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先の総選挙で安定多数を得た安倍政権。今年最大であろう難関の一つが、原発再稼働の問題だ(写真は2012〜13年まで一時稼働していた大飯原発3、4号機)
2015年、原発「再稼働」と「廃炉」はどうなる?老朽原発”原則廃炉”は守られるか
http://toyokeizai.net/articles/-/57123
2015年01月04日 中村 稔:東洋経済 編集局記者
電力業界における2015年の最大の注目点といえるのが、原子力発電所の再稼働の行方だ。
2011年3月11日に起こった東日本大震災と東京電力・福島第一原発事故後、福島第一原発は廃炉となり、その他の原発も2012年5月までにすべてが運転を停止(定期検査入り)した。原発の安全性を審査する制度や体制を根本的に見直すためだ。例外的に電力需給の厳しさなどを理由にした政治判断で、関西電力の大飯原発3、4号機が2012年7月〜2013年9月に稼働したが、それ以外は現在に至るまで停止が続いている。
2012年9月に発足した原子力規制委員会は、新規制基準に基づく原発の安全性審査を、13年7月から開始。これまで11電力会社が14原発21基の審査を申請済みだ。このうち再稼働一番手と目されているのが、九州電力の川内原発1、2号機である。2014年9月10日、設計変更の基本方針を示した設置変更許可申請が新規制基準に適合していると評価され、初めて事実上の合格証(審査書)を得た。その後、10月末から11月初旬にかけ、立地自治体である薩摩川内市の議会と市長、鹿児島県の議会と県知事が同原発の再稼働に同意した。
■川内では再稼働差し止めの判決も
しかし、これですぐに再稼働できるわけではない。設置変更許可を受けた後は、原発の詳細な設計を示した工事計画と、災害防止対策を定めた保安規定の審査で、それぞれ規制委の認可を受ける必要がある。そして最後に原子力規制庁の検査官立ち合いによる使用前検査を経て、再稼働の運びとなる。
九電は現在、工事計画と保安規定を再補正しており、規制委への提出を終えるのは、2015年の年明けとなりそうだ。その審査にどれくらいかかるかは未定。また、安全対策の工事については、大部分が大震災後に自主的に実施して完了しているとはいえ、「まだ若干残っている状態」(九電)で、どの程度の時間がかかるかも言えないという。
使用前検査にしても最低1カ月はかかる見通し。「不具合が見つかれば、工事をやり直す可能性があり、数カ月以上かかる場合も想定される」(原子力規制庁の担当者)。そのため、再稼働の時期は早ければ2015年3月ごろだが、大幅に遅れる可能性もある。
再稼働第一号と目されている川内原発。だが、審査手法や避難計画には批判も多い
審査や再稼働の妥当性に疑問の声も根強い。川内原発の審査で焦点となったカルデラ噴火の影響に関して、日本火山学会の専門家は、巨大噴火の前兆把握が可能とする前提に立った規制委の審査を批判している。原発30キロメートル圏内の自治体が策定する緊急時の避難計画は、いまだ多くの不備が指摘され、規制委の審査対象外であることも問題視される。
また、川内原発から最短5.4キロメートルで、市民の半数以上が再稼働に反対署名している、いちき串木野市の議会は、同市を地元合意の範囲に含めるよう要求。鹿児島県の伊藤祐一郎知事は地元同意の範囲を、「(九電と安全協定を結んだ立地自治体である)県と薩摩川内市で十分」と繰り返し述べているが、法的根拠はない。再稼働のハードルを上げることになる地元範囲の拡大については、国も判断を避けている。
一方、周辺住民らが再稼働差し止めの仮処分を申請しており、鹿児島地方裁判所の判断によっては再稼働できない可能性も残る。
■高浜は地方選の争点避け、地元合意を後回し?
