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川内同型原発は審査簡略化可能か?「そんなもの簡略化できる道理がないのです」〜第87回小出裕章ジャーナル
http://www.rafjp.org/koidejournal/no87/
2014年09月06日 ラジオフォーラム
20140906 R/F #087「小出裕章ジャーナル」【川内同型原発は審査簡略化可能か?】
湯浅誠:
今日は、原子力規制委員会との話の中で、「川内原発同型の原発は審査の簡略化が可能なんじゃないか」と、菅官房長官が言ったというニュースについてお伺いしたいんですが。これは、どういうことなんでしょうかね。
小出さん:
彼らとしては、なんとしても早く早く再稼働をさせたいと思っているわけで、審査に関しては、出来る限り手を抜いて速やかに完了するようにしたいわけです。
日本では、2種類の原子力発電所を使ってきました。福島第一原子力発電所で使っていたのは、「沸騰水型原子炉(BWR)」と言います。一方、関西電力等は、「加圧水型原子炉(PWR)」と私達は呼んできました。基本的には同じものなのですけれども、仕組みが違うところもあるということで、2種類のものを使ってきたのですが、事故を起こしてしまった沸騰水型の方は、容易に安全だということを言えないだろうと、たぶん菅さん達も思ってるんだと思います。
ですからそうなれば、一方の加圧水型(PWR)という原子炉の方は、できる限り早く再稼働させたいと思っているはずですし、「川内原子力発電所が安全だと認めたのであれば、他だってみんな安全だと認めろ」という指示を菅さんが発信したのだと思います。
湯浅誠:
沸騰水型というのは水を沸騰させて、その蒸気でタービン回して発電と。
小出さん:
非常に単純な原子炉なのです。
湯浅誠:
小出さんは、ずっと湯沸しと同じ原理だとおっしゃってる。それ、字を見るとわかりやすいんですけど、加圧水型というのは何が違うんですか?
小出さん:
沸騰水型は文字通り、今湯浅さんがおっしゃってくださったように、水を沸騰させて蒸気を出して、その蒸気でタービンを回すのですけれども、原子力発電所の場合には、その沸騰した水がもう既に放射能で汚れてしまっているわけです。
それで、タービンというものを回そうとすると、タービンは非常に巨大な構造物ですし、タービンすらが放射能で汚れてしまって、管理をすることが大変になるということが一方にあったわけです。
ですから、加圧水型という方は、放射能で汚れた水をタービンに持っていきたくないと。だから、一次系と私達は呼んでいますけれども、放射能で汚れた水は一次系というところで閉じ込めて、途中で蒸気発生器という熱交換器を使って、二次系に熱を渡して、二次系を沸騰させるというシステムを作ったのです。
ですから、システムとしては沸騰水型より面倒なシステムになったわけですね。冷却系がもう一つ増えてしまっているから。
湯浅誠:
そうですね。間にワンクッション入ったということですね。間にワンクッション入ったことで、より安全だと言えるんですか?
小出さん:
言えません。もちろん、良いこともあるし悪いこともあるわけで、タービンという巨大な構造物が放射能で汚れないという点では、もちろんよかったわけですけれども、一次系から二次系に熱を渡すためには、蒸気発生器という巨大な装置をそこに置かなければいけないし、蒸気発生器というのは、もちろん一次側から二次側に熱を渡すべきものですから、なるべく熱を渡したい構造、つまり金属のパイプなんですけれども、パイプの厚さをなるべく薄くして、効率よく熱を渡したいわけです。
しかし一方で、薄くしてしまうと、今度はそのパイプが破損する可能性が高くなりますので、一次系の放射能が二次系に漏れてしまうということになるわけです。ですから、相反したその目的を両方担わなければいけないということで、蒸気発生器というのは大変難しい設計になりまして、なんとかそれを上手くやりたいと思ってきたわけですけれども、世界中の加圧水型原子炉では、たびたび蒸気発生器が壊れてしまいまして、日本でも、しきりに事故を起こしましたし、世界的にも事故を起こしたし。
例えば、米国の西海岸にサンオノフレという加圧水型の原子炉がありましたが、その原子炉の蒸気発生器は日本の三菱重工が造ったのです。それがあまりにも欠陥だということで、サンオノフレは閉鎖になってしまいましたし、三菱重工が多額の賠償金を請求されるというようなことにもなっているのです。
湯浅誠:
係争中の案件ですね。ありましたね。メリットとデメリットは背中合わせというか、ある問題が解決しようとすると、次の問題が起きてしまうというのが 原子力というものの難しさなんだと思いますけど。これを簡略化するというのは、ちょっとイマイチよく分からないというかですね。
小出さん:
全く分からないです。
湯浅誠:
加圧水型という建物の構造、原子力を生み出す構造は、今おっしゃったように、加圧水型というものはある種、同型なんだろうと思うんですけど。にしても建ってる所は別の場所だし、海沿いにあるのか、海面から何メートル上にあるのか、そういうような地下に地震のリスクが、どれぐらい活断層があるのかないのか。そういうことも含めて審査するという話だったですよね?
小出さん:
そうです。新規制基準では、「活断層をより厳密に審査しろ」ということであったり、あるいは、「津波の影響がどれだけあるかを審査しろ」とかいうことであったわけで、そういうものは全て敷地に依存していますので、加圧水型という原子炉のかたちとは違うことをキッチリと評価しなさいというのが新規制基準の目玉ですので、そんなもの簡略化できる道理がないのです。
敷地の条件でなくて、要するに立地している地域の住民の安全をどう守るかという、もっと重要なことがあって、それは新規制基準で言えば、原子力規制委員会は「自分達の責任でない」と言ってしまって、「それぞれの自治体で勝手に考えろと」いうようなことにしているわけですね。
ですから、川内原子力発電所に関しても、原子力規制委員会は、「避難計画とかそんなことは一切知らない」と言ってしまっているわけです。
でも、一番大切なのは、本当に住民の安全が守れるかということなのであって、それこそ大切であって、個別敷地に依存しているのです。ですから簡略化というのは、ほんのごく一部でできる場所もあるかもしれませんが、ほとんどのものはできないと思った方がいいと思います。
湯浅誠:
小出さん今日もありがとうございました。
小出さん:
どうもありがとうございました。
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