04. 2014年12月19日 11:52:21
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大前研一ニュースの視点〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━原子力政策・原発再稼働問題・太陽光発電〜現実的な数値に目を向けた冷静な対処が必要 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 原子力政策 被曝限度引き上げ検討 原発再稼働問題 高浜原発3、4号機 安全審査合格内定へ 太陽光発電 電力大手の受け入れ容量 ------------------------------------------------------------- ▼ 放射線被ばくに対して、日本は神経質過ぎる ------------------------------------------------------------- 原子力規制委員会は10日、原発事故の発生時に現場で緊急対応する作業員の放射線への被曝限度を、 現行の100ミリシーベルから、250ミリシーベルトを軸に引き上げる方向で検討に入ったとのことです。 すでに250ミリシーベルトの被曝量を超えている人が、東電の関係者には数十人以上はいるはずです。 その人たちは今回の「引き上げ」対象者ということになるわけですが、 もっと重要な議論すべきことがあります。 それは、そもそも「250ミリシーベルトの被曝量で安全(大丈夫)なのか?」ということです。 被曝量の多寡は発がんリスクとの関係性で判断できますが、 例えば200ミリシーベルトレベルは「野菜不足」「受動喫煙」と同レベルで、 200〜500ミリシーベルトでも「運動不足」「肥満」「激痩せ」などと同レベルです。 そう考えれば、250ミリシーベルトがどのような量なのか判断しやすいでしょう。 また日本の場合には、特に100ミリシーベルト以下の基準に問題があります。 法律上、一般人の線量限度は「1ミリシーベルト/年」ですが、 自然界からの放射線量だけでも「2.4シーベルト/年」に達します。 X線CTを受ければ、1回あたり6.9シーベルトになります。 小学校の校庭で、1ミリシーベルト以上の放射線量が検出されたと大騒ぎして、 数千億レベルの予算を割いて除染をしていますが、はっきり言って意味がありません。 放射線は一様に広がるのではなく、ピンポイントで溜まる特徴があり、 そこがホットスポットになります。 そこだけを集中的に対策すれば良いのに、それすらもわかっていません。 東京大学の某教授の発言を引き金に、このような異常に神経質な対応をすることになったのですが、 私に言わせれば、これは民主党政権が残した負の遺産の最たるものです。 もっと現実的な数値に目を向けて、冷静に対処するべきだと思います。 ------------------------------------------------------------- ▼ 全ての原発を停止する必要があったのか? ------------------------------------------------------------- 関西電力の高浜原子力発電所3、4号機が、 再稼働に向けて原子力規制委員会による原発の安全審査の 合格内定を年内に得られる見通しになりました。 九州電力の川内原発に続く審査合格の2番手となります。 また、原子力規制委員会は12日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所6、7号機の 事故対策や設備に関する現地調査を開始しています。 ようやく、原発の再稼働についても冷静に現実的に検討できるようになってきました。 福島第一原発の事故以降、最初は何においてもおっかなびっくりの対応で、 「とにかく全てのことはNO」という判断しかしていませんでした。 福島第一原発の事故を受けて、日本は他の原発も停止しました。 これは国にとっても非常に高い代償を払う結果になりました。 他国の事例で見れば、チェルノブイリ原発事故後のウクライナでも、 スリーマイル原発事故後の米国でも、その他の原発は停止させていません。 日本の対応には異常なアレルギーを感じますし、もはや理不尽なレベルです。 同じような原発事故を起こさない対策をした上で、冷静に対処するべきです。 柏崎刈羽原発の6、7号機の事故対策については私も見たことがありますが、 あれだけの対策をしていれば福島第一原発と同じような状況になっても大丈夫なはずです。 地元の支持が得られるかどうかがポイントですが、 地元が前向きならば、原発再稼働に向けて進むべきでしょう。 それぞれの原発の事故対策よりも、 むしろ私が懸念しているのは国としてやるべきことが残っていることであり、 国の組織運営体制に不安を感じます。 民主党政権が残した負の遺産のもう1つが、再生可能エネルギー施策です。 九州電力など大手電力5社の太陽光発電の受け入れ容量が国の認定した 再生可能エネルギー事業者の計画の半分程度にとどまることがわかり、 特に九電、東北電力で大幅に不足する見通しとのことです。 民主党政権は、2020年までに再生可能エネルギーを20%にすると提案し、 風力発電、太陽光発電による電力の高値買付けを義務付けました。 当時から私は「リスクが高い」と指摘していましたが、 民主党政権は事態を甘く見ていたということでしょう。 再生可能エネルギーは操業度が安定しないのが特徴です。 設計能力を100とすると、太陽光発電の平均値は12、風力発電は19です。 100発電されるときもあれば、12、19のときもあれば、場合によっては0のときもあるかも知れません。 水力発電や地熱発電は比較的安定していますが、その他の発電方法では変動幅が激しすぎるのです。 そのような状況にも関わらず、再生可能エネルギーによって大量の電力を生み出しても、 受け入れるグリッド(送電網)も整備されていなければ、電気を貯めておく蓄電池もありません。 今回は電力会社が受け入れを拒否したということですが、 他にも問題は山積しています。 民主党政権によるお粗末な政策だったわけですから、 修正するのが当たり前のことだと私は思います。 --- ※この記事は12月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの 内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています
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