http://www.asyura2.com/14/genpatu41/msg/736.html
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加圧水型原発(PWR)を使用している関西電力、九州電力などが、PWRは東電が導入している
沸騰水型原発(BWR)よりも安全で爆発を起こしにくいと主張している。
この情報誌では、三菱重工業の人がPWRがBWRに比べより安全な点を挙げ、
事故を起こす可能性は少ないと述べている。
情報誌「TOMIC(とおみっく)」 (九州エネルギー問題懇話会 2013/10)
http://q-enecon.org/kikanshi/tomic48/index.html
今回はこれらについて一つ一つ反論しよう。
(1) 制御棒は上から挿入するので脱落しない(BWRは下から挿入する)
重力による脱落の可能性がないというだけだ。
緊急時、とくに地震で大きく揺れているときに制御棒がきちんと挿入されるかどうかは別問題。
燃料の変形や炉内圧力上昇により、制御棒がうまく挿入されないというトラブルも報告されている。
また地震の一撃で原子炉が斜めに傾く可能性もある。福島第一4号機では不等沈下が起きた。
とくに地盤の悪い川内原発などは危ない。
(2) 蒸気発生器(SG)へ送る2次冷却水は放射性物質が含まれず、大気中に放出可能
BWRでは原子炉で発生した蒸気をそのまま発電機のタービンに送る。
PWRでは原子炉を冷却する1次冷却水を蒸気交換機(SG)に送り、独立した2次冷却水へ
熱交換を行ないタービンを回す。
2次冷却水は放射能汚染されず、汚染が格納容器外に出ないというのがPWRの"売り"である。
http://q-enecon.org/kikanshi/tomic48/index_01.html (図1参照)
しかしSGはPWRのアキレス腱でもある。
SGは何千本もの伝熱細管からなり、これらが減肉や振動で損傷する事故がいくつも起きている。
伝熱細管が破断すると、高圧の1次冷却水が低圧の2次冷却水に急速に流れ込み、
原子炉の冷却ができなくなる。緊急炉心冷却装置が働かなければ、炉心溶融が始まってしまう。
また汚染された2次冷却水が外界に放出される危険性もある。
1991年には関電美浜原発の伝熱細管が金属疲労でギロチン破断した。
幸い原子炉を停止して事なきを得たが、停止に失敗していたら破局的な事故になっていただろう。
ちなみに、米国サン・オノフレ原発は三菱重工が納めたSGの設計ミスが原因で廃炉になり、
現在損害賠償をめぐって係争中である。
(3) SGの蒸気で稼働するポンプにより、電源喪失時も原子炉内を冷却可能
地震の強烈な揺れがあっても、SGやポンプ、配管が健全で何の損傷もなければの話だ。
SGは何千本もの伝熱細管からなる複雑かつデリケートな装置である。
大地震の強烈な揺れに耐えられるとは限らない。
福島第一では、地震で主蒸気系を含め配管多数が破断したことが作業員により証言されている。
津波が来る前にズタズタになっていたのだ。PWRでも同様の問題が起きるであろう。
(4) 使用済み燃料プールは地盤面と同じレベルにあり、冷却給水が容易
PWRの原子炉や使用済み燃料プールは、わずか海抜十数メートルの高さにあり、
数十メートルの大津波が来たらひとたまりもない。
建屋も格納容器も簡単に破壊され、大量の海水や泥、ガレキが流れ込み、
手のつけられない状況に陥るだろう。
3/11の津波の恐ろしい威力を思い出せば、容易に想像がつく。
建屋が倒壊しないという保証があれば、BWRのように高い位置に原子炉や燃料プールがあったほうが
津波に強いのは明らかである。
地盤面に燃料プールを設置したからより頑強だとも言えない。
地割れ、断層のずれによる損傷も考えられる。地下にあれば漏水箇所の特定も補修も難しい。
(5) 格納容器がBWRの10倍と大きく爆発しにくい
PWRの1次冷却水は320℃、150気圧と高温高圧である。(沸騰水型は、280℃、70気圧)
ひとたび配管破断などが起きれば、冷却機能喪失からメルトダウンまでの時間が非常に短い。
また、BWRは格納容器に爆発防止のため窒素が充填されているるが、PWRでは空気である。
空気中の酸素と発生した水素が化合して大爆発する可能性が高い。
猛烈な勢いで水素が発生すれば、容量が10倍あろうが大した違いはない。
福島第一3号機では、ドライベントをためらううちに格納容器が内圧に耐えられず、
破裂して火を吹いたのはほぼ確実である。
BWRは1メートル近い分厚いコンクリートで格納容器を囲み保護している。
だからあれだけの爆発で済んだとも言える。格納容器が小さいからこそ頑強にできるのだ。
PWRの巨大な格納容器ははるかに脆弱であり、爆発すれば放射性物質がすべて外界に放出され
壊滅的な事故になるだろう。
2001年、米国サンディア国立研究所で行なったPWR格納容器の破壊実験がそれを示している。
この実験は、当初は窒素を充填する予定だったが、危険なので水を使うことにした。
気体の爆発なら、この程度の破壊では済まないだろう。
「加圧水型原発が安全だというのは大ウソだ -- この爆発実験ビデオを見よ」 (拙稿 2012/6/25)
http://www.asyura2.com/12/genpatu25/msg/143.html
(6) 格納容器にフィルタ付ベント装置を新たに設置
BWRでは常識であるベント装置をやっとつけるということ。
いざというときにきちんと動作するか、タイミングよく弁を開放できるかは別問題である。
少なくとも福島第一ではベント装置があるにもかかわらず爆発した。
以上、資料の説明に反論したが、このほかにも細かく見ていくとPWRの欠点はいろいろあり、
とてもBWRより安全だとは言えないことがわかる。
例えば、燃料交換が複雑で迅速にできないことを前稿で指摘した。
1979年に炉心溶融事故を起こした米国スリーマイル島原発もPWRであり、
その原因は今もって完全には解明されていない。
安全性・信頼性が全く科学的・工学的に検証・保証されておらず、
安全だといいなぁ、爆発しないといいなぁ、という単なる願望ないし祈願のみで
原発が設計、運転されているのは、BWRと全く同じである。
大事故を起こすのは時間の問題であろう。
川内、玄海、伊方、大飯、美浜、高浜など、関西にある原発の大半はこのPWRである。
どれか一基でも事故を起こせば、放射性物質は西風に乗って、関西のみならず、
中部、北陸、関東、東北の広い地域に降り注ぐ。
福島第一原発事故のように、放射性物質の大半が海に落下することは期待できない。
そうなれば、どこにも安全に住める土地はなくなり、日本はまちがいなく壊滅するだろう。
(関連投稿)
「小林圭二さん "加圧水型原子炉 (PWR) の 問題点"」 (togetter 2013/2/24)
http://togetter.com/li/461963
「蒸気発生器(原子力)」 (Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%92%B8%E6%B0%97%E7%99%BA%E7%94%9F%E5%99%A8_%28%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%29
「加圧水型原発の燃料交換は、沸騰水型よりはるかに複雑でトラブルを起こしやすい」
(拙稿 2015/1/26)
http://www.asyura2.com/14/genpatu41/msg/717.html
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