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吉田調書の「真実」――現場は何と闘ったのか〔1〕/門田隆将(ノンフィクション作家) (衆知)
http://www.asyura2.com/14/genpatu41/msg/309.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 11 月 25 日 10:30:05: igsppGRN/E9PQ
 

               吉田調書・本当は何を語っているのか


吉田調書の「真実」――現場は何と闘ったのか〔1〕/門田隆将(ノンフィクション作家)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141125-00010001-php_s-bus_all
PHP Biz Online 衆知 11月25日(火)9時38分配信


官邸への連絡の煩わしさ
     
 これまで見てきてわかるように、地震発生以来、吉田氏はあらゆることに対処している。いずれも緊急を要することであり、しかも前例がなく、判断規準すらないにもかかわらず、即断実行が求められていた。事故への対応、目の前の事象の分析、部下への指示、さらには、官邸や東電本店からの問い合わせに対する回答……等々、多岐にわたっている。

 それは、普通の人間なら、最も重要な「事故対策」に専念できないほどのものだったと言ってもいいだろう。

 そのことを吉田氏本人は、どう思っていたのだろうか。

 第五章(海水注入を巡る攻防)で紹介したように、海水注入問題のことを語る吉田氏の調書には、官邸や東電本店からの要求や指示を「全部雑音です」と切って捨てた箇所がある。

 「雑音です。それを止めろだとか、何だかんだいうのは、全部雑音です。私にとってはですね。問い合わせが多いんです。今、どんな状況だと、だからサポートではないんですよ。(官邸への)報告のために何か聞くんで、途中で頭にきて、うるさい、黙っていろと、何回も言った覚えがあります」

 その問い合わせになんらかでも意味があれば許せるが、それは吉田氏にとってみれば、“まったく意味をなさないもの”だった。

 「論理根拠も何もないですから。そのときには、うるさいなと。私はそう決めていましたから、外から見ると、国会で何か騒いだりするものだから、大事件みたいに思っていらっしゃる人が多いんですけれども、そんな問題じゃなくて、単純に今、(海水注入を)止めたらえらいことになるから、ずっと続けるぞと思ってやっていたわけです」

 この証言でもわかるように、東電本店から吉田氏への問い合わせの多くは、官邸から来る問いをあらためて吉田氏に聞くものだった。すなわち「問い」の発信元は、あくまで「官邸」なのである。

 この時、ひっきりなしに問いを投げかけてきた官邸の政治家たちが、「全員撤退」問題をめぐる「詰め」や「確認」に関して、いかにお粗末であったかは、前章で取り上げた。

 同時に、その彼らにきちんと「緊急対策メンバー以外の2Fへの退避」を伝えることができなかった清水社長もまた、「われを失っていた」のは、間違いないだろう。

 吉田氏は、最後まで官邸との連絡に苦慮している。官邸からさまざまな問い合わせがあり、それに対応するために、度々、吉田氏の指揮はストップした。しかも、東電本店経由の問い合わせだけでなく、直接、官邸からも吉田氏に電話がかかってきたのである。

 吉田氏は1号機の爆発以降、繰り返される官邸からの連絡に対して、こんな疑問も口にしている。

 「何で官邸なんだというのがまず最初です。何で官邸が直接こちらに来るんだ。本店の本部は何をしているんだ。それから、保安院さんももちろんですけれども、そちら側でしょうという感じだったので、なぜというのはよくわからなかったんですが、いずれにしても、向こうからも電話がきますし、何かあったら連絡呉れという話があったので、とりあえずそれにのってやっていただけです。ずっとおかしいと思っていました」

 本来、官邸から福島第一原発の事故現場の指揮官に「直接、連絡が入ってくる」というのは、あり得ない話である。戦争の時に、大元帥閣下から戦場の真っ只中にいる指揮官にいちいち指令や問い合わせが入ったらどうなるのかを想像してみて欲しい。

