01. 2014年12月29日 08:41:09
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【第1回】 2014年12月29日 ダイヤモンド・オンライン編集部 原発推進派が反対派を押し切った2014年 2015年は原発再稼働と電力改革が本格化 ――エネルギー業界この1年を振り返る 2014年のエネルギー業界の動きは、「安倍政権の原発政策が、反対派をジリジリと押し切り、再稼働への道筋を確実のものとした1年」と表現できるのではないだろうか。この1年のエネルギー問題を巡る流れを、DOLに掲載した記事を軸に整理し、来るべき15年を展望する。(ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)年初の都知事選で 原発が争点に 思い起こすと、2014年最初のエネルギーに関する話題は東京都知事選だった。2013年12月に医療法人「徳洲会」から5000万円の資金を受け取っていた問題で猪瀬直樹氏が都知事を辞任。その後、2014年1月23日に公示された都知事選で、原発政策が争点になったのだ。(『都知事選は原発の是非を問う選挙になった!』) 電力の大消費地ではあるが、立地自治体ではない東京都の首長選挙で、原発を選挙の第一の争点することを疑問視する声もあった。そもそも原発反対派のデモや発言は急速に勢いを無くしていた。そんななかで、一気に争点に浮上したきっかけは、元首相の二人だった。 小泉純一郎元首相が細川護煕元首相を担ぎ上げ、脱原発を掲げて選挙戦を展開するとぶち上げたのだ。呼応するように、他の候補者もエネルギー政策のポジションを表明。元厚生労働相の舛添要一氏や元日弁連会長の宇都宮健児氏なども原発政策に関して訴えた。 ちょうどこの時、安倍政権は猪瀬直樹氏が都知事を辞任する直前に「エネルギー基本計画」の基本原案をまとめたところだった。原案では原発を「重要なベースロード電源」であるという文言が並び、原発反対派からは不満の声がくすぶっていた。安倍政権にとっては、細川・小泉の勢力は、原発反対派という寝た子を起こすことになるかもしれなかった。(『エネルギー基本計画に原子力をどう位置づけるか 原案の重要ポイントと解決すべき三つの課題――澤昭裕・21世紀政策研究所 研究主幹、国際環境経済研究所所長』) 翌年の2014年春にも正式に閣議決定をする予定だったため、安倍政権は警戒感を露にした。安倍首相は外遊先で「原発などのエネルギー政策は(個々の自治体ではなく)国全体の政策」と釘を刺すコメントを出したほどだった。 結果は自民党が全面的にバックアップした舛添氏が当選。脱原発が日本全体のメインストリームになることは、2012年の衆院選、2013年夏の参院選に続き、またも実現されることはなかった。 2014年4月、安倍政権はエネルギー基本計画を正式に閣議決定。もっとも注目されていた「原発が日本のエネルギーの何割を担うのか」というエネルギーミックス(最適な電源構成)は明記されていない。しかし、安倍政権の掲げる「安全が確認された原発から再稼働させる」という方針を粛々と進める流れが、確実なものとなったと言える。 焦りから再編へ 動いた電力会社 一方で、電力会社の経営状況という面では、2014年は深刻さを増した年だった。原因は、原発が動かせないために稼働させている火力発電用の燃料購入。これがコスト増に直結し、経営を圧迫している。電力会社は電気料金の値上げを経済産業省に申請するなど、なんとか経営状況の好転を目論むが、国や世間からの「本当に無駄を省き、最後の手段としての料金値上げ申請なのか」という厳しい目に晒されており、そう簡単にはいかない。 とりわけ、東京電力は福島第一原子力発電所の事故処理や被災者救済への費用負担も抱えており、このことは2014年初頭に専門家からは指摘されていた。(『原発と東電 電力業界の“ヤバい”状況のツケは国民に回る 元凶の原発と東電問題解決へ乗り越えるべき課題――安念潤司・中央大学法科大学院教授、弁護士』) 行き詰まり、苦境に喘ぐ電力会社の声は、廃炉検討や再編などの形で表面化した。関西電力は稼働開始から40年以上経つ美浜原子力発電所1、2号機の廃炉を検討しているという。これは経済産業省とのある種の駆け引きの産物。老朽化した原発の廃炉との引き換えに、他の原発の再稼働と料金値上げを認可してもらおうというのだ。