http://www.asyura2.com/14/genpatu41/msg/726.html
Tweet |
内部被曝通信 福島・浜通りから 〜「1時間あたり」をめぐる迷い
坪倉正治:南相馬市立総合病院非常勤内科医
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
from MRIC
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「空間線量0.23μSv/h」という数値があります。国は追加被曝が長期的には年間
1mSv以下となることを目標としていますが、その「年間追加1mSv」を時間当た
りに換算した値がこの「0.23」です。1mSvを単純に24時間、365日で割っ
た値ではなく、1日のうち、16時間は遮蔽(しゃへい)の強い家の中、8時間は
家の外にいると仮定し、1mSvから計算された値です。
「じゃあ、除染を含めた対策で、0.23μSv/h以下を目指せば良いのですね?」
――。普通は素直にそう考えると思うのですが、実際にやってみると0.23μSv/h
と年間追加1mSvが全然一致しません。経験的には、0.23の2〜3倍である空間
線量0.5〜0.6μSv/hぐらいの場所に住んでいる方で初めて、年間追加1mSvにな
ることが言われていました。言い換えれば、空間線量0.5〜0.6μSv/h以下であれ
ば、もう既に長期的な目標の年間追加1mSv以下を達成している。誤解を恐れずも
っと言えば、空間線量0.5〜0.6μSv/hであれば、長期的目標に照らし合わせても
それ以上除染しなくて良いのでは? という主張がなしえます。
なぜそんなにずれが生じたのか? 端的に言えば、1mSvから空間線量に換算する
際に国が行った計算(仮定)が実態に即していなかった、ということのようです。
どの程度実態とずれているのか、南相馬市の検査結果から計算してまとめました。
http://pubs.acs.org/doi/ipdf/10.1021/es503504y
2012年9月〜11月に行われたガラスバッジの検査結果から、ガラスバッジを
しっかり着用してくれていた520人の児童の結果のみを用いました。ガラスバッ
ジの示す値は、実際に体が受けるダメージ量(実効線量)と非常に近いことが知ら
れていますが、ガラスバッジの値と、それぞれの自宅前での空間線量から国のやり
方で推定される被曝量を比較したことになります。
結果は上記に述べた経験と非常に近く、国のやり方で推定される被曝量はガラスバ
ッジの値の約3倍になっている、言い換えると空間線量0.6μSv/hぐらいの場所に
住んで初めて、年間追加1mSvになることが分かりました。
理由を調べると、特に以下の2点が現実に即しませんでした。
1点目は、推定では16時間家の中、8時間家の外で生活していると仮定していま
したが、実際にそんなに外にいる方はほとんどいないということ。
2点目は、やや原理的なことになりますが、空間線量というものは、そもそも、い
ろいろな方向から10本の放射線が飛んできたとき、その10本が、「一番ダメー
ジをうけやすい体の前方から10本とも飛んできた」場合に体が受けるダメージの
ことをいいます。それに対して、実際の体のダメージ(実効線量)は、各方向から
だいたい平均的に飛んできた放射線によって起こっています。そのため、実効線量
は空間線量より定義上低くなります。これを国は、安全のため、イコールだと仮定
し計算していました。
これらの仮定は放射線防護上、安全側になるように設定されるべきで、その意味で
目的は達せられているのですが、そのため逆に安全側にだいぶ寄ってしまったこと
になります。
0.23μSv/hを目指さなくても、年間追加1mSv以下を達成できる。これは素直に
聞けば朗報です。しかし、非常に残念ながら、住民の立場から言えばまた後出しじ
ゃんけん(の様)になってしまいました。数字や理論としてはおかしくありません。
しかしながら、0.23に向かおうと言っている(少なくともそう認識していた)は
ずだったのに、いきなり、「0.6でも大丈夫と改訂され、高くても問題ないですよ。
と言われてしまった。また基準値が改訂された」という感覚を持たれることは想像
に難くありません。科学・行政からすれば、そもそも基準値ではないし、年間追加
1mSvは非常に低い値で、健康と危険の境というわけではまったくない。分かって
いただくためには対話とリスクコミュニケーションが必要――。となります。
この話は以前から出ていることで、何も目新しくはありませんが、明らかに巨額の
お金が絡む問題で、これからどちらの方向に固まるのか、僕には見えません。ちゃ
んとデータを出すことは必要です。ただ、これが住民の感情を無視して除染にまつ
わる単なる政治利用、またはただ科学的に正しいことだけを行使するための道具と
はなって欲しくないですし、その一方で感情や理論の全くない話にだけ流れて、無
視される話にもなって欲しくないと思っています。
まとめにあたり、市役所・市立病院スタッフ、早野龍五先生、慶応大学の古谷知之
先生、ロンドンの野村周平さんにご尽力いただきました。この場を借りてお礼申し
上げます。
坪倉正治の「内部被曝通信 福島・浜通りから」のバックナンバーがそろっています。
http://apital.asahi.com/article/fukushima/index.html
「アピタル」には、医療を考えるさまざまな題材が詰まっています。
http://apital.asahi.com/
- ガラスバッジは福島のような全方向照射では3−4割低めに検出する−(株)千代田テクノルが公式説明(公表は有難いが。) 戦争とはこういう物 2015/1/29 11:14:45
(0)
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 原発・フッ素41掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。