http://www.asyura2.com/14/genpatu41/msg/384.html
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今回は、原子炉の水中に潜って検査、修理をするダイバーについて調べてみました。
原発ダイバーの仕事は、日本人は法律の規制上できず、密かに外国、主に米国の商業ダイビング会社に
作業を依頼しているようです。
原子力業界にとっては、もっとも知られたくないことの一つでしょう。
検索しても、日本語はもちろん英語による情報もあまり出てきません。
ダイバーの数も少なく、健康被害が起きても偶然の一言で済まされているのでしょう。
以下要約を載せますが、英語が得意な方はぜひ原文を読んでみて下さい。
原子炉の水中作業を専門に請け負う会社はいくつかあるようです。
これは米国ニュージャージー州の会社。セーラム原発での水中作業のビデオが紹介されています。
「Dryden Diving Company, Inc」
http://www.drydendiving.com/nuclear.htm
これはスキューバ・ダイバー向けウェブサイトに掲載されている原発ダイバーの仕事の紹介。
「Careers in Nuclear Diving: Helping to Ensure Power Plants Stay Safe」
(by Melissa Gwaldis, Scuba Divers Travel Network 2013/1/21)
http://www.sdtn.com/dive_resources/technical_articles/careers-nuclear-diving-helping-ensure-power-plants-stay-safe#.VG5vUWcpFps
-----(要約ここから)-----------------------------
年収は3万米ドルからスタート、熟練ダイバーは10万ドル以上。
X線撮影は約40ミリシーベルト、一般人は年間300ミリシーベルトほど被ばくする。
ダイビング作業は、年間20ミリシーベルト以下が目標、政府の最大規制値は50ミリシーベルト。
商業ダイバーとしての訓練が必要。微妙な作業が必要でストレスが多い。
平均水温は38℃。高水温の場合は、冷却機能のあるスーツを着る。
スキューバ・タンクを背負わず、プール脇に置いたポンプからパイプを通して空気と冷却水を送る。
ダイビングスーツは総重量約45キロ、レジャー・ダイビングの2倍の重さ。
いくつもの線量計を腕、ひざ、胸、足、背中、手に取り付け、リアルタイムで被ばく量を監視する。
作業は、ステンレス製管の交換、溶接、溶断、ボルト締めなど。
放射能を低減する目的で椅子を使用することもある。
作業後は、注意深く除染が行われる。
-----(要約ここまで)----------------------------
被ばく量はたいしたことがないように思わせるのは、原子力業界の共通点ですね。
これも原発ダイバーの解説。
「The Life of a Nuclear Diver」(by William L. Sheaffer, Diving heritage)
http://www.divingheritage.com/nuclearkern.htm
-----(要約ここから)-----------------------------
今日、原発では、テロ防止のため、厳しいセキュリティ対策が行われている。
心理テスト、FBIによる犯罪歴調査、麻薬使用チェック、そして長期に渡る作業者教育。
プラント内にはいるのも、何重ものチェックにパスしなければならない。
作業場所により、何時間もの打ち合わせが、技術者、放射線管理者、依頼者と行われる。
ダイバーは作業位置、詳細、水温、水深、放射線源について十分な理解が必要。
35℃を超えると、ダイバーは急速に疲労する。
通常は水温が下がるまで待てないので、49℃まで作業できる冷却機能付きの装備を使う。
線量計が、足、胸、腕、頭に装着され、ワイヤレスにより常時被ばく量を監視する。
ダイバーと一緒に別の線量計が沈められ、作業場の占領を監視する。