(『原発再稼働と廃炉は表裏一体 関電廃炉検討に潜む国の思惑』) 再編という形では、東京電力と中部電力が火力発電新会社の設立で基本合意した。燃料部門の事業統合を進め、老朽火力発電所のリプレース(設備更新)も共同で取り組む。 火力発電を中心に据えた中部電力と、原発再稼働へのメドが立たず、成長分野へ賭けなければならない東京電力という2社の思惑が一致した形だ。両者の思惑には温度差があると言われているものの、業界が置かれた厳しい環境が、再編を後押ししていることは間違いないだろう。(『東電・中電が「火力新会社」で基本合意 廣瀬、水野両社長が見せた微妙な温度差』) 東京電力の福島第一原発の事故処理は、いまだに難しく、厳しい道のりの半ば。なかでも地下水が流れ込むことで増え続ける汚染水処理はもっとも頭の痛い問題。その解決策である、1〜4号機の周囲の地下を氷の壁で囲み、地下水を遮断する取り組みも、実際に凍らなかったり、地下に無数の配管が張り巡らされている原発プラント特有の複雑さがあったりと、越えなくてはならない難題がいくつもある。(『福島第1原発の地中に建設中 初公開された“氷の壁”の難題』) 再エネのFITは失敗 政策再考が急務 太陽光発電といった再生可能エネルギーは、原発に替わるエネルギーだということで大盛り上がりだったこの数年から、風向きが大きく変わった。 再生可能エネルギーの全量買い取り制度(FIT)を利用したメガソーラーの事業計画が乱立。メガソーラー事業者は実際に発電した電力を既存の電力会社の送電網に送り、売却する。有象無象のメガソーラー事業者たちが電力会社に接続申請をしたが、送電網がパンクしてしまうため、電力会社がメガソーラー事業の接続を拒否した。 この影響は甚大だった。FITで確実に投資回収が見込めるために、多額の借金を背負って設備投資をしたが、肝心の電力会社が接続を拒否したのだから、事業が成り立たない。国内の太陽光パネルメーカーにも、暗雲が垂れ込めている。 すでに「FITは失敗だった」という声が上がっており、国の再生可能エネルギー政策は、軌道修正が求められている。(『“太陽光バブル”で政策転換 死屍累々の国内メーカー』) 家計にのしかかかる負担 2015年の注目ポイントは 消費者である生活者には、容赦ない電気料金の値上げが強いられている。すでに震災前から10〜20%程度の値上げがされており、家計は大きな負担を強いられている。(『「電気料金再値上げ」は誰の責任か? 政治と行政の不作為が招く電力コスト高止まり』) 12月14日に投開票を終えた衆議院議員選挙では、安倍政権がまたもや圧勝。選挙戦ではエネルギー政策が大きな話題にはならなかったが、先に挙げたように電気料金は家計を圧迫し続けており、本来であれば争点になってもおかしくなかった。 2011年度から14年度までの累計で、12.7兆円にも上る火力発電用の追加燃料費がかかっていると経済産業省は試算を出している。これは消費税5%分にも上るというのだ。(『マスコミは“原発停止の悪影響”から逃げるな! 国富流出はすでに「消費税5%分、1日100億円」』、『ついに総選挙!5.2兆円の社会保障財源は断念 3.7兆円の燃料代“ダダ漏れ”は傍観』) 2015年はエネルギー業界にどのような動きを見せるのか。 原発再稼働へ向けた手続きが粛々と進むと見られる。九州電力川内原子力発電所1、2号機の再稼働について、立地自治体と鹿児島県知事の同意が11月に取れており、まずは川内原発が先陣を切りそうだ。(『川内原発再稼働で“ドミノ倒し”は起こるのか 九州電力に求められる「脱・お墨付き文化」』) また、電力会社ごとに分断されていた送電網を一体的に運用する広域系統運用機関が設立される。電力改革がいよいよ本格的に動き出す。 一方、中長期の日本のエネルギー政策の全貌が見えてくる年になるだろう。2014年に閣議決定された「エネルギー基本計画」で述べられていなかったエネルギーミックスが示される予定だからだ。この「エネルギー基本計画」については、曖昧だという評価がある。この曖昧さがどれだけ明確になるのかが、最大の見どころだ。(『数字は明示されず核心議論は剥落 安倍内閣のエネルギー政策の問題点―― 一橋大学大学院商学研究科教授・橘川武郎』) http://diamond.jp/articles/-/64440
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