 「あり得ないですよ。官邸と現場がつながるということ自体が本来あり得ないですよね」

 吉田氏は調書の中で、以下に紹介するように、官邸との連絡について聞かれ、そう答える場面もある。妨害に近いようなさまざまな「雑音」の中で吉田氏は事故への対処をつづけていたのである。

 調書には、吉田氏のこんな発言がある。


 「そのときのいろんなパターンがあったんですけれども、細野さんにこちらから電話すると、細野さんが首相のわきにいて、安全委員長がいたりするようなところにもかかるときもありますし、細野さんが一人のところにかかることもあるというような状況だったんで、このときがどういう状況だったか。ここからはかけていませんから、向こうから回ってきたんで、多分、官邸で武黒(官邸にいた東電の武黒一郎フェロー)が携帯使えない、どこにいたか、私はわからないんですけれども、まずは■■(筆者注・■■は伏字。以下、同じ)か武黒だと思うんですけれども、電話取っていたとは思うんですよ。そこからだれかに回したか、武黒からの指示だったかは本当に記憶がないです」

 さまざまな相手に吉田氏は、携帯から説明をおこなっているのだ。

 「報告だとか、官邸の状況で、これはどうなんだという質問に関しては、細野さんと、細野さんが電話を代わって菅首相が出てきたというのもあります。ちょっと待ってください、菅がお話がありますからということで、菅さんが出て、1回だけ枝野さんが出てきたような記憶があります。それ以外で、それは2号機のもうちょっと後ですけれども、2号機の減圧注入のときにもろに出てきますけれども、班目先生が来たというのがあります。それで、中に安井さんが1回ぐらい登場したような記憶はあるんですが、それはここかどうかがわからない」

 菅首相は、どうだったのだろうか。

 「菅さんはどっちかというと質問です。水素爆発はどういうメカニズムで起こるんだということとか、それは水蒸気爆発と違うのかとかいうような御質問をなさっていたのが1点ですね。それから、菅さん自身が言っているのは、菅さんのわきに日比野さん(筆者注・日比野靖・内閣官房参与)という参与がいて、あと、福井大学の副学長がいて、BWR(筆者注・沸騰水型原子炉)の構造からいって、除熱をする、要するに、原子炉の熱を取るというときに、タービン側に回して熱を取れないのかと、蒸気をですね。ごく初歩的な質問を菅さんがして、私が説明をし始めたら、ちょっと待ってくれ、その質問は日比野さんがしているからということで、日比野さんに代わって、結構忙しいときだったんだと思うんだけれども、るる、BWRの構造というのは、こういう事故時に、蒸気と言っても汚れた蒸気ですから、そういうものをタービンで冷やすということにはなっていなくて、事故時には格納容器を全部隔離して閉じ込めておくというのが設計の基本仕様だから、この段階でタービンの除熱機能だとか、タービンを介して復水器の取りつけなどは使えませんという御説明をしたと。それは菅さん経由で、菅さんのわきの参与に言った。それが2点でしょう。

 4回ぐらい菅さんが出てきたんです。もう1点は、これはまた結構機微な話と言ったらおかしいんですけれども、警戒区域と避難区域、20km、30kmの話について、こう決めたけれども、所長はどう思うみたいな話をしてきたんです。知りませんと。こっちは事故操作であれなんで、どれぐらい飛散するかという話は、こちらで計算しているわけではないんで、申し訳ないけれども、そこはわからないということですね。本店なり、そちら側の解析しているところで評価してくれと、現場の判断ではないということは申し上げました」

 官邸への説明のために、いかに吉田氏の手間が取られていたかがわかる。これが、事故と向き合って最前線の指揮を執っている人間に対する政府中枢の行動であったことに、愕然とする向きは少なくないだろう。

(次項:足を引っ張る「官邸」と「本店」/『「吉田調書」を読み解く 朝日誤報事件と現場の真実』より)


