http://www.asyura2.com/14/genpatu40/msg/246.html
Tweet |
「ドキュメント 東京電力企画室」(田原総一朗著 文春文庫)を読んだ。
東電が初の原発導入を決めたいきさつが書かれており、とても興味深い。
面白いことに、当時、東電副社長であった木川田一隆は、最初は原発の導入に強く反対していた。
「原子力はダメだ。絶対にいかん。原爆の悲惨な洗礼を受けている日本人が、
あんな悪魔のような代物を受け入れてはならない」 (p.63)
その志を貫いてもらえば、我々もこんな目に合わなくてすんだわけだが、彼は、あるときを境に
原発推進に豹変する。何が彼を変えたのは、著者も謎だと言っている。
おそらく、原子力推進のため暗躍した中曽根康弘や正力松太郎のアメとムチではなかったか?
1961年、木川田は東電社長に就任、翌62年の常務会で突然発表する。
「一九六ニ年九月二十一日。東京電力常務会。
(中略)
だが、この日、木川田の表情は特別にはりつめていた。
『当社も、いよいよ原子力発電所を建設します。原子炉のタイプは軽水炉、ゼネラル・エレクトリック社の
沸騰水型、第一号炉は出力四〇万キロワットの予定。福島県双葉郡大熊町です』
有無をいわさぬ、きわめて断定的な口調だった」 (p.54)
それまでは社内で複数の原発メーカー、原子炉の検討が行われていたが、常務会の了解も得ず、
社長の独断で決めてしまったという。この選定の真相も謎に包まれている。
おそらく政府からの強い圧力があったのだろう。
誘致先についても木川田が勝手に決めた。木村守江・元福島知事がそれについてこう語っている。
「『昭和三十三年頃かな、私は衆議院議員でして、いま原子力発電所がある、大熊、双葉という地区は、
実は私の票田だったのです。ところが、あの辺は実に貧しい。大体、福島県というのは、全国でも
指折りの貧しい県(一九六五年度個人所得、本州では島根に続いて下から二番目)なのですが、大熊、
双葉のあたりというのはとくに貧しい。そこで、地元では、さかんに産業誘致を図ったのだがうまくいかない。
町長たちから何とかしてくれと頼まれて、木川田さんに話したのです』
木川田一隆は、福島県梁川町の医師の家に生まれている。木村家も代々医師で、同郷のうえに同業の
家系に育ったということで、木村は、木川田とは昵懇の間柄だったのだという。
木村に相談されて、木川田は、即座に、『原子力発電所がよいのではないか』と答えた」 (p.73)
要するに、地質調査は一切にせず、社長が同郷の政治家の求めに応じて、勝手に建設地を決めてしまったのだ。
そして、あとから、とってつけたように調査を行ない、活断層等不都合な事実が見つかると、
御用学者に巧妙に隠させたのだ。
原発のように慎重の上にも慎重が要求されるプラントの建設場所が、専門家でもない社長の一存で決まったのだ。
とんでもないことである。
3/11の地震で不均等に地盤沈下し、毎日何百トンもの地下水が湧き出してお手上げ状態になるのは当たり前である。
敷地には活断層が斜めに走っているという指摘もある。本来なら絶対に原発を建ててはならない土地だったのだ。
ちなみに、原発誘致を要請した木村守江は、12年福島県知事を勤めた後、汚職で逮捕され辞任、有罪判決を受けた。
カネまみれの人生であった。
さてこのドキュメントは、東電が建設したもう一つの原発、柏崎刈羽についても言及している。
「この新聞記事を、柏崎市議の芳川広一(社会党)に解説してもらった。
『あの土地に、最初、田中角栄は自衛隊の施設所を誘致するのだといいましてね。
施設所は戦争する施設じゃなくて、災害のときに出動する部隊なのだから、安全だというのですよ。
その、田中発言があるとすぐ、一帯を木村が買い占めた。『朝日新聞』が"田中側近"と書いているのは、
当時刈羽村の村長だった木村博保のことです。木村は、田中角栄の"越山会"の有力者なのですよ。
"越山会"と室町産業の間で、キャッチボールして、坪一〇〇円の土地を二、六〇〇円につり上げた。
こういうのを『転がし』というのだそうですね。誰の懐に入ったかは、いうまでもないでしょう』
坪一〇〇円の土地が二、六〇〇円になり、すると自衛隊施設所が原子力発電所に変わった。
原子力発電所だと、住民たちが土地を売らないという配慮があったのだろうか」 (p.85)
柏崎刈羽も田中角栄が土地転がしでボロ儲けするために誘致された。
誘致先を選定するに当たって地質調査は一切行われておらず、角栄の取りまきが買い占めた砂丘に
原発が建設された。
ここも2007年、新潟県中越沖地震で地盤沈下が起き、建屋が傾いてしまった。当然の結果である。
日本の他の原発も同じようなものだろう。
ろくに地質調査もしないで、.政治家と地元がボロ儲けするために建設場所が決まる。
あとで不都合な真実が見つかれば、御用学者を使って揉み消す。
鹿児島県・川内原発と石川県・志賀原発は地盤が悪く、ボーリング調査で掘っても掘っても
柔らかい部分が出てくるので、コアのすり替えをやってごまかしたことがわかっている。
日本は地震国で安定した地盤はないというが、それでも地盤のしっかりしたところとそうでないところはある。
それを全く調査もしないで、政治家の"ご都合"だけ敷地を選ぶとは狂気の沙汰である。
こんなに恐ろしいことはない。
大熊、双葉町の住民は、金に目がくらんで原発という悪魔に身も心も売り渡し、
その結果、永遠に故郷を失ってしまった。
たとえ貧しくても地道に暮らせばよかったと思っても、もう遅い。
原発を再稼動すれば、間違いなくまた大事故が起き、故郷を追われる人が出るだろう。
この「ドキュメント 東京電力企画室」は、しっかりと取材されており、非常に優れたドキュメントである。
今ではすっかりムラに取り込まれてダメになった田原総一朗も、昔はこんなに優れた仕事をしていたのだ。
戦前から続く、政府・官僚と電力会社間の勢力争いも興味深い。
政府と電力会社は昔からべったりの関係だと思っていたが、必ずしもそうではなく、意外であった。
一読をおすすめしたい。
▲上へ ★阿修羅♪ > 原発・フッ素40掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。