作業場の線量が高ければ、汚染物質をポンプで吸い上げたり、鉛の覆いで遮蔽する。
作業後は、器具、そして水で除染される。水と足は汚染されやすいのでとくに念入りに行なう。
長年、原子力産業と商業ダイビング会社は緊密に協力してきた。
プールの水を抜くのはコストがかかり、被ばく量も増えるので、ダイバーの出番となる。
作業内容は、使用済み燃料プールのリラッキング、センサや移動カートの修理、溶接など。
燃料が装荷された原子炉の数フィート上方で作業することもある。
1日の稼動停止で1億円以上の損失があり、重要な任務である。
-----(要約ここまで)----------------------------
こちらはミシガン州D.C.クック原発訪問の記事。
「Swimming On The Hot Side
These elite nuclear divers are risking their lives to help save a troubled industry」
(by David Goodwillie, Popular Science 2012/3/27)
http://www.popsci.com/science/article/2012-03/swimming-hot-side?page=all
-----(要約ここから)-----------------------------
原子力業界は、原発ダイバーについては口が堅く、なかなか話そうとしないが、福島原発事故後、
安全性をアピールするためか、態度が少し軟化した。
ミシガン州D.C.クック原発のダイバー数名のうち、ひとりは数年前、28歳で甲状腺がんになったが、
がんになった原因はわからず、何と復職した。
日米で7年以上のキャリアのある同原発の女性ダイバーにインタビュー。
彼女は、電力会社とダイビング・チームのリエゾンとして安全管理を担当している。
ダイバーには3つの仕事がある、一つは川や湖の取水口を保守する「泥仕事」。
水が濁り視界も悪く、吸い込まれる危険があり、被ばく事故よりはるかに事故は多いという。
残り2つは、原発内での放射能汚染のある、そしてない場所でのダイビング。
最初から原発で働くわけではなく、商業ダイバーとして、船や桟橋の修理、橋やダムの点検、救命作業、
油田での仕事の経験がある人が多い。
取水の濾過施設でダイバーが流され、同僚が引き止め危機一髪だったこともある。
魚の大量発生で取水口が塞がり、運転停止に陥ったこともある。
明らかに語られないこともある。39年を超える老朽原発を安全に運転するのはより困難になっている。
健康問題については誰も語ろうとしない。
ダイバーに聞いても、取水口の仕事に比べれば安全と言うだけで、被ばくについては一切語らない。
大半の原発では、被ばく量は年間20ミリシーベルト、政府は50ミリシーベルトまで許容している。
しかし、これは目標値であり、それを越して作業を継続することも多い。
長期間に渡る健康への影響はわからない。
1日原発を止めると1億円以上の損失が出る。
水を抜くと放射能が遮蔽されず、より多くの労働者が被ばくするので、ダイバーの出番になる。
「緊急」という言葉は使わず、「高優先」と言う。
稼動停止期間に再訪問、原子炉と燃料プール間の水路で燃料を移動するためのカートの
ケーブル交換作業を見学。水温は33℃、一回のダイブで作業者は0.16ミリシーベルト被ばく。
多くはないが、この後、彼には何度ものダイブが待っている。
-----(要約ここまで)----------------------------
取水口作業や、penetrationと言われる、直浮上できない入り組んだところにはいるダイブのほうが
ずっと危険だ、と言ってごまかすあたり、原子力業界の欺瞞がよく表われていると思います。
組合もないごく小さな特殊な職業ですから、誰も仕事を失いたくなく、口を閉ざすのもわかりますが、
いったいどのくらいの健康被害が出ているのか、見当もつきません。
潜らない通常の原発労働者以上であることは明らかです。
次は、使用済み燃料プールで泳いだら致死量の被ばくをするかという質問について、図入りの回答。
「Spent Fuel Pool」 (What if?)
