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【日曜に書く】より安全な原子炉があった 実力再認識の国産次世代炉 論説委員・長辻象平
http://www.sankei.com/column/news/141130/clm1411300008-n1.html
2014.11.30 13:00 産経新聞
◆高温ガス炉という存在
福島事故に端を発した原発殉難の逆風の中で、実力を再認識された国産次世代原子炉が高く飛翔(ひしょう)しようとしている。
茨城県大洗町に立地する日本原子力研究開発機構の高温ガス炉(HTTR・熱出力3万キロワット)が、高い安全性と利便性を評価され、国内外で熱い視線を集めているのだ。
何しろ、配管破断で冷却材を喪失しても、電源を失っても炉心溶融などの過酷事故には至らないのだからすごい。固有安全性を備えている原子炉は自然に冷温停止してしまう。
その上、運転に水を全く必要としないので、内陸部にも建設可能。だから津波で被災する心配もない。砂漠に建設しても運転できる。
発電だけでなく水素製造や製鉄にも使える。多用途の原子炉として国際的に注目度が高い。この理想の原子炉の卵は1998年の完成後、鳴かず飛ばずとなっていたのだが、4月に国の「エネルギー基本計画」に組み込まれるなど、にわかに正当な処遇を得た形だ。
夢の原子炉は、日本にあった。メーテルリンクの童話「青い鳥」とHTTRが二重写しになってくる。
◆逆風を受け真価が光る
普通の発電用原子炉では、核分裂の熱を水で運んで蒸気タービンを回して発電する。
高温ガス炉でも核分裂の熱を利用するが、その熱はヘリウムガスで運ばれ、ガスタービンで発電することから、この名前がついている。ウラン燃料の基本粒子は直径1ミリ未満の小球であることや減速材と炉心構造材に黒鉛を用いることも特徴だ。
優れた性質を持つ高温ガス炉だが、熱出力は60万キロワット(電気出力では30万キロワット)あたりに上限があり、大型化の進んだ普通の原発との競争は、経済性の上で難しかった。
そのため、HTTRは高温試験運転や、自然停止の安全性実証試験をクリアしていながら、次第に影が薄くなっていた。
しかし、福島事故を機に、従来の原発は安全強化対策に膨大な費用を要するようになったことから状況が変化した。
火力発電の燃料代に年額4兆円近くの国富が消え続け、しかもエネルギーの安定供給に不安が残る現状において、高温ガス炉は、「地獄で仏」に近い国産技術だったのだ。
◆日本を追い上げる中国
原子力機構の研究陣は期待に応えるべく、電気出力120万キロワットの高温ガス実証炉のシステム設計に着手している。30万キロワットの炉を4基束ねることで、普通の大型原子炉の出力に肩を並べられる。敷地面積を普通の原子力発電所の86%に抑えられることも有利な点だ。
現在のHTTRは、研究炉の段階だが、研究陣はガスタービン発電機を備えたこの実証炉の2030年までの運転開始を視野に入れている。
中国も清華大学を中心に高温ガス炉開発に取り組んでおり、山東省威海市で電気出力21万キロワットの実証炉(HTR−PM)を建設中だ。17年末までの臨界を目指している。
中国の高温ガス炉は、生成温度もHTTRが達成している950度より200度低いし、ガスタービンではなく蒸気タービンを使うなど効率面で劣っているが、輸出計画を持つなど油断できない存在だ。
インドネシアも高温ガス炉の研究炉建設を計画中。原子力機構の協力を求めて5月に原子力庁の代表団が来日している。
地震と津波の脅威を抱えるインドネシアでのエネルギー問題解決には、高温ガス炉が適している。資源国だが、水素エネルギー利用にも魅力を感じているらしい。消費地近くや島々に置く分散型エネルギー源としても有望だ。
日本のエネルギー基本計画では、高温ガス炉研究開発の国際協力が認められている。その一方で中国は、インドネシアへの売り込みに余念がない。
将来の導入を計画しているカザフスタンも原子力機構の協力の下、炉心用高機能黒鉛の性能試験に着手したところだ。韓国は今春、水素製鉄用の超高温ガス炉の概念設計を開始した。
国産高温ガス炉の今後の研究開発促進策は、文部科学省の原子力科学技術委員会によって、国際協力のあり方などを含む具体的な中間とりまとめが10月に作成された。
今月26日には、原発の新規制基準へのHTTRの適合性審査の申請が行われた。再稼働に向けた青い鳥の羽ばたきだ。(ながつじ しょうへい)
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