08. 2014年12月15日 06:05:37
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石川和男の霞が関政策総研 【第35回】 2014年12月15日 石川和男 [NPO法人 社会保障経済研究所代表] 関西経済にとって久々の朗報となるか!? 高浜原発再稼働効果は「年間1800〜2200億円」 安倍政権大勝で 原発正常化進むか 昨日の第47回衆議院議員総選挙で与党が大勝した。安倍政権がこれまで進めてきた政策や、今後進めようとしている政策が、一応、国民の信を得たことになる。社会保障財源については、消費増税時期を2017年4月にすることは既定路線となり、集団的自衛権の行使に係る関連法案の提出も現実味を帯びる。多くの重要課題が前に進み始めることになるだろう。 もう一つ、内政面での最重要課題がある。それはエネルギー政策だ。なかんずく、『原子力発電の正常化』が切に望まれている。 先週12日の日本経済新聞朝刊1面では、「原発安全審査、高浜、年内に合格内定」と題する記事が掲載された。そこでは、関西電力・高浜原子力発電所3・4号機(資料1)について、「再稼働に向けて原子力規制委員会による原発の安全審査の合格内定を年内に得られる見通しになった」と報じられた。 (出所:原子力規制委員会HP) 2011年3月11日の東日本大震災による東京電力・福島第一原発事故が起きて以降、日本全国の原発が停止に追い込まれている。関電は美浜・高浜・大飯の3原発を持つが、いずれも現在は停止したまま。それに伴う火力燃料費の負担増で、2014年3月期まで3期連続の最終赤字に陥っている。
関西電力は、2013年春に料金値上げを実施した。値上げ幅は、家庭向けなど規制部門で9.75%、産業向けなど自由化部門で17.26%。これは、大飯3・4号機の稼働継続と、2013年7月の高浜3・4号機の再稼働を前提としている(資料2)。だが、いずれも稼働できない状態が続いたため、その後も赤字が続いているわけだ。 この状態が今後も続くと、料金再値上げも免れない。関電に関しては、再値上げに関する報道が後を絶たない。直近では今月6〜7日、一部の報道機関で関電のそうした報道がなされた。関電は翌8日に、「再値上げに向けた具体的な検討を行っている事実はない」旨の発表をした。だが、そうした報道が何度もなされてきていること自体、原発停止継続による関電の経営状況の深刻化が窺われる。 (出所:経済産業省資料のp8) 拡大画像表示 高浜原発再稼働観測で 株式市場も好感
冒頭の日経新聞報道にあるように、原子力規制委員会の安全審査について年内に合格が内定したとしても、実際に高浜原発が再稼働するのは、諸手続などの期間を勘案すると、もっとも早くて年度明けの4月になるであろう。 関電の現在の料金水準は、高浜原発3・4号機の再稼働と大飯原発3・4号機を前提としている(資料2)。高浜再稼働だけでは黒字転換は望めないし、大飯原発の再稼働は未だ見通し立たずのままだ。料金再値上げが完全に回避できるかどうかはまだわからない。 とは言え、今月12日の日経報道の旨は、関電の需要家や関係者にとって、ひいては関西の経済・社会にとっても、本当に久々の朗報ではないだろうか。株式市場も好感した。関電の株価は2013年10月以来、約1年2ヵ月ぶりの高値を付けた。株価が高値を付けるということは、株主が利益を得ることはもちろん、投資対象である事業者の経営状況が良好であること、あるいは好転することへの投資家の好感を示す。 おカネを出そうという人に好感を持たれることは大事なことだ。それによって経済が回ることに繋がる。経済が回れば社会も潤う。こんな当たり前のことが、原発問題の前では忘れ去られてしまいがちだ。“原発稼働=危険、原発停止=安全”という奇妙な風説が蔓延しているからであろう。 しかし、実際はそうではない。福島第一原発事故は、原子炉が停止している時に大津波に襲われたことで起こった事故であり、稼働中の事故ではない。重要なことは、稼働(発電)しているか停止しているかではない。核燃料の管理なのだ。この辺りのことは、今後とも経済産業省や原子力規制員会など政府関係機関は、これまで以上に丁寧に説明していく必要がある。 