■門田隆将(かどた・りゅうしょう)ジャーナリスト
1958(昭和33)年、高知県生まれ。中央大学法学部卒。雑誌メディアを中心に、政治、経済、司法、事件、歴史、スポーツなどの幅広いジャンルで活躍している。
著書に『なぜ君は絶望と闘えたのか− 本村洋の3300日』(新潮文庫)、『あの一瞬 アスリートはなぜ「奇跡」を起こすのか』(新潮社)、『甲子園への遺言』(講談社文庫)、『神宮の奇跡』(講談社)、『康子十九歳 戦渦の日記』(文藝春秋)、『甲子園の奇跡 斎藤佑樹と早実百年物語』(講談社文庫)、『屋根のかなたに 父と息子の日航機墜落事故』(小学館文庫)、『太平洋戦争 最後の証言(第1部〜第3部)』(小学館)などがある。 『この命、義に捧ぐ 台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(集英社)で、第19回 山本七平賞 受賞。

門田隆将


 

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コメント
 
01. 戦争とはこういう物 2014年11月25日 11:28:03 : N0qgFY7SzZrIQ : WJiCmAappI
今更管内閣の大震災時の混乱を問題視しても、政敵を利するのみ。
今の総理であったら結果は変わったのか。
被災地を急いで訪問する演出を地デジ大マスコミはしきりと宣伝しているが。

02. 2014年11月25日 11:51:54 : uEEk6aHu6A
 現場を混乱させた「伝言ゲーム」は、本店の経営陣が自ら引き起こしていた。
 保安院ってのも、これまた碌でもない連中で、現場を混乱させる要因だった。

 事故当時のドタバタを知る度に思うが、いや、凄いわホント。
 本店の経営陣、役員達って何のために存在して何していたんだって、何か役にたったのかと聞いてみたいわ、指揮は取れない、情報統制もできない、何から何まで現場に投げるだけ、揚句、現場を混乱させ、判断を鈍らせ、行動を制限した。責任有る立場の人間が率先して、それをした。それでいて、責任は負わないなんて、なんて素敵な・・・。
 保安院・・・以下略。

 これ、民主じゃなくても、当時の政権が自民だったとしても、結果は同じだったと思うぞ。要は、東電本社に居た連中が、もう、どうしようも無い連中だった。って事なんだ。


03. 2014年11月25日 12:08:17 : aiMZAOJQqY
>本来、官邸から福島第一原発の事故現場の指揮官に「直接、連絡が入ってくる」というのは、
>あり得ない話である。戦争の時に、大元帥閣下から戦場の真っ只中にいる指揮官にいちいち
>指令や問い合わせが入ったらどうなるのかを想像してみて欲しい。

戦争と原発事故は全く違う。
日本の存亡がかかっていたのだから、首相が陣頭指揮をとるのは当たりまえだ。

ベントなど何をするにしても、最終的に責任をとるのはすべて首相であるから、
現場にいて即断したほうがよいに決まっている。

>官邸への説明のために、いかに吉田氏の手間が取られていたかがわかる。

東電本店に問い合わせても、一切情報を隠蔽して教えなかったのだから、
直接現場に問い合わせるのは当然である。

それで作業が遅れたとしたら、それは菅首相のせいではなく東電本店の責任である。

菅首相が現場に行こうと行くまいと、福島原発の連続大爆発は防げなかった。

事故の責任の多くは、地震・津波対策を怠った吉田所長にある。

付け加えておくが、吉田は単なる所長ではなく東電の執行役員だった。
事故を起こした責任は重大である。

いい加減、吉田を英雄に祭り上げるのはやめろと言いたい。


04. 2014年11月25日 14:30:33 : 58muxKobpY
元週刊新潮の売文屋、ウヨ門田は、どこまでも東電と財界、自民党のために奮闘するということ。

決して日本国民のためじゃない。


05. 2014年11月25日 22:39:12 : h7a0LTrbfs
当時の内閣が史上最悪であり、黙って多くの人を被曝させた。

06. 2014年11月26日 00:05:47 : viOyiE2oCo
この人の本を読むと吉田所長がヒーローで、まるで事故が終わったかのように感じる。
Amazonのレビューで感動したなどと書かれていることで、多くの人が勘違いしているのが分かるのだが。

