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「小出裕章ジャーナル #084」放射性物質飛散量1兆ベクレルの意味とは?
放射性物質飛散量1兆ベクレルの意味とは?「一般の人達が1年間にそれ以上とってはいけないというセシウムを700万人分放出したということです」〜第84回小出裕章ジャーナル
http://www.rafjp.org/koidejournal/no84/
ラジオフォーラム 小出ジャーナル文字起こし
石井:
今日は、小室等さんにも加わって頂いてお話を進めさせて頂きます。
小室等さん:
一緒に話伺います。宜しくお願いします。
小出さん:
ありがとうございます。宜しくお願いします。
石井:
今日は、東京電力の福島第一原子力発電所で、がれきの撤去作業で飛散した放射性物質が、東京電力の発表ですけれども、「1兆ベクレルを超える放射性物質が、がれきの撤去の作業で飛散した」との推定結果を明らかにしました。このニュースを聞いて、まず小出さんどんなことをお感じになられましたか?
小出さん:
はい。改めて福島第一原子力発電所の事故の過酷さというものを思いました。
石井:
それで、私達はどうしても1兆ベクレルという言葉が、そのすごさが分からないんですよ。
小出さん:
当然でしょうね。
石井:
どう説明したらいんでしょうかねえ。
小出さん:
はい。例えばですが、この1兆ベクレルの主成分はセシウムの137だと私は思いますが、普通の皆さんは、「1年間に1ミリシーベルト以上の被ばくをしてはならない」と法律で決められています。
では、そのためには、セシウム137を呼吸で体の中に取り込むのをどれだけに制限しなければいけないかというと、15万ベクレルです。
それで、今東京電力は1兆1千億ベクレルをこの期間に放出したと言ってるわけですけれども、それは計算して頂けたら、皆さんお分かり頂けると思いますが、700万人分の許容量になります。
ですから、この東京電力ががれきを撤去してるという作業のために、一般の人達が1年間にそれ以上とってはいけないというセシウムを700万人分放出したということです。
石井:
なぜ、これだけ飛散したと。原因は何だと、小出さんはお考えになってらっしゃいますか?
小出さん:
はい。このがれきの撤去というのは、3号機の一番最上階の部分がもの凄く破壊されているのですが、そこの破壊された部分を撤去しない限りは、3号機の使用済み燃料プールというプールの底に沈んでいる超危険な燃料を片付けることすらが出来ないのです。
ですから、なんとしてもこの3号機の破壊された最上階を綺麗に片付けるということは必要なのです。
もちろん東京電力もそのことを十分に認識しているが故に、超危険な作業であったとしてもやらざるを得ないということで、壊れてしまった3号機の最上階という部分を、人為的にまた壊しながら撤去するという作業をしたのです。やむを得ない作業だと思います。
石井:
この発表と同時に、「福島第一原発では、現在も1時間当たり平均で1000万ベクレルの放射性物質が放出されていると見られる」というような事も報道されました。これは、ほんとに素人考えですみません。止める事というのはできないものなんでしょうか?
小出さん:
残念ながらできません。
石井:
何か手立てというのは・・・。
小出さん:
最終的には、今壊れてしまっている原子炉を全て綺麗にどこかに片付けるというやり方か、あるいは、今壊れてしまっている物を、昔、旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所でやったように、大きな石棺というような物で完璧に覆ってしまうという、どちらかしかありません。
石井:
あの、建屋カバー全体を覆うというような構想は何か見送られそうですね。
小出さん:
はい。まずは、全体を覆ってしまうと、今現在、使用済み燃料プールの底に眠っている状態の使用済み燃料を片付けることができなくなりますので、何と言っても、まずは使用済み燃料プールの底にある燃料を少しでも危険の少ない場所に移すということは必ずやらなければいけないのです。
今は、まず4号機という、比較的汚染の少ない原子炉建屋から使用済み燃料プールを隣の共用燃料プールという所に移しているのですが、それが今年中に終わるのか、あるいは来年までかかってしまうのかよく分かりません。その上で、1号機、2号機、3号機という所にも使用済み燃料プールがあるわけで、そこから燃料を片付けなければいけないのです。
でも、今聞いて頂いたように、3号機の原子炉建屋をとにかく片付けるというためだけにでも、猛烈な放射性物質を環境にまき散らさなければできないという状態になっているわけです。
1号機もやらなければいけない。2号機もやらなければいけない。
そして、ようやく片付け終わった建屋の中で、使用済み燃料プールから使用済み燃料を移動させるという作業が出来るようになるのですが、それに、また何年かかるか分からないという作業なのです。
それが終わった段階で、初めて既に溶け落ちてしまって、今はどこにあるか分からない燃料を掴み出すことが出来るかどうかということを考え始めるわけですし、それができないなら建屋全体を覆うしかないという選択になるわけです。でも、そんなことを考えることはできる地点まで辿り着くまでに、何年かかるのか分からないという、そういう状態なのです。
小室さん:
つまり、今石井さんが言ったように、僕ら1兆ベクレルがどういうものかも分からないままいるわけですけれども、一番みんなの心配は、もちろん福島に住んでる方も、あるいは海外に住んでる方も、あるいは日本中に住んでいる方も、一体自分達がどのくらい危険な状況にさらされているのかということを実は知らないままどうもいるということですよね?
小出さん:
要するに、国が教えないでいようと決めているわけです。
小室さん:
それで新聞報道等で、うっかりなんか「放射能が放出してしまった」とか「水に流れてしまった」とかと言うんですけれども、どうも小出先生のお話を聞いていると、あれだけの専門家が集まってやってるわけですから、やってることについては、「知らなかった」なんていう方はどうもあり得ない、みんな分かってやっているというふうに思うんですけれどどうでしょうか?
小出さん:
そうです。分かっているけれども打つ手がないのです。
小室さん:
そうすると、僕達つまり一般市民はそれをどのくらい危険かという、そのことは、もし本当に知らされたら青ざめてしまうようなことかもしれなくても、それを一般市民の人達一人ひとりが知った方がいいと思いますか?
小出さん:
私は、必ずそうだと思います。この世界は大変苦悩に満ちているし、不幸性に満ちた世界ですけれども、事実を知るということは何よりも大切なことだと私は思ってきましたので、どんな辛い事実であっても、知るべきだし知らせるべきだと思います。
小室さん:
それでなければ、個人という自分の人生を自分で決めることは出来ないですよね?
小出裕章: そうなのです。事実を知らなければ、自分で判断が出来ませんので、私は、何よりも一人ひとりの個人、今小室さんがおっしゃった個人という存在が何よりも大切だと思いますので、その一人ひとりの個人がきちっと自分の人生を選択できるように、情報を与えるということは必ず必要だと思います。
小室さん:
そのことを政治の世界まで届けるための方法というものを僕が小出先生に伺うのは、もう本当に無責任な話だと思うんですけど、先生はそのこと実践して、自分で出来ることをおやりになってるんだろうと思うんですけれども、まず、一般市民はどうすべきですかね?今、この事を前にして。
小出さん:
よく分かりません。大変申し訳ないけど、私はもう政治には絶望しきってしまっていて、「政治には関わらない」と公言してきました。ただ、福島第一原子力発電所の事故が起きてしまって、大変な苦難が、今現在私の目の前に広がっていますので、その事実を少しでも皆さんに伝えるということだけ、私はやりたいと思っています。
皆さん、お一人お一人に何が出来るか私にはよく分かりませんが、事実から目を背けずに、周りの人にも知らせて頂ければありがたいと思います。
小室さん:
石井さん、僕はね先生の貴重な時間を使って無駄な質問をしてしまったけど、僕ら、小出先生からとにかく情報を、僕らには手に入らない、小出先生であるが故に手に入る情報をたくさん先生からもらうことだなというふうに今思いました。
小出さん:
とんでもない。情報は石井さん達がせっせ、せっせと集めて下さってる訳ですし、私はそのデータの意味を皆さんにお伝えする責任があるだろうと思っていますし、むしろ、そんな意味で言えば、小室さんこそが事実に向き合って、小室さんの才能を発揮して、歌で歌って下さるわけですから、大変私は有難いと思っています。
小室さん:
とんでもないです。
石井:
どうも小出さん、今日はありがとうございました。
小出さん:
ありがとうございました。
小室さん:
ありがとうございました。
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