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議論進まぬ原発廃炉 解体コスト不透明
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2014年9月17日 東京新聞:こちら特報部 俺的メモあれこれ
関西電力大飯原発4号機が停止し、原発稼働ゼロとなって15日で丸1年がすぎた。九州電力川内原発の再稼働に向けた動きの一方、老朽原発を廃炉にする話がようやく出始めた。ただ、解体した原子炉など汚染ごみの受け入れ先がないほか、立地自治体の税収減といった不都合があり、議論は進まない。廃炉は、もはや避けて通れない問題なのだが−。(上田千秋、篠ケ瀬祐司、社説<5>面)
◆解体費 数百億〜数千億円
「廃炉を検討するなら、使用済み核燃料の中間貯蔵、放射性廃棄物の埋設、地域経済への影響とセットで議論しないと話し合いにならない」
福井県の杉本達治副知事は8日、関西電力の岩根茂樹副社長に対し、こう述べて警戒感を示した。運転開始から40年を超す美浜原発1、2号機(美浜町)の廃炉を関電が検討していると報道されたことを受けての面談だった。
同県は高速増殖原型炉「もんじゅ」を含め、全国最多の14基の原発を抱えるが、うち8基の運転期間は30年を超す。廃炉は、経済面でも、放射性廃棄物の処理の面でも、地元に大きな影響を与える。
関電広報室は「今後どのように対応していくか検討しているところ」と廃炉について具体的なコメントはしていない。だが、老朽原発を廃炉にするかどうか決断しなければならない時期は近づいている。
原子力規制委員会は昨年7月、原発の運転期間を原則40年とする新規制基準を決定した。この基準に当てはめれば、美浜原発1、2号機は廃炉だ。しかし、20年以内の延長が可能という規定もあり、経済産業省は延長申請の期限を来年7月に設定し、年内にも電力会社に移行を確認する方向で検討している。
ただ、運転延長のハードルは高い。原子炉圧力容器に傷や割れがないか超音波などを使って調べる「特別点検」をした上で、川内原発で行われた適合審査に合格しなければならない。安全対策だけでも総費用は1000億円単位とみられる。
その一方で、電力会社には簡単に廃炉に踏み切れない事情がある。会計上、廃炉を決めた後は、原子炉格納容器などは資産とみなされなくなる。昨年、当該年度の決算に一度に特別損失として計上するルールが分割処理できるよう改められたが、廃炉は財務状況を悪化させる。
廃炉費用をどうするかという問題もある。経産省令で積み立てが義務付けられているものの、どの電力会社も十分な費用を準備できていないのが現状だ。
電力会社だけでなく、原発立地自治体が受ける影響も計り知れない。まず、原発を中心とした関連産業による雇用が失われる。国からの電源三法交付金、電力会社の固定資産税などがなくなる。さらに、核燃料税も徴収できなくなる。
同税は、原子炉に装填(そうてん)される核燃料の価格に応じて課税する仕組みで、1976年に福井県が初めて導入した。原発が立地する他の12道県も次々に導入した。福島の原発事故後、福島県は廃止したものの、他の道県の多くは運転停止中でも発電能力によって課税する「出力割」を併用するようになった。福井県は昨年度決算によると、出力割で61億円の収入があり、「決して小さな金額ではない。廃止になると困る」(税務課)。
危機感を強める同県の西川一誠知事は9日、小渕優子経産相に会い、原発の撤去が終わるまで電源三法交付金を続けるなど、廃炉になった際の国からの支援を求めた。
◆高濃度汚染ごみ どう処理 「まず責任の主体 明確に」
ところで、原発の廃炉はどのように進められるのか。電力会社などは廃炉を「廃止措置」と呼び、おおむね4段階の作業がある。
まず使用済み核燃料を原子炉から外に運び出す。次に原子炉冷却系や計測制御系統の施設の解体を行う。続いて原子炉本体の解体、そして建屋解体と進めていく。
廃炉費用にはいくらかかるのか。80万キロワット級の中型炉で440億〜620億円程度、110万キロワット級の大型炉の場合570億〜770億円と経産省は見込んでいる。だが、試算額で収まるとは限らない。
例えば、2003年に運転を終え、廃炉作業中の新型転換炉「ふげん」(福井県敦賀市)。解体費400億円、廃棄物処理費350億円を見込む。だが、日本原子力研究開発機構(原子力機構)の原子炉廃止措置研究開発センター管理課の担当者は「具体的な廃炉の実績がなく、民間の電力会社の計算式を参考にした。使用済み核燃料の輸送費用は含まれておらず、廃炉までの期間が延びれば維持費などがさらに必要になる」と費用が膨らむ可能性を示唆した。
公益財団法人「自然エネルギー財団」は経産省試算の何倍も費用が必要だとみる。大林ミカ事務局長は「ドイツなどは原子炉1基の廃炉コストを、約2500億円から3500億円程度とみている。政府や電力会社の見積もりでは到底足りない」と話す。
