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※日経新聞連載記事
原発と地域
(1)再稼働の同意範囲 法的根拠あいまい
九州電力の川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)に続き、関西電力の高浜原発(福井県高浜町)が原子力規制委員会の安全審査に近く合格する。再稼働に必要な同意を得る「地元」の範囲が議論になっている。
再稼働に必要な法的手続きは安全審査の合格だけ。ただ立地する自治体は電力会社と「原子力安全協定」を結び、増設の際の事前協議などを約束してきた。そのため事実上、再稼働には地元の同意が必要とされてきた。
同意の範囲が議論になったのは、東京電力福島第1原発の事故がきっかけだ。国は事故を踏まえ2013年に原子力災害対策指針を改正。住民の避難計画づくりを義務づける自治体の範囲が「原発の半径8〜10キロ圏」から30キロ圏に広がった。
国は昨年まとめたエネルギー基本計画でも、再稼働について「国も前面に立ち立地自治体などの理解と協力を得る」とした。だが同意の範囲については、資源エネルギー庁の上田隆之長官が鹿児島県に「国が一律に言うことではない」と話すなどあいまいにしてきた。
30キロ圏に鹿児島の9市町が入る川内原発では、周辺自治体も地元扱いを求めたが、伊藤祐一郎知事の指導もあり、県と薩摩川内市だけの同意で落ち着いた。だが30キロ圏に京都府や滋賀県も含む高浜原発は違う形になりそうだ。
電力中央研究所の菅原慎悦主任研究員は「紳士協定として始まった安全協定を根拠に、同意というリスクを伴う意思決定を自治体がするのは無理がある。自治体の役割を位置づける法的な仕組みが必要」と指摘する。
(編集委員 原孝二)
[日経新聞2月10日朝刊P.31]
(2) 原子力安全協定 事故のたびに改定
原子力発電所と地域の問題を議論するときに話題になるのが「原子力安全協定」だ。最初の協定は福島第1原発の建設が進む中で、福島県が東京電力に要請し1969年に結んだ。以後、原発の立地する道県、市町村と電力会社が運転開始前に結ぶのが通例になった。
全国の協定に共通するのは(1)異常時の通報・連絡(2)自治体による立ち入り調査を認める(3)風評被害を含めた損害補償(4)施設の新増設時に自治体との事前協議・了解が必要――などの項目だ。
だが福島の協定も、福井県が関西電力と結んだ72年の協定も事前協議の項目はない。今の形になったのは「事故や問題のたびに改定を繰り返したから」と来馬克美・福井工業大教授は説明する。
関電が73年に美浜原発(美浜町)で燃料棒折損事故を起こしたことが76年に発覚。そこで福井県は協定に「事故後の運転再開についての事前協議を盛り込んでいった」(来馬克美著「君は原子力を考えたことがあるか」)。これが、再稼働について自治体が一定の権利を持つ端緒になった。
震災後、立地はしていないが30キロ圏にある自治体も安全協定を結ぶケースが増加。ただ立地自治体のものと比べ権利が弱く、事前協議などの項目がない。
関電高浜原発(高浜町)の地元同意手続きが近づくにつれ、30キロ圏に入る京都府、滋賀県が「立地自治体に準じた安全協定」を求めるのはこうした背景がある。だが協定が自治体と電力会社の関係を映しながら発展してきた経緯を考えると、立地自治体よりは一段弱い形で決着する可能性が高い。
(編集委員 原孝二)
[日経新聞2月11日朝刊P.29]
(3) 電源立地交付金 自治体、廃炉に慎重
1月末に関西電力が福井県美浜町で開いた町との懇談会。運転から40年以上がたつため、関電が廃炉を検討する美浜原発1、2号機について山口治太郎町長は「理想的には新設の方向性を出してもらいたい」と求めた。
日本経済新聞社の1月の世論調査では原発再稼働を進めるべきでないとの答えが52%。再稼働への反発がある中で自治体が新設まで求める背景にあるのが、電源3法による立地交付金の存在だ。
国が3法を制定したのは1974年。「田中角栄内閣は電源開発の方向を原子力にシフトする」(清水修二著「原発になお地域の未来を託せるか」)ため制度を定めた。
国が電力料金に上乗せして徴収した税金を、地元の自治体に補助金の形で支給する。水力や火力より原子力、またより出力の大きい発電所の立地自治体に多く支払う。
経済産業省が示す例では、出力135万キロワットの原発を建設した場合、運転開始までの10年と開始後40年の計50年で計1384億円の原発立地地域対策などの交付金を立地自治体(周辺市町村や道県を含む)に支払う(「電源立地制度の概要」)。全原発が止まった現在も、稼働率を81%とみなして交付金額を決めている。
だが廃炉になると、この交付金がなくなる。美浜町などが原発の新設や、廃炉後の財政措置を求めるのはこのためだ。経産省は昨年12月にまとめた原子力政策の課題を示す中間整理で、廃炉を円滑に進めるために「立地市町村への影響を十分に考慮し(中略)、必要な対策について検討を進めるべき」とした。
(編集委員 原孝二)
[日経新聞2月12日朝刊P.11]
(4)立地自治体の自立 依存度下げが課題
原子力発電所の建設・運転で立地自治体が得る税収は電源3法の立地交付金だけではない。固定資産税のほか、道県では核燃料税がある。福井県が1976年に条例で創設を決め、青森県も含めた13道県に広がった。
70年代、原発が地域にできても道県には固定資産税がなく、立地交付金も当初は少なかった。だが安全対策費などはかかる。そこで福井県は「原子炉に核燃料を入れるごとに課税する」核燃料税を成立させた。2013年度までの累計税収は1700億円を超す。
東日本大震災以降の大きな変化は、福島県が核燃料税を廃止したのに対し、福井や新潟など11道県が停止した原発にも課税できる仕組みを導入したことだ。震災直後の12年はほとんどの原発が止まり、8道県の核燃料税がゼロ。だが熱出力に応じ課税する「出力割」を導入して、停止中も収入を得られるようにした。
立地交付金に続き、自治体は核燃料税でも安定した財源を持つことになった。だがこれらが地域の振興につながっているかとなると別の問題だ。
自治体財政に詳しい高寄昇三甲南大名誉教授は著書「原発再稼働と自治体の選択」で「交付金が箱物行政などに浪費され、地域経済の振興には余り寄与していない。そのため立地自治体はますます原発財源を必要とする悪循環に陥っている」と指摘した。
国の最適な電源構成の議論が始まったが、原子力の比率が震災前より下がるのは確実だ。地域も原発財源への依存度を下げつつ振興を進める取り組みが求められる。
(編集委員 原孝二)
=この項おわり
[日経新聞2月13日朝刊P.33]
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