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20141206 R/F #100「小出裕章ジャーナル」【福島原発の今 使用済み核燃料の取出し作業はなぜ遅れているのか?】
文字起こし
福島原発の今/使用済み核燃料の取出し作業はなぜ遅れているのか?「やればやるだけ困難が増えてくるということが東京電力も国も身に沁みて分かってきたという事だと思います」〜第100回小出裕章ジャーナル
http://www.rafjp.org/koidejournal/no100/
2014年12月06日 ラジオフォーラム
湯浅誠:
ラジオフォーラムも、もう100回目ということで本当にお世話になりまして、ありがとうございます。
小出さん:
もうそんなになるんですか?
湯浅誠:
そうなんです。
小出さん:
はい、お世話になりました。
湯浅誠:
私は5回に1回しか喋ってませんけど、小出さんは100回喋ってるってことですよね?
小出さん:
そういうことになるわけですね。驚きです。
湯浅誠:
100回来たからってわけじゃないんでしょうが、今月と来月の12月と1月の小出裕章ジャーナルは、特集シリーズでお送りしようと思っておりまして。
小出さん:
そうですか、はい。
湯浅誠:
12月は「福島原発の今」。そして、1月はほんとそもそも論ですが「原発はなぜいけない?」ということについてお伝えしていきます。それで、今月は「福島原発の今」ということなんですけれども、今日のテーマは「使用済み核燃料の取り出し作業はなぜ遅れているのか?」。
この間、1号機の核燃料取り出し作業が当初計画より大幅に遅れているという見通しを国と東京電力が明らかにした。
使用済み核燃料プールからの取り出しは2年、原子炉内で溶けた核燃料の取り出しは5年ずれ込む見通しで今後、中長期ロードマップを改訂する来春ぐらいまでに計画を固めるという話らしいんですが、「そもそも経験したことのないことの工程表って作れるのか」っていう感じがしますが。
小出さん:
はい。湯浅さんがおっしゃってる通りで、今現在進行していることは人類が経験した初めてのことなんです。
東京電力も国も、もともと事故が起こらないと言ってきたわけで、大変楽観的な思惑の下に原子力というものを進めてきました。
そして、事故が起きてからも、なんとか楽観的楽観的に行けないかという風に、彼らは思いながら対処しようとしてきたのですけれども、ことごとくやはり失敗してきたわけですし、今作ってあるロードマップも、彼らがこうあって欲しいという楽観的な見通しの下に作られた計画であって、決して実現できないのです。
湯浅誠:
今、見直した理由っていうのはなんか具体的にここが遅れてるってのがあるんですかね?
小出さん:
これまで3年8か月、9か月が経とうとしているわけですけれども、やればやるだけ困難が増えてくるということが、東京電力も国も身に沁みて分かってきたということだと思います。
放射能汚染水そのものにしても、何の対処もできないまま、今現在も海に漏れていってしまっている訳ですし、それを防ごうとして凍土壁というものをつくろうという計画は一応あるわけですけれども、それすらが全く上手くいきそうもないということで、これからほんとにどうしていいのか分からないという状態になってしまっています。
湯浅誠:
核燃料の取り出しが5年ずれ込む見通しだっていうことですが、要するに、どこにあるかも分からない。どうやって取り出せばいいかもわからないものを5年ずれ込むで済むかどうかも分かんないわけだけど、そういう計画を立てて銀行からお金を借りて、工事を回してっていうそのフィクションですかね。
そのフィクションが回ってる限りは、実は困らないのでやっちゃってるってことですかね?
小出さん:
そうです。事故が起きてこのかた、こんな酷い事故を起こしているのに誰ひとりとして責任を取っていないのです。
これからのロードマップも成功しなくても、誰も責任を取らなくていいわけですし、東京電力お金がかかると言えば、国がそれを補助するということになってるわけですし、東京電力も倒産しない。
原子力をつくるために儲けてきたゼネコンもますます儲かるという構図になっているわけです。
湯浅誠:
今後はずれ込むと言っても、廃炉のプロセスっていうのはあるんでしょうけども、なんか建屋開けるみたいな1号機は言ってますよね? カバーの作り直しですか?
小出さん:
はい。
湯浅誠:
プロセスとしてはどう進んでいく?
小出さん:
そうですね。まず、使用済み燃料プールの件をちょっと聞いて頂きますが、一番問題だったのは4号機の使用済み燃料プールでした。
建屋自身が使用済み燃料プールが埋め込まれている階まで爆発で吹き飛んでしまっていて、半分壊れた建屋の中に使用済み燃料プールが宙づりのような状態になっていました。
そして、そのプールの中には事故当時、4号機は定期検査だったために、炉心にあった燃料も全てがプールの底にあったのですが、それが崩れ落ちるようなことになれば、もう東京すら避難しなければいけないと、当時、原子力委員会に委員長だった近藤駿介さんが報告を出したというぐらい危機的な状態だったのです。
なんとか、そこを早めに始末をしなければいけないということで、昨年11月から東京電力が隣にある共用燃料プールという所に使用済み燃料の移送を始めまして、11月4日にようやく作業を終えました。
私は、ほんとにホッとしました。ですから、この件に関して言う限りは、東京電力はよくやったと私は思います。
ただし使用済み燃料プールは、1号機にも2号機にも3号機にもあります。そちらの方は、建屋の内部が猛烈に放射能で汚れていますので、近づくことすらができないわけです。
ただし、どうしてもやらなければいけません。使用済み燃料プールの中にある燃料だけは、なんとしても移動させなければいけませんので、これから1号機、3号機、2号機の順番でしょうか?
とにかく、やることになると思います。そのためには、1号機は今現在カバーを作ったわけですが、そのカバーは撤去するしかないだろうと思います。
2号機の原子炉建屋はまがりなりにも形が残っているのですが、それも撤去する以外には作業を進めることができないと思います。
そのために、一体何年の時間がかかるんだろうか? 仮に、撤去作業を始めることができるようになっても、それから撤去が終わるまで何年かかってしまうんだろうか?と、私は心配です。
でも、それをやらなければ、溶け落ちた炉心、デブリと呼ばれてる物の取り出しにも全く手が付けられないわけですから、一歩一歩進めるしかないと思います。
湯浅誠:
なるほど。なんか、お話伺ってるとあれですね。安全神話だけじゃなくて、廃炉にまつわるもろもろもフィクションというか神話に満ちてる感じですね。
小出さん:
はい。要するに、東京電力や国がとにかく少しでも都合のいいように、都合のいいように考えて、工程表等を作ってきたわけですけれども、そんなもの実現できる道理がありませんので、これから困難はますます大きくなっていくと思います。
湯浅誠:
そういうものなのかっていう感じもありますね。
小出さん:
はい。
湯浅誠:
どうもありがとうございました。
小出さん:
ありがとうございました。
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