廃炉費用だけでなく、技術面の問題もある。1998年に営業運転を終え、商業用原発で国内初の廃炉作業に取り組んでいる東海原発(茨城県東海村)では、低レベル放射性廃棄物処理施設の屋上から出火したり、作業服などを洗って出た汚染水の流出事故が起きたりしている。他の原発を廃炉にする作業でも、不安がつきまとう。
もっと深刻な問題がある。廃炉で出る廃棄物の処分場を受け入れる自治体がないことだ。
東海原発の廃炉について、日本原子力発電(原電)は、原子炉周辺の解体に入る時期を今年4月から19年度へと5年間先送りした。原子炉解体によって出る、比較的汚染度の高い放射性廃棄物の行き先が決まらないことが主な理由だ。こうした放射性廃棄物は、地下50メートル以上の人工構築物の中で、300年間管理しなければならない。原電ではこうした廃棄物が東海原発から約1600トン出ると試算している。
08年に廃炉を決め、中部電力が作業を進める浜岡原発1、2号機(静岡県御前崎市)は先月29日、解体作業で出た廃棄物の一部を初めて原発敷地外に搬出した。本年度中に約20回、計約50トン運び出される予定だが、これらは汚染の可能性が低い廃棄物だ。汚染度の高い廃棄物の処分方法は、「今後検討する」(浜岡地域事務所)。
ともかく今後、多くの原発が運転開始から40年超の廃炉期間を迎えることは間違いない。前出の自然エネルギー財団の大林氏は「福島の原発事故で出た放射性廃棄物の処理について、東京電力は責任をあいまいにしようとした」と指摘し、電力会社の体質を改めるよう求める。
「まず、どこまでが誰の責任かを明確にすべきだ。使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す核燃料サイクルは機能していないのに、使用済み核燃料をごみと呼ばない。このように責任をはっきりしないまま、さらに廃炉費用を電気料金に上乗せするような施策をとるべきではない」
[デスクメモ]
「夢の島」のせいで、東京都江東区の住民は悪臭とハエの大量発生に悩まされたという。一般ごみの処分場でも、建設場所を決めるのは難しいのに放射能汚染ごみとなればなおさらだ。原子力を「夢のエネルギー」と呼んだ時代もあったが、違った。原発の後始末をどうするか。もう目をつぶってはいられない。(文)
2014年9月17日 東京新聞:こちら特報部
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2014091702000195.html
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廃炉の時代 あらがうのが不自然だ
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014091702000191.html
2014年9月17日 東京新聞社説
関西電力美浜原発1、2号機など、稼働四十年前後の老朽原発が廃炉に向かう。寿命に従い、廃炉事業で地元の雇用を確保しつつ、自然エネルギーへの転換を図る−。それが自然な成り行きだ。
万物には寿命がある。当たり前のことではないか。
傷をふさぎ、部品を取り換え、無理に使い続ければ、不都合が噴出するのは、当然だ。
ましてや、強大な核エネルギーを内部にはらむ原子炉のことである。“健康で長寿”を保つ困難は、想像に難くない。
原発の寿命はかねて、三十年とも四十年とも言われてきた。ところが一九七〇年代初めに稼働した福島や美浜、敦賀など、第一世代の原発がそれに近づくと、事業者は老朽化を経年変化と呼び変えて、延命を模索し始めた。
関西電力は3・11以前の二〇一〇年、美浜1号機は最長五十年の運転継続、2号機も一一年に、四十年を超えて動かす方針を打ち出した。
巨額の初期投資が必要な原発は、長く使えば使うほど、利益を上げられるからだ。しかし震災後、風向きが変わり始めた。
昨年施行の原子炉等規制法は、原発の寿命を原則四十年と規定した。だが、原子力規制委員会の通常より厳しい特別点検に合格すれば、最大二十年の延命が一回限り、許される。地震国日本の実情などとは関係なく、米国の方針転換に追随した結果である。
廃炉にしても、それに伴って排出される放射性廃棄物の処分にしても、避けては通れない道である。膨大な費用と時間がかかる。先送りすればするほど、電力会社の負担は重くなる。
福島の事故は、教えている。
原発は一電力会社の手に負えるものではない。国策の支えがなければ、経済的にも見合わない。傷痕はあまりに深く、新増設が受け入れられる余地はない−。
省エネは社会に定着しつつあり、この夏も原発なしで乗り切った。原発延命のための投資を風力などに振り向けていく方が、電力会社にとっても得であり、合理的なのである。
九州電力は稼働三十八年の玄海1号機、中国電力は四十年を経た島根1号機の廃炉を検討し始めた。大型原発再稼働への地ならしと見る向きもあるようだが、安全寿命に従うという常識が、常識として定着するよう求めたい。
四十年。電力会社自身が原発依存を脱する好機である。
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