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焦点:古い原発の廃炉本格化へ、活断層・地元同意も電力会社に逆風 2014年 09月 8日 16:23 JST http://jp.reuters.com/news/pictures/articleslideshow?articleId=JPKBN0H30GW20140908&channelName=topNews#a=1 1 of 1[Full Size] [東京 8日 ロイター] - 運転開始から40年前後が経過した古い原発を廃炉させる動きが今後、本格化する見通しだ。古い原発は昨年7月に施行された新規制基準への対応が難しく、安全対策の追加投資を行っても投資回収が見込めないとみられるからだ。比較的新しい原発でも、原子炉建屋直下に活断層があると認定されたり、地元の同意を取り付けることが難しい場合、再稼動ができなくなり、いずれ廃炉に追い込まれるリスクも残る。態度をあいまにしてきた電力会社が今後、厳しい経営判断を迫られるのは確実だ。 <再稼動と廃炉はセットと経産相> 「私としては、円滑な廃炉を進めることと、安全性が確認された原発の再稼動を進めることは、合わせて推進していきたい」──。小渕優子経済産業相は、今月5日の記者会見でこう語った。就任3日目の発言であり、経産省の意向を反映しているとみられる。 小渕氏発言の前後に、国内メディア各社は5日、「関西電力(9503.T: 株価, ニュース, レポート)が美浜原発1、2号機の廃炉を検討」と一斉に報じた。九州電力(9508.T: 株価, ニュース, レポート)の玄海原発1号機の廃炉検討を伝えたニュースも流れた。 両電力は「廃炉の検討に入った事実はない」(関電)、「現時点で何も決まったものはない」(九電)などとコメントしたが、額面通り受け止めるエネルギー関係者はほとんどいない。 「美浜1、2号の廃炉は既定路線」(関係筋)、「九電は玄海1号の廃炉を検討している」(政府関係者)というのが実状だ。 <運転延長、申請期限は来年7月> 東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原発事故を契機に、一昨年に改正された原子炉等規制法では、原発の運転期間を原則40年に制限しながらも、原子力規制委員会の認可を条件に20年間を上限に1回だけ運転延長が認められる。 運転開始から40年を超えた原子炉は、日本原子力発電の敦賀1号機(44年)、関電美浜1号 (43年)・2号(42年)、中国電力(9504.T: 株価, ニュース, レポート)島根1号機(40年)の4基。今年11月には関電高浜1号機が40年を迎える。 これらは、制度変更に伴う特別措置として2016年7月までは「現役」扱いとする猶予期間が設けられている。16年7月時点では高浜2号と玄海1号も40年超となる。これら合計7基を運転延長させる場合は、来年7月までに規制委に申請を行わなければならない。 <古い原発ほど安全投資の回収困難> 延長を望む場合、事業者は原子炉の劣化状況などを調べる「特別点検」を実施し、規制委の認可を得る必要がある。 規制委の田中俊一委員長は「40年で(運転延長の基準を)クリアするのは、時間とカネがかかる」と指摘している。 中国電の苅田知英社長が、今年3月の記者会見で、島根1号について「廃炉にするという選択肢もある」と発言するなど、電力経営者からも廃炉に言及する事例も出ている。 昨年7月に施行された新規制基準は、古い原発ほど適合が難しい。新基準では「燃えにくいケーブル」の設置が要求されているが、ロイターが今年春、電力各社にアンケートしたところ、難燃性ケーブルが未設置の原発は12基に上った。すべて1980年以前に運転開始したものだ。 原発で使われるケーブルの長さは、1基当たり1000キロを超え、入れ替えは困難とされる。電力側は延焼防止剤の塗布などで機能代替は可能と主張するが、新規制基準適合性審査で認められるかどうかは不透明だ。 昨年2月から今年7月まで全国の原発すべてを視察したという齊藤誠・一橋大学大学院経済研究科教授は、ロイターの取材に対し「経営者や現場の責任者は、1970年代に動かした原発の新規制基準への対応は、非常にコストがかかるという意識があって、実際にほとんど手をつけていない」と述べている。 <活断層問題も関門に> 新規規制基準では、原子炉など重要施設の直下に活断層があると認定された場合、再稼動ができなくなる。 規制委は日本原電敦賀2号(運転開始から27年)の原子炉建屋直下にある断層は活断層との判断を示している。日本原電側は「活断層ではない」と強硬に主張しているが、判断が覆される可能性は低いとみられる。 北陸電力(9505.T: 株価, ニュース, レポート)志賀原発は、敷地内にある断層が活断層であるかどうか規制委による調査対象となっている。1号機(同21年)の原子炉建屋下を通る断層と、2号機(同8年)のタービン建屋下の断層がそれぞれ活断層かそうでないかが焦点で、北陸電は活断層ではないと主張しているが、結論には至っていない。タービン建屋の下に活断層がある場合、耐震性の確認が必要になる。 商業炉ではほかに、東北電力(9506.T: 株価, ニュース, レポート)泊原発1号機(同8年)、美浜原発でも規制委による断層問題の調査、検討が続いている。 <再稼動が不透明な柏崎刈羽と浜岡> 原発が立地する地元の県や市町村の同意を得られるかどうかも、再稼動に向けた関門となる。地元の反対は、運転年数や活断層問題のような再稼動を阻む法的拘束力はないものの、地元の同意なしに再稼動を強行することは事実上、不可能だ。 この観点で再稼動が難しいか、不確実性が高そうな例として、東京電力福島第2原発(4基、運転開始から27─32年)と同柏崎刈羽原発(7基、同17年から29年)、中部電力の浜岡原発(3基、同9年から27年)が挙げられる。 福島県議会などが福島県内の原発すべての廃炉を求めており、第2原発の再稼動は極めて困難な情勢だ。東電は、第2原発の存廃問題について方針をあいまいにしたままだが、そうした姿勢に今後、批判が高まる可能性も否定できない。 柏崎刈羽については、地元・新潟県の泉田裕彦知事が東電による再稼動に厳しい姿勢を続けている。複数の業界関係者からは「柏崎刈羽は東電から切り離さない限り、再稼動できないだろう」との見方が聞かれる。6基中4基が複合的に事故を起こした福島第1の教訓もあり、7基という多数基を問題視する見方も原子力規制委・規制庁側にある。 巨大地震の想定地域に立地する浜岡原発の再稼動も不透明だ。中部電力は今年2月に、規制委に新規制基準の適合性審査を申請したが、審査会合では「巨大地震が発生する確率が他の原発に比べてはるかに高い」(規制委の島崎邦彦委員)と指摘されている。 静岡県の川勝平太知事が、浜岡原発の再稼働に当たっては住民投票の実施が必要との認識を示している。 首都圏から約200キロと近く、人口や産業が密集する太平洋ベルト地帯に立地することは、再稼動には不利に働くとの指摘が、地元の保守系県議から聞かれる。 (浜田健太郎 編集:田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0H30GW20140908?sp=true |