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“放棄”される除染 政官財の非情〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140828-00000000-sasahi-soci
週刊朝日 2014年9月5日号より抜粋
環境省は8月1日、これまでの空間線量から個人線量を重視する新たな方針を発表。福島県内の4市で行った調査の結果をもとに、空間線量が毎時0.3〜0.6マイクロシーベルトの場所の住民で年間1ミリシーベルト程度の被曝になるとし、0.23は除染目標ではないと主張し始めたのだ。ジャーナリストの桐島瞬と本誌・小泉耕平が取材した。
だが、被災地からは、まやかしの方針転換だと不満が噴出している。
「国がやろうとしているのは、除染がうまくいかなかったから基準を引き上げるということ。なし崩し的に除染を放棄するつもりではないか」(郡山市の住民)
三春町に住む橋本加代子さんもこう怒る。
「個人線量といっても、家族全員が違う。近所の学校に歩いて通う子供と、10キロ離れた郡山の会社へ車で通勤する私とでも被曝量は異なります。第一、個人線量を測るガラスバッジは子供だけに配られ、大人は持っていない。子供にしても、首からぶら下げるのは嫌だと常時身につけている子のほうが少ないのです。そんな状況で、年間1ミリシーベルトを下回る人が多いから、除染はしないと言われてもまったく説得力がない」
橋本さんの高校生の娘は、原発事故が起きた11年の7月から9月の2カ月間で、おそよ0.5ミリシーベルトの被曝をしたことがわかっている。その後、被曝量は徐々に下がっているとはいえ、いまだ自宅やその周辺は除染されていないという。
「毎時10マイクロシーベルトを超えるようなホットスポットがまだあるのに」
と、橋本さんは国へ早期除染を訴える。
川俣町に住む新関まゆみさんの自宅は11年12月に除染した。ところが、本誌が8月に測定したところ、地表から1メートルの空間線量は最高で毎時0.4マイクロシーベルト以上だった。
そして線量計を手渡して2階の寝室を測定してもらったところ、毎時0.26マイクロシーベルトもあった。そこで一日7時間半過ごすというから、それだけで年間被曝量は0.7ミリシーベルトを超えてしまう。
新関さんによると、原発事故前の周辺の放射線量は毎時0.04マイクロシーベルト程度だった。震災前と比べて10倍近い放射線がある環境で毎日生活するのは不安だという。
「いまは東京で学生生活を送る娘とここで一緒に暮らしていた頃、『私はメッチャ被曝してしまっているから、もう子供は産めないね』と話していました。それで、2人で山形の米沢に避難したこともありました。本来なら子供を集団避難させるような状況。そうしたことも一切検討せず、除染をないがしろにする方向へ進んでいる」
住民だけではない。福島県の各自治体も、環境省が打ち出した突然の方針転換に困惑していた。ある市の除染担当者が打ち明ける。
「空間線量で毎時0.23マイクロシーベルトを基準にする除染方針は、いままで環境省がさんざん言ってきたこと。それを変更するとは、何をいまさらという感じがします。そう思っているのはウチだけでなく他の自治体でも同じですよ。だいたい、ガラスバッジで住民の本当の被曝数値を出すなんて無理。私たちの市では、従来どおり毎時0.23マイクロシーベルトを基準にやります」
今回の方針転換のベースとなった調査に参加した郡山市ですら同様だ。
「郡山市は『ふるさと再生除染実施計画』の中で毎時0.23マイクロシーベルトを除染の基準にしています。この計画を変えるつもりはありません。それに0.23という数値を出したのは、環境省ではなかったのでしょうか?」(原子力災害総合対策課)
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