原発事故の対応をあまりに美化しすぎて吐き気がしてくる。

そこには原発行政のずさんな実態も、東電からマスコミ・司法・政治を丸めこんでの嘘だらけの実態も出てこない。
どこがジャーナリストなのか。

ある意味、御用ジャーナリストとしてわかりやすいのではあるが。


07. 2014年11月26日 00:21:49 : SAkbcU4RQs
一国民にかわって、国のトップが、数千万が酷い被曝をする危機に、現場の所長に状況を問いただすのにはなんら問題は無い。
一私企業の思惑で国が滅んでは論外。
問題は、役立たずの官邸の役人、保安院、斑目、豚電の社長、官邸詰めの上司・同僚の奴らだ。
直通電話の手配は、本社がやれよ。なんど現場から官邸の電話にかけてもつながらないとかアホだろ。一刻も争そう戦いの最中の部隊長をサポートするどころか、連中の思惑で、思いつき発言の斑目さんに引っ張られて、あたかもそれが国の意志だから、その通り実行しろとかで、1.3号機はしかだがないとして、「防げたろ2号機の炉心溶融」と思ってしまう。
そもそも、1週間も、ほとんど寝ずの吉田所長におっ被せて、2交代制に配慮してやるとか、二日徹夜の13日午後には、前所長を派遣するとかしてないといけないでしょ。



08. 2014年11月26日 03:52:26 : 1zGkyaN4iY
吉田氏って東電の役員じゃなかったっけ?

死者を鞭打つな、とか、死んでしまえば罪は問わない、ていうのがニッポン人の「美学」だ。彼を英雄扱いするのはこりごり。と言うとバッシングされるだろうな。これが怖い。


09. 2014年11月26日 03:54:50 : 1zGkyaN4iY
>>05

じゃ、原発を54基も作り続けた自民党内閣だったらうまく処理できたのかね?


10. 2014年11月26日 20:02:55 : viOyiE2oCo
事故当時、対応する能力があったのは東電だけで、政府・官僚には全くその機能はなかった。
その中で精一杯やってあの結果なのだから、どの政党がやったところで同じだろう。
そもそもその東電でさえメルトダウンを防ぐ備えもなかったし、対応する能力もなかった。

あとは自民党がやっていたら、どのように国民に知らせただろうか?というところだろう。
やはり避難させたら、大事故ということになってしまうという思考回路が働くから、できる限り避難させない方向に向かっていたのではないか。
とにかく官僚・原子力ムラと一心同体の政党なのだから、住民のことを考えた対応をするとは思えない。

民主党であった時でさえ、避難させない・被ばく量を測定させない・放射能の放出を知らせない動きが見えていた。別に民主党のせいではないが。

さらなる地獄を見ることになっていただろう。


11. 2014年11月27日 23:40:19 : FfzzRIbxkp
311の時に防衛庁の対応は十分だったのか検討してないんだよ。

海上保安庁は、津波到達時間の予想だとか津波の規模をどの時点で官邸や電力会社に通報したのかもまだわからない。

フクイチの状況が今もひどすぎて話にならないけれど、

あのとき、東海第二はベント何十回もしていたわけで、東海第二がなぜそれほどベントが必要な事態になっていたのかも検証しないとまずいでしょ。
そのベントによって放出された放射性物質の量もよくわからない。
核燃サイクルもある。

東京から近いんだよ。


12. 2014年12月01日 08:25:29 : o1z1KLEJ1E
そもそも東電経営陣がすでに数回は予測されていた想定の2倍の津波への対策を怠っていたため、金をケチらず対応していればあれほど酷い事故にはならなかっただろう。地震で原子炉が壊れても注水施設は助かり爆発事故は防げただろう。

首相官邸や東電本社の対応のまずさが、さらに対応を損なっていた可能性は十分あるるが、その辺も含めて政府事故調査報告書の徹底した検証で事故原因を究明して早期に公表してもらいたい。


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