01. 2014年10月16日 18:14:48
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内部被曝通信 福島・浜通りから 〜 「悲劇」を求める取材 ■ 坪倉正治:南相馬市立総合病院非常勤内科医 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■from MRIC ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ いまの浜通りの状況について、海外へ発信することが非常に難しいと感じています。 インターネットの特徴なのでしょうけれど、知りたいと思っている人以外にはなか なか届きません。テレビなどのメディアも、悲しい話やけしからん話など、人間の 喜怒哀楽に訴えかけるような内容とリンクする場合には強みがあるのでしょう。そ れに対して、淡々と事実を伝えるのは苦手(というよりむしろ喜怒哀楽に伴うもの にかき消えてしまう。)なことを感じます。もちろん受け手の協力も必要です。 私の勝手な感覚ではありますが、日本でも海外でも、いわゆる専門の先生や医療関 係者の間では、住民の方の被曝量などについての話が出ることはほとんどなくなっ てきたと感じます。学会でこうしたテーマが占める割合も減っています。住民と接 している先生についてはそのようなことはありませんが、そうでない先生からは 「被曝の検査なんて、まだやってたの?過剰でしょ。人件費と資源の無駄でしょ」 といった声さえ聞かれます。確かに、国連やWHOからも線量評価に関する報告書が 出ていますし、測定結果もごまんとあります。ただチェックは続けるべきだと思っ ています。こちらとしてはあまり気にせず、淡々とやっていくだけだと考えていま す。 そんな一方、海外の方、そしてその知識を映す鏡であるメディアの方からの質問は、 なかなか厳しいものが多いです。 とある韓国のテレビスタッフが相馬の病院にやってきて、インタビューをしたいと 言ってこられました。植物の写った写真を10枚ほど渡されました。何かと思いきや、 「植物が放射線で奇形だらけだと聞いている。人間に関してもそうなんでしょ?」 と言い始めました。福島県ではそんな状況には全くないことを伝えますが、明らか に不満そうでした。取材する相手を間違えたという感じ。 オーストリアのテレビは外来の風景を撮影していきました。質問は「南相馬にどう して人が住んでいるんですか?」といった類いの内容でした。事故が起きたのは事 実として、いまのこの場所での被曝量がどの程度か、ゆっくりと説明しますが、蔑 (さげす)むようにニヤッと笑って終わりました。その表情は忘れません。 ドイツのテレビ局はBabyscanの取材に来ました。この器械が出来た経緯や、小さい 子どもからはセシウムがまったく検出されていないことを説明しました。しかし、 彼らは「悲劇」を求めているようでした。使いたいコメントを撮りたいのでしょう。 繰り返し同じ質問を5回も10回もしてきましたが、相手が求めるコメントをしよう もありません。結果、彼らが必要とする悲劇には満たなかったようでした。 こうしたことは、取材を受けたことのある多くの方が経験されていることと思いま す。まあ確かに、海外のどこかの国で、「こんな問題があったけれども、だいぶ落 ち着いてきました」という報道が日本であったとしても、ほとんどの人にとっては 記憶に残らないだろうなとも思います。 もちろん、そんな方々ばかりではありません。ちゃんと話を聞いてくださる方がい らっしゃることも確かですし、その様なメディアの方に我々は何度も何度も助けて いただきました。 そんな状況の中、やはり可能であれば、地元の方々一人一人が現状をご自分で説明 できるようになって欲しいと思っています。学校での知識などがその要です。そし て多くの専門の先生方にもいま一度、周囲への発信をぜひ続けて欲しいと願ってい ます。 http://apital.asahi.com/article/fukushima/2014100700004.html 坪倉正治の「内部被曝通信 福島・浜通りから」のバックナンバーがそろっています。 http://apital.asahi.com/article/fukushima/index.html
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