再稼働効果は 最大で2250億円 ではここで、高浜原発3・4号機が2015年4月に再稼働すると仮定した場合に、関電経済社会にとってどのような効果があるのか、一つの試算をしておきたい。要するに、高浜原発3・4号機が稼働することによって、原発停止の代替として稼働している火力発電所が停止することになるが、それによって火力燃料費・購入電力料の負担をどのくらい削減できるか、ということだ。 これは、高浜原発3・4号機の再稼働による追加燃料費の削減そのものだ。いわば、『再稼働効果』であり、海外資源国への流出を止めて国内で循環させることのできる国富の規模である。 現行では、原発稼働期間は最長13ヵ月となっている。そこで、再稼働開始の初年度2015年度と、次年度2016年度以降に分けて考えてみた。結論から言うと、次の通りとなる。 ◎2015年度……再稼働効果は、年間2250億円 ◎2016年度以降……再稼働効果は、年間平均1800億円〜2000億円 試算の根拠については、以下の通りである。各データの出所は、先の料金値上げ時の関係資料(資料3)などを参照されたい。以上は取り急ぎの私の試算であるので、関電や経産省におかれては、より精度の高い試算を早急に示されたい。 (出所:関西電力資料のp8) 拡大画像表示 (1)2015年度
3号機(87万kW)、4号機(87万kW)ともに12ヵ月稼働するので設備利用率は100%となるので、これらによる原子力発電電力量と核燃料費は次の通り。 ○原子力発電電力量 = (87万kW+87万kW)×24h×365日×設備利用率100% = 152億4240万kWh ○核燃料費 = 0.68円/kWh × 152億4240万kWh ≒ 104億円 この「152億4240万kWh」の原子力発電で代替する火力燃料費・購入電力料については、発電単価の高い順に抽出することが合理的であり、@購入電力料のうち「地帯間購入」の全部8億kWh(203億円)と、A火力のうち「石油系」の一部144億4240万kWh(2152億円(☆1))となる。 ☆1 :2152億円の根拠 代替される「石油系」燃料費 = 14.9円/kwh × 144億4240万kwh ≒ 2152億円 以上のことから、原子力発電による火力燃料費・購入電力料の削減効果は、 (203億円 + 2152億円) − 104億円 ≒ 2250億円 (2)2016年度以降 現行では、3号機(87万kW)、4号機(87万kW)ともに13ヵ月周期で定期検査のために稼働を停止する。3号機(1985年運転開始)、4号機(1985年運転開始)ともに、寿命40〜60年とすると、いずれも廃炉時期まで長期間利用可能。 そこで、設備利用率の仮定として、最低ラインに関しては震災前5ヵ年(2006〜2010年度)の平均の設備利用率(80.18% ☆2)に、最高ラインに関してはいずれ稼働率が高められる可能性を考慮して欧米諸国並みの90%と置いた。 ☆2:関西電力HPの「原子力発電所の設備利用率の推移」のうち、高浜発電所3号機・4号機の設備利用率から算出。 こうした仮定の下での原子力発電電力量と核燃料費は次の通り。 ○原子力発電量= (87万kW+87万kW)×24h×365日×設備利用率〔80.18%〜90%〕 = 122億2136万kWh 〜 137億1816万kWh ○核燃料費 = 0.68円/kWh × 〔122億2136万kWh 〜 137億1816万kW〕 ≒ 83億円 〜 93億円 この「122億2136万kWh〜137億1816万kWh」の原子力発電で代替する火力燃料費・購入電力料については、発電単価の高い順に抽出することが合理的であり、@購入電力料のうち「地帯間購入」の全部8億kWh(203億円)と、A火力のうち「石油系」の一部114億2136万kWh〜129億1816万kW(1702億円〜1925億円(☆3))となる。 ☆3:1702億円〜1925億円の根拠 代替される「石油系」燃料費 = 14.9円/kwh×〔114億2136万kwh〜129億1816万kW〕 ≒ 1702億円 〜 1925億円 以上のことから、原子力発電による火力燃料費・購入電力料の削減効果は、 (203億円+〔1702億円〜1925億円〕)−〔83億円〜93億円〕 ≒ 1822億円 〜 2035億円 http://diamond.jp/articles/-/63719 |