https://what-if.xkcd.com/29/
-----(要約ここから)-----------------------------
10−40時間は泳いでいられる。水温は25-35℃でお風呂より低い。
水中では7cm離れると線量は半分になる。
もぐって使用済み燃料に近づけば即死するが、離れていれば日常生活よりも被ばく量は低い。
燃料から析出する放射性物質はフィルタリングされ、水の純度は高いので問題ない。
2010年にスイスの原発で、あるダイバーがプールの底の部品をツール・バスケットに入れて引き上げた。
警報音は泡の音で聞こえなかった。
プールから出すと一斉に警報音が鳴り出したので、慌てて水中に沈めた。
この部品は4年も底にあって、非常に汚染されていた。
ダイバーは右手に大量の被ばく。部品を腰のベルトにでもはさんでいたら死んでいた。
バスケットに入れ水が遮蔽したので右手だけですんだ。
-----(要約ここまで)----------------------------
プールの水へ析出される放射性物質が完全に取り除けるはずもなく、この解説を信じる人はいないでしょう。
ダイバーを安心させるための安全神話と思ったほうがよろしい。
次も、実際にダイバーが大量被ばくした例。
「All Things Nuclear Fission Stories #18: Diving for Dose」
(by Dave Lochbaum, Union of Concerned Scientists 2010/11/2)
http://allthingsnuclear.org/fission-stories-18-diving-for-dose/
-----(要約ここから)-----------------------------
1982年、米国インディアン・ポイント原発使用済み燃料プールで、ダイバーが頭部に87ミリシーベルトも被ばく。
手違いで、プール内作業場所の近くに、ないはずの使用済み燃料が保管されていた。
水が濁っていて、ダイバーの視界は悪かった。
作業前チェックで線量計が異常な値を示したが、測定器ケース内にたまった湿気のせいだと勝手に判断し、
作業を中止しなかった。
以上3つのミスが重なって起きた事故。
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原発ダイバーは最下層の労働者がなるものと思い込んでいましたが、意外でした。
ダイビング学校に行ってライセンスを取得しなければいけないし、それなりの商業ダイビングの経験がないと
雇ってもらえません。何の資格もない日雇い労働者を単純作業のため雇うのとは違います。
D.C.クック原発の女性ダイバーのように、ある程度は出世する道もあるようです。さすが実力社会の米国です。
もっとも、ずっと健康でいたらの話ですが。
これから福島1-3号機の燃料取り出しのため、とんでもない高線量下での作業をさせられるのではないでしょうか?
それを考えると暗澹たる気分になります。
これらの記事を読んで一番ショックだったのは、燃料のある原子炉やプールでダイバーに作業させることです。
いくら水が放射線を遮蔽すると言っても極めて危険であり、間違って燃料に近づけば命を落とす可能性が高い。
本来なら作業員の安全確保のため、燃料はすべて共用プールなどに移動してから作業をすべきですが、
時間も金もかかるので絶対にやらない。
作業員は使い捨て、彼らの健康・命は犠牲にしても1円でも多く利益を上げたい、という原子力業界の非道さが
よくわかる話です。
そもそも法律に違反するので外国人労働者に作業させるというのも無茶苦茶な話です。
どこの国の人間であれ、日本国内で作業するのなら、危険を回避するために日本の法律、安全基準に
従わなければなりません。
下請け会社にすべて責任を押し付けて、電力会社は知らんぷりする。
現在1Fで公然と行われている多重下請けの問題と全く同じです。
もう一つ驚いたのは、原発ダイバーの被ばく量目標が年間20ミリシーベルトということです。
福島県民の被ばく量上限を20ミリシーベルトに上げるということは、原発ダイバーと同量の被ばくをしろということ。
いや、ダイバーは基本的に外部被ばくだけ、住民は汚染された空気・食品により大量に内部被ばくするので、
実際は20ミリよりはるかに多いはずです。
原発安全デマを振りまいてきた御用学者の小佐古敏荘教授ですら、
「いくらなんでも、子どもに年間20ミリシーベルトは浴びせられない」
と泣きながら内閣官房参与を辞職しましたが、当然でしょう。
妊婦や赤ちゃんにまで原発ダイバー以上の被ばくを平気でさせる。
さすが狂気の殺人国家日本の面目躍如たるものがあります。
(関連リンク)
「原子炉に潜る」 (スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る」 2011/3/30)
http://jsuga.exblog.jp/15131856
「俺たちは使い捨て 原発労働者が実状を語る」 (福島 フクシマ FUKUSHIMA 2011/9/19)
http://fukushima20110311.blog.fc2.com/blog-entry-32.html
「もう狂ってる!日本国民は原子炉水に潜る作業員と同じ規制値20ミリ・シーベルト!」
(wantonのブログ 2013/11/10)
http://ameblo.jp/64152966/entry-11681877681.html
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