならず安全保障上も重要な問題だが、原発の再稼動をやめても解決しない。「原発ゼロ」にしても核廃棄物はなくならないのだ。
なぜ「10万年後のゼロリスク」が必要なのか
核廃棄物は、どこの国でも頭の痛い問題である。特に日本は核廃棄物を核燃料サイクルで再処理する方針をとっているが、青森県・六ヶ所村の再処理工場が稼働しないため、各原発の使用済み核燃料プールに貯蔵された廃棄物があふれそうになっている。
これが今回の学術会議の提言の理由だが、それは解決策になっていない。彼らは「暫定保管」という新方式を提案しているが、これは使用済み核燃料を容器(キャスク)に入れて空冷で保管する「乾式保管」というもので、むつ市の中間貯蔵施設とまったく同じだ。
検討委員会の今田高俊委員長は、核廃棄物を地下300メートルに埋める「地層処分」に反対して「10万年後の安全が保証できない」というが、これは反原発派にありがちな「ゼロリスク幻想」だ。プルトニウムより経口毒性の強い重金属は水銀、砒素、六価クロムなど他にもあるが、海水中に一定の基準で排出されている。
核廃棄物の放射能は減衰するので、100年ぐらいでほぼ無害になる。万が一、地震で容器が破壊されても、水銀とは違ってプルトニウムは地下水に溶けないので、食物連鎖で生物に蓄積される心配もない。プルトニウムだけに10万年後のゼロリスクを要求する科学的根拠はないのだ。
核兵器をもたない日本が保有する大量の核兵器物質
地下の処分場から核廃棄物が地下水に漏れるリスクはほとんど問題にならないが、プルトニウムは核兵器の材料になる。今まで海外で再処理してできたプルトニウムは45トンあり、これは長崎型原爆5000発分以上に相当する。
このため六ヶ所村の再処理工場では、IAEA(国際原子力機関)の査察官が24時間体制でプルトニウムの保管量を監視している。数キログラムでも分量をごまかせば、原爆が1発つくれるからだ(インドはその方法で原爆をつくった)。
日本は核不拡散条約(NPT)に参加しているので、本来は核兵器の材料になるプルトニウムを保有できないが、1988年の日米原子力協定で再処理を認められた。核兵器をもたない日本が何のためにこれほど多くのプルトニウムを保有するのか、疑惑をもたれるのは当然だが、これには複雑な歴史がある。
1956年にできた日本の原子力開発利用長期計画は、エネルギー資源の乏しい日本が原子力を平和利用し、核燃料を再処理して有効利用する方針を打ち出し、その後も原子力政策大綱では核燃料サイクルを堅持してきた。
これはアメリカの了解のもとだったが、1977年に東海村の再処理施設が完成したとき、当時のカーター政権は方針を転換し、再処理をやめるよう圧力をかけてきた。インドが核実験を行ない、核兵器の拡散のリスクが大きくなったためだ。
その後もアメリカは日本の核燃料サイクルに慎重な態度を取り続けたが、1988年に日米原子力協定で日本には例外的に再処理を認めた。これは平和利用に限定し、核燃料サイクルでできるプルトニウムは高速増殖炉(FBR)で消費し、60倍の燃料効率を実現する予定だった。
ところがFBRは各国で挫折し、ドイツやスウェーデンなどは90年代後半に核燃料サイクルをあきらめて直接処分(使用済み核燃料をそのまま地中に埋める)に転換した。日本でも原型炉「もんじゅ」は1995年に火災を起こし、2007年に事故を起こしたまま、稼働する見通しが立たない。
予定通り動いても2050年だった実用化は大幅に遅れ、核燃料サイクルは絶望的だ。FBRが不可能になると、核燃料サイクルは宙に浮いてしまうが、日本は「ウランとプルトニウムを混合したMOX燃料をつくってプルサーマルで再利用する」と理由を変更して再処理を続けた。
2018年に迫る原子力協定の「決断のとき」
しかし原子力委員会の試算では、再処理のコストは2円/kWhだが、直接処分だと1円。プルサーマルで燃料が25%節約できることになっているが、その効果は10兆円程度で、19兆円以上かかる核燃料サイクルのコストを大幅に下回る。
つまり核燃料サイクルは、最初からキャッシュフローが大幅な赤字のプロジェクトなのだ。これが黒字になる可能性があるとすれば、今から50年以上後にFBRなどの高速炉が実用化したときだが、それまでに六ヶ所村の再処理工場の寿命は終わる。
そもそもウランの埋蔵量が80年程度しかないという当初の見通しは大幅に狂い、今ではシェールオイルのような形で岩盤の中にある非在来型ウランの埋蔵量は、300年分以上あると推定されている。
2012年に民主党政権は「革新的エネルギー・環境戦略」で「2030年代に原発ゼロ」という方針を打ち出し、再処理からも撤退する方針を示したが、米政府から「原発ゼロにするならプルトニウムはどうするのか」という質問を受けて、この方針をすぐ撤回してしまった。
だがタイムリミットはやって来る。日米原子力協定は30年後の2018年7月に期限が切れ、どちらかの国が終了を申し入れれば終了する。協定が切れると、日本がプルトニウムを保有することはNPT違反になる。日本に残された選択肢は、原子力協定の延長を認めるようアメリカと交渉するか、再処理を放棄するかの2つに1つである。
原発が再稼動する見通しがなく、プルサーマルでつくるMOX燃料の消費も進まないので、プルトニウムは大幅に余る。オバマ政権はかねてから日本の核燃料サイクルに否定的であり、米議会も同じだ。イランなどの核武装を警戒するアメリカが、目的のはっきりしない日本のプルトニウム保有を今後も認めるとは考えにくい。
発想を変えないと、このピンチは乗り切れないが、それはチャンスでもある。核燃料サイクルを放棄すれば、「核のゴミ捨て場」の問題も解決する。六ヶ所村の再処理工場をやめて最終処分場にすれば、300年分の核廃棄物が埋められるのだ。
安倍政権はまだ態度を決めていないようだが、原子力協定の期限はあと3年半に迫っている。経産省の続けてきた問題の先送りはもうできない。日本は否応なく、核燃料サイクルについての決断を迫られるのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42999
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 原発・フッ素41掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。