川内の次に審査が進んでいるのが、関西電力の高浜3、4号機だ。関電は2014年12月1日に設置変更許可申請の補正書を再提出。同月17日には、規制委が新規制基準に適合しているとする審査書案を了承した。その後、1カ月間のパブリックコメント募集(意見公募)を経て、審査書が確定すれば実質合格となる。
ただ、その後も地元合意や工事計画および保安規定の認可手続きに加え、追加の安全対策工事も残る。基準地震動(想定する地震の揺れ)を引き上げた結果、関電は約500カ所に上る耐震補強工事や取水口の防潮ゲート、放水口の防潮堤などの工事を行っており、完成時期は未定。「(2015年の)夏までに動かしたい」(八木誠社長)意向だが、なお流動的だ。
2015年4月には、立地自治体である高浜町の議会や福井県の議会、知事の改選を含めた、統一地方選を控えている。高浜原発から30キロメートル圏内で、再稼働に慎重論が強い京都府や滋賀県でも議会選がある。再稼働問題が選挙の争点となるのを避けるために、地元合意手続きが選挙後に先送りされる可能性がある。
高浜3、4号機に関し、関電は「再稼働時時にMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料を装荷したい」(八木社長)としており、使用済み燃料を再利用するプルサーマル発電に対し、周辺自治体を含めて懸念の声が高まる公算もあろう。
そのほかでは、基準地震動と基準津波(想定される津波の高さ)の了承を得た九電の玄海3、4号機が審査の終盤に入っている。ただ、九電は川内の早期再稼働に向けた作業を優先しており、玄海の再稼働は2015年後半以降だろう。
関電の大飯3、4号機は、2014年10月末に基準地震動の了承を得た。だが、まだ基準津波などの審査が残っており、耐震補強工事も必要となるなど、再稼働は高浜以上に遠い。四国電力の伊方3号機も、12月12日に基準地震動が了承され、大きな山は越えたが、設備の安全対策などの審査が残っており、終了時期は未定。再稼働はやはり2015年後半以降か。
審査申請第一陣だった北海道電力の泊1〜3号機については、いぜん審査終了のメドが立たない。赤字が続く北電は2014年11月から電気料金の再値上げを実施。その前提として泊の再稼働時期を、3号機が2015年11月、1号機が2016年1月、2号機が同3月と想定している。が、焦点の基準地震動策定が遅れており、さらに後ずれする公算もある。
■福島と同じBWR型は要件厳しい
それ以外の審査中の原発は、2015年中の再稼働が見通せない情勢だ。福島第一と同じ沸騰水型原子炉(BWR)であり、審査先行組の加圧水型原子炉(PWR)に比べ、フィルター付きベント設置義務化など再稼働時の要件が厳しいことも、その一因となっている。
東京電力の柏崎刈羽原発6、7号機は地質の審査が難航しており、審査終了のメドは立っていない。地元の泉田裕彦・新潟県知事も、福島事故の総括が不十分として、再稼働は論外との姿勢を崩していない。
2014年12月16日に新規制基準適合性審査を申請した、電源開発(Jパワー)の大間原発は、建設中(工事進捗率は約4割)の原発として初の申請。また、世界初のフルMOX(MOX燃料100%使用)を計画しており、安全性に対する懸念も強い。30キロメートル圏内に位置する北海道函館市は国とJパワーを相手取り、建設停止を求める訴訟を東京地裁に起こしている。規制委の審査と合わせ、今後の動向が注目される。
関電は老朽化した高浜1、2号機の運転延長を狙っている(写真は電事連会長と関電社長を兼ねる八木氏)
その一方で、原発再稼働とともに今後の焦点となるのが、老朽原発の廃炉だ。改正原子炉等規制法では、原発の運転期間は原則40年と定められたものの、規制委が認めれば、1回に限り最長20年延長できる。廃炉か運転延長か。その判断を真っ先に迫られているのが、2015年中に運転40年以上となる、高浜1、2号機、美浜1、2号機、玄海1号機、島根1号機、敦賀1号機の計7基である。
運転延長をするには、原子炉の圧力容器や格納容器などの欠陥の有無を電力会社自身が調べる特別点検を行ったうえで、運転開始から40年となる運転期間満了日の1年〜1年3カ月前に規制委へ申請する必要がある。
制度導入時点で運転37年超だった7基については、特別に運転期間満了日が2016年7月7日に設定され、各電力会社は2015年4月8日〜7月8日までに規制委へ申請しなければならない。規制委は運転期間満了日までに運転延長の認可を判断するが、その審査基準として新規制基準適合性審査に合格し、工事計画の認可を受けることを求めている。
関電の場合、2014年12月1日、高浜1、2号機の運転延長申請に向けた特別点検に着手した。記者会見で八木社長は「安全確保のため、必要な対策を実施できるメドがつき、経済性があると見通せた」と説明。高浜1、2号機は、発電出力が各82.6万キロワットで老朽原発としては規模が大きく、安全対策費用などを考えても、再稼働すれば競争力は十分と見た模様だ。
■老朽原発の審査は難燃性ケーブルに焦点
しかし、老朽原発の審査について規制委の田中俊一委員長は、「新しい炉ではないので、簡単ではない」と述べている。「原則廃炉」を骨抜きにするような甘い審査をすれば、規制委自身が大きな批判を浴びることになる。老朽原発の新規制基準適合性審査で焦点となるのが、電気ケーブルの火災対策だ。
1980年以前に運転を始めた古い原発は、燃えやすい材質の電気ケーブルを使っている。だが、新規制基準は難燃性ケーブルの使用を義務化した。原発のケーブルは、一基当たり総延長数百キロメートル以上もあるといわれ、これをすべて交換することになると、膨大なコストと期間がかかり、再稼働しても採算が厳しくなる。
関電は高浜1、2号機について、「延焼防止剤を塗布しており、独自の実証実験でも、新規制基準の求める難燃性ケーブルの要件は満たしたと考えている」(広報室)という。しかし、規制委が審査でどう判断するかは予断を許さない。運転延長に「経済性がある」とした関電の判断も、「ケーブルの取り替えは想定していない」(同)。ケーブル交換を要求されれば、運転延長を断念せざるを得ないだろう。
他の5基は対応をまだ検討中。いずれも高浜1、2号機に比べ出力が小さく、競争力は劣る。そのため、各社が廃炉を決断する可能性は、比較的高い。中国電力は島根1号機を廃炉にしても、その約3倍の出力を持つ島根3号機がほぼ完成しており、廃炉への抵抗が少ないと見られる。九電にしても、川内1、2号機と玄海3、4号機の再稼働が近づいており、玄海1号機の廃炉は許容しやすいはずだ。
ケーブルに対する規制委の判断の試金石として、電力会社が注目しているのが、2014年5月に開始された、日本原子力発電・東海第二原発の新規制基準適合性審査だ。
東海第二原発は1978年に運転を始め、これまで規制委に審査を申請した原発の中では、最も古い。ケーブルは可燃性だが、現在、新たに延焼防止剤を塗布する方向で、その実証実験を行っている。今後、規制委が有効性をどう評価するかによって、老朽7基の対応も変わる可能性がある。
■一括処理から10年程度の分割へ
また、同時に電力会社が関心を寄せるのが、廃炉会計の見直しだ。原発を廃炉にする場合、かつては資産の残存簿価は一括減損処理(特別損失)してきた。が、その会計規則を見直し、損失の一部を10年程度に分割し、減価償却費として計上できるようにするものである。経済産業省は2013年10月から省令改正で施行したが、2014年末には対象資産をほぼ全体まで増やす方針を決め、14年度中の施行を予定している。
一括特損処理になると、電力会社の経営への打撃が大きいが、減価償却なら電気料金の原価に算入され、利用者に転嫁される。2018〜2020年に実施される、発送電分離(規制料金撤廃)後は、送電会社の託送料金へ上乗せすることで、すべての利用者に転嫁される方向だ。
経産省の試算では、老朽7基を廃炉にした場合、電力各社の損失額は1基あたり200億円程度とされる。これが決まれば、電力会社は負担が軽減され、廃炉を決断しやすくなるのは確か。とはいえ、会計原則を変えてまで廃炉円滑化を図ることには、妥当性に疑問の声も上がっている。
廃炉に関しては、運転40年超の老朽原発とは別に、活断層調査の対象となっている原発の動向も注目される。特に日本原電の敦賀原発2号機については、原子炉建屋直下の断層を活断層と認定する報告書案を規制委の有識者会合が2014年11月にまとめており、廃炉となる可能性が高まっている。日本原電側は「検証が不十分」として依然反発しているが、結論は覆りそうにない。
日本原電は電力会社の共同出資による卸電力会社で、原発3基を保有しているが、運転40年超の敦賀原発1号機、地元の反対が根強い東海第二原発でも、再稼働のメドが立っていない。他社の廃炉も請け負う廃炉専業会社化など、会社のあり方を抜本的に見直す必要性も指摘されている。
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