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原発事故の現状
http://takedanet.com/2014/09/post_bc81.html
平成26年9月15日 武田邦彦(中部大学)
原発事故については「まぐまぐ」に詳しく連載していますが、ここに簡単に原発事故の現状をまとめてみました。なにしろ福島原発から漏れた放射性物質の量は100京ベクレルと言われ、広島に投下された原子爆弾で汚染された量の約200倍ですから、なにが起こるかかなり長期、慎重に観察していかなければなりません。
まず、被曝による病気などの状態ですが、初期の鼻血や喉のイガイガ、疲労感などは最近ではあまり報告されず、子供の甲状腺の肥大や甲状腺がんが多く報告されています。甲状腺がんはこれまで研究が少なかったこともありますが、すでに100人ほどの子供がガンと診断され、約半数は手術をしたとされ、転移が見られる子供さんもおられるようです。
評価はむつかしいですが「かなり多い」という感じでしょう。甲状腺がんが本格的に増えるのは2015年以降と考えられ、今となっては初期被爆は減らすことができませんから、患者さんが少ないことを祈るばかりです。
また、二本松市など福島の市で人口が流出した人口より減ったところも多く、これが統計上の問題なのか、それとも本当に死亡率が増大しているのか、まだ不明です。
また除染も進んでいませんし、一部は避難区域が解除される動きもありますが、放射線量は原則として100年はそれほど変わりませんから、福島の人には悪いのですが、「それが原発事故、原発というものだ」ということなので、それに応じて生活設計をする以外に方法はありません。
食材は山のものを別にすると、かなり改善されてきました。その一部は、これまで福島の食材を食べようという運動が展開されたので、食材にまじって全国に薄く拡散したものと思います。つまり、セシウムも他の放射性物質も「なくなる」ということはないので、福島の農作物の汚染が減るということは、雨で海に流れて魚に沈着するか、食材とともに全国に薄くまかれるかしか方法がないのです。
また、朝日新聞の誤報でさらに有名になった吉田所長の調書に「東日本が崩壊するかと思った」とあるのは、彼も原発が、原子爆弾などよりはるかに膨大な放射性物質を抱えていて、福島ばかりではなく、東日本全部が壊滅する不安を持っていたことがわかります。
また政府要人の調書も公開されていますが、一様に「びっくりした」様子がわかります。それは「原発は危険だから僻地につくるが、事故は想定しない」という矛盾した政策がもたらしたものです。このことは川内原発をはじめとした再開される原発でも同じことですので、また数10年に一度は原発が爆発し、少しずつ日本は原発が原因して衰退していくでしょう。
その理由の第一は、再開される原発も、原発を安全に保つ二つの重要なシステム「固有安全性と多重防御」ができていないまま再稼働 しようとしていることです。つまり、「地震と津波」は外から原発に加えられた打撃であり、それを受け止める原発側の対策の欠如がそのままになっているからです。
そして第二に、東京の電気を新潟で作っているのに、東京の人は安全というという二枚舌の状態にあることです。これは「原発を推進しなければならない」、「しかし、原発は危険である」という矛盾を正面から受け止める立派な政治家も科学者もいないことを意味しています。
このような状態ですから、国民としては再開を止めること、食材に注意すること、健康に留意しできるだけ免疫力をつけておくことなどが必要と思います。地面からの再飛散は